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√(N)の以下の自然数がすべてNの約数になることがあるか

2026年(令和8年)早稲田大学理工学部-数学[2] - [別館]球面倶楽部零八式markIISR を考えていたとき,

自然数 N について,\sqrt{N} 以下のすべての自然数が N の約数になることはない.

ことが言えるか少し考えた.もちろん N=8 のときは反例となる.しかし十分大きな N については言えそうである.そこで \sqrt{N} 以下のすべての自然数が N の約数となる N について調べてみた.

\sqrt{N} 以下のすべての自然数が N の約数となる自然数は N=1,2,3,4,6,8,12,24 に限る.

高校生向きの証明があるかも知れないが,とりあえず正しい話をしたいということで,ベルトラン・チェビシェフの定理を用いる.この定理自体は高校の範囲で証明できるが面倒なので丸投げしておく.
tobetakoyaki.hatenablog.com

(ベルトラン・チェビシェフの定理)すべての自然数 n に対して n\lt p\leqq 2n を満たす素数 p が存在する

これを用いてまず十分大きな N では成立しないことを示し,成立しない N の下限を更新し,最後は具体的に確かめる.

命題「\sqrt{N} 以下のすべての自然数が N の約数になることはない.…(★)」について考える.

まず,256 以上のある自然数 N について,\sqrt{N} 以下のすべての自然数が N の約数になると仮定すると,ベルトラン・チェビシェフの定理により,

4\left[\dfrac{\sqrt{N}}{8}\right]\lt p_1\leqq 8\left[\dfrac{\sqrt{N}}{8}\right](\leqq \sqrt{N}) なる素数 p_1

2\left[\dfrac{\sqrt{N}}{8}\right]\lt p_2\leqq 4\left[\dfrac{\sqrt{N}}{8}\right](\leqq \sqrt{N}) なる素数 p_2

\left[\dfrac{\sqrt{N}}{8}\right]\lt p_3\leqq 2\left[\dfrac{\sqrt{N}}{8}\right](\leqq \sqrt{N}) なる素数 p_3

が存在する.ここで N\geqq 256 のとき \dfrac{\sqrt{N}}{8}\geqq 2 であるから,N は互いに素な素数 2,p_1,p_2,p_3 を約数に持つので,N\geqq 2p_1p_2p_3 が成立する.

一方,2p_1p_2p_3\gt 16\left(\left[\dfrac{\sqrt{N}}{8}\right]\right)^3 であるから,
N\gt 16\left(\left[\dfrac{\sqrt{N}}{8}\right]\right)^3\geqq 16\left(\dfrac{\sqrt{N}}{8}-1\right)^3…①
が成立する(素数 2 については結局どうでも良く,8 以上のある自然数 N でも良かった).

x=\sqrt{N} とおき,f(x)=x^2-16\left(\dfrac{x}{8}-1\right)^3x\geqq 16 で定義された連続関数と考えると,
f''(x)=\dfrac{40-3x}{16}\lt 0 により,これは上に凸となり,ある値より大きければ負の値をとる.

例えば x=72 とおくと f(72)=72^2-16\times 8^3=8^2(81-16\times 8)\lt 0 であるから,f(x)x\geqq 72 で負となり(x\approx 52.53f(x)=0 となり,それより大きな xf(x) は負となる).

このことから,N\geqq 72^2 では①は成立せず矛盾する.つまり 72^2 以上の自然数 N について,(★)が成立する.

さて,1 から 11 までの 11 個の自然数の最小公倍数は単純な計算により 27720 となる.よって N\geqq 121 のときに(★)が成立しないと仮定するとそれは 27720 の倍数でなければならない.しかし 72^2(\lt 10000) 以上の自然数 N について,(★)が成立することから N\geqq 121 のときに(★)が成立する.

次に 1 から 7 までの 7 個の自然数の最小公倍数は単純な計算により 420 となる.よって N\geqq 49 のときに(★)が成立しないと仮定するとそれは 420 の倍数でなければならない.しかし 121 以上の自然数 N について,(★)が成立することから N\geqq 49 のときに(★)が成立する.

