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瞬間部分積分法

先程の「特殊基本関数」という用語について書いていたときに思い出しましたが,「瞬間部分積分」という言葉が本来の意味と違って最近は使われています.

「瞬間部分積分法」という言葉は山本矩一郎氏による造語であり部分積分は積の微分法だからそこで登場する項を微分して帳尻をあわせる「責任を転嫁せよ」という意味で
x\log x の原始関数は,\dfrac{x^2}{2}\log x の項が登場するだろうと考えて \left(\dfrac{x^2}{2}\log x\right)'=x\log x+\dfrac{x}{2} を頭の中で計算することによって余分な \dfrac{x}{2} の原始関数 \dfrac{x^2}{4} を引けば帳尻が合うので \displaystyle\int x\log x\, dx=\dfrac{x^2}{2} -\dfrac{x^2}{4}+C のように暗算で瞬間的に部分積分を行った結果と同じ結果が得られるということを意味していました.瞬間の意味については自動給湯器のことを瞬間湯沸器と呼んでいた頃に命名したからということです.この内容は山本の直感的微積

のpp.47-48に書いてあります.

つまり,瞬間部分積分法は部分積分を暗算でやって一発で原始関数を書き下すことを指していました.ただ「山本の直感的微積分」にはそれを繰り返し行うことによって高木貞治の解析概論にも述べられている有名な
\displaystyle\int f(x)e^x=\{f(x)-f'(x)+f''(x)-f'''(x)+\cdots\}e^x +C
などにも言及していることから,いつのまにか瞬間部分積分と,多項式が消えるまで繰り返して用いるテーブル法やアメリカ式と呼ばれる方法と混ざってしまいました.もちろんテーブル法やアメリカ式と呼ばれる方法と同じことを表を作らずに直接書き下せば原始関数を一発で書き下すことができる方法ですから,瞬間部分積分法の責任転嫁を次々と行う方法であることには間違いがないのですが,部分積分を繰り返さない瞬間部分積分法もあるのですから,イコールではありません.

ですがヨビノリを含めて「瞬間部分積分法とは,テーブル法をテーブルに書かずに直接書き下していく方法」と勘違いしており,現在はそれが主流となったのでこちらが普通になっていくのでしょう.瞬間部分積分法はもはや山本矩一郎氏の手を離れて遠くに行ってしまったようです.

ちなみに,「テーブル法をテーブルに書かずに直接書き下していくことによって一気に部分積分する方法」(解析概論に記載されている方法)を長谷川進氏は自著

でブンブンと略して呼んでおり,その本では瞬間部分積分法とブンブン,テーブル法とブンブンは異なると主張しています.このあたりは本人のブログ 受験数学BLOG記事一覧 | saitei に色々と書いてあったのですが,現在は 404 not found です.一部は WayBackMachine で見ることができます.

(本来の意味での)瞬間部分積分法とブンブンが異なるのは正しいですが,解析概論の手法を直接書き下すのが苦手な人が表を経由して積分するのがテーブル法なので(現在流布している)瞬間部分積分法とブンブンは実質的に同じです.慣れれば表を作る必要なく書き下せて,それがブンブンになるだけです.ただテーブル法で部分積分の連鎖を途中で止めることはあまり説明されてなかったので,そこはテーブル法とブンブンの違いと言えば違いです.もちろんテーブル法における途中の止め方は