さらに 1 から 5 までの 5 個の自然数の最小公倍数は単純な計算により 60 となる.よって N\geqq 25 のときに(★)が成立しないと仮定するとそれは 60 の倍数でなければならない.しかし 49 以上の自然数 N について,(★)が成立することから N\geqq 25 のときに(★)が成立する.

そして 1 から 3 までの 3 個の自然数の最小公倍数は単純な計算により 6 となる.よって N\geqq 9 のときに(★)が成立しないと仮定するとそれは 6 の倍数でなければならない.いま 25 以上の自然数 N について,(★)が成立することから N=12,18,24 について確認すれば良い.N=12 のとき 1,2,3 で割り切れ適する.N=18 のとき 4 で割り切れず不適.N=24 のとき 1,2,3,4 で割り切れ適する.よって N\geqq 9 では N=12,24 が適する.

N\leqq 8 では N=1,2,3,4,6,8 が適するので,\sqrt{N} 以下のすべての自然数が N の約数となる自然数は N=1,2,3,4,6,8,12,24 に限る.

十分大きな N で成立しないことを言うには \sqrt{N} 以下の自然数の最小公倍数が必ず N を超えてしまうことを言えば良いが,\sqrt{N} 以下の自然数の最小公倍数を陽に与えるのは難しいので,\sqrt{N} 以下の素数をいくつか選んだ時点でその積が N を超えてしまうことを言えば良いことになる.そこで \sqrt{N} のオーダーの素数を 3 つ与えればその積のオーダーが N\sqrt{N} となり,十分大きな N では N を超えてしまうことを利用した.その \sqrt{N} のオーダーの素数の存在をベルトラン・チェビシェフの定理で与えたという訳で,n〜2n2n〜4n4n〜8n3 つの区間を作るために n\approx \dfrac{\sqrt{N}}{8} となるように区間を分割した訳である.

このことは簡単に一般化でき,十分大きな N では N^{\tfrac{1}{m}}m を自然数とする) 以下のすべての自然数が N の約数になることはないことがわかる.もちろん N^{\tfrac{1}{m}}m を自然数とする) 以下のすべての自然数が N の約数になるような最大の N を探すのは m が大きくなるほど難しい(途中から総当たりとなるので).

ちなみに

m=1 のとき,つまり N 以下のすべての自然数が N の約数になるような最大の N を探すのは簡単で N=2 となる.ベルトラン・チェビシェフの定理から \dfrac{N}{2}\lt p\leqq NN が奇数でも大丈夫なことに注意)を満たす素数が存在するので,N\geqq 4 だと 2\dfrac{N}{2} より大きな素数を約数に持たなければならず,その積は N を超えてしまい矛盾してしまうので,N=1,2,3 で確認すれば十分で,確認すれば N=1,2 のときのみ成り立つことがわかる.

m=3 のとき,①に対応する不等式は N\geqq 128\left(\dfrac{N^{\tfrac{1}{3}}}{16}-1\right)^4 となり,N\geqq 189119224 で負となる.
1 から 23 までの 23 個の自然数の最小公倍数は単純な計算により 5354228880 となる.よって N\geqq 23^3=12167 のときに(★)が成立しないと仮定するとそれは 5354228880 の倍数でなければならない.しかし 189119224 以上の自然数 N について,(★)が成立することから N\geqq 12167 のときに(★)が成立する.
次に 1 から 11 までの 11 個の自然数の最小公倍数が 27720 となることから N\geqq 1331 のときに(★)が成立しないと仮定するとそれは 27720 の倍数でなければならない.しかし 12167 以上の自然数 N について,(★)が成立することから N\geqq 1331 のときに(★)が成立する.
さらに 1 から 9 までの 9 個の自然数の最小公倍数は単純な計算により 2520 となる.よって N\geqq 729 のときに(★)が成立しないと仮定するとそれは 2520 の倍数でなければならない.しかし 1331 以上の自然数 N について,(★)が成立することから N\geqq 729 のときに(★)が成立する.
そして 1 から 8 までの 8 個の自然数の最小公倍数は単純な計算により 840 となる.よって N\geqq 512 のときに(★)が成立しないと仮定するとそれは 840 の倍数でなければならない.しかし 729 以上の自然数 N について,(★)が成立することから N\geqq 512 のときに(★)が成立する.
そのうえ 1 から 7 までの 7 個の自然数の最小公倍数は 420 となる.よって N\geqq 343 のときに(★)が成立しないと仮定するとそれは 420 の倍数でなければならない.しかし 729 以上の自然数 N について,(★)が成立することから N=420 のときに確認すれば良い.N=420 のとき 7^3=343 \lt 420^{\tfrac{1}{3}}\lt 8^3=512 であるから,N^{\tfrac{1}{3}} 以下のすべての自然数が N の約数になるような最大の N420 であり,N\geqq 343 の範囲で(★)が成立しないのは N=420 のみである.

1 から 5 までの 5 個の自然数の最小公倍数は 60 となる.よって 125\leqq N\lt 343 において(★)が成立しない可能性があるのは N=180,240,300 であり,これらは全て適する.

1 から 4 までの 4 個の自然数の最小公倍数は 12 となる.よって 64\leqq N\lt 125 において(★)が成立しない可能性があるのは N=72,84,96,108,120 であり,これらは全て適する.

1 から 3 までの 3 個の自然数の最小公倍数は 6 となる.よって 27\leqq N\lt 64 において(★)が成立しない可能性があるのは 30\leqq N\leqq 60 なる 6 の倍数であり,これらは全て適する.

1 から 2 までの 2 個の自然数の最小公倍数は 2 となる.よって 8\leqq N\lt 27 において(★)が成立しない可能性があるのは 8\leqq N\leqq 26 なる 2 の倍数であり,,これらは全て適する.

1\leqq N\leqq 7 については \left[N^{\tfrac{1}{3}}\right]=1 だから適する.

よって求める N
N=12345678101214161820222426303642485460729696108120180240300420 に限る.

a_mN^{\tfrac{1}{m}}m を自然数とする) 以下のすべての自然数が N の約数になるような最大の N と定義すると,a_1=2a_2=24a_3=420,…となるが.OEIS にこの数列はあるのだろうか,と思ったらあった.

「A003102 Largest number divisible by all numbers < its n-th root.」
2, 24, 420, 27720, 720720, 36756720, 5354228880, 481880599200, 25619985190800, 10685862914126400, 876240758958364800, 113035057905629059200, 24792356033967973651200, 9690712164777231700912800, 2364533768205644535022723200, 396059406174445459616306136000

ここでは論文 On the Problem 1, 2, 3, ..., [n^1/k] | n (1962) が引用されており,この論文によると,[√(N)の以下の自然数がすべてNの約数になるような最大の N は 24 である」ことはポリアによって示されたそうだ.またこの論文ではベルトラン・チェビシェフの定理ではなく,チェビシェフの定理「k 番目の素数を p_k とすると p_{k+1}\lt 2p_k が成り立つ」を用いているが基本的な考え方は同じようだ(斜め読みしかしていない).

1 から K までの K 個の自然数の最小公倍数を L(K) とおくと
K^m\leqq L(K) \lt (K+1)^m(左辺の等号は成立しない)
を満たす L(K) が唯一存在し,N^{\tfrac{1}{m}}m を自然数とする) 以下のすべての自然数が N の約数になるような最大の NL(K) である.

ということが言えるようである.前述の証明も論文の証明も K^m\leqq L(K) \lt (K+1)^m を満たせば N=L(K) が条件を満たすことが本質的となっている.

ちなみに

m 1 2 3 4 5 6
K 2 4 7 12 14 18
N_{\rm max}=L(K) 2 24 420 27720 720720 36756720

である(最後の列は OEIS からわかるが).L(K) の値が更新されるのは素数羃(1乗も含む)が登場したときであり,素数の規則性は良くわかっていないので具体的な m から即座に K を計算することは難しい.

OEIS には Mathematica のコマンドが書いてあるが, while 文で「 K++, lc=LCM[lc,K] として K=Floor[ lc^{1/m} ]」によって K^m\leqq L(K) \lt (K+1)^m を満たす K を探している.

2026.03.04追記
N^{\tfrac{1}{m}} 自然数がすべて N の約数になるような N の個数を b_m とすると,b_1=2b_2=8b_1=32 となっている.果して b_m=2^{2m-1} となるだろうか??




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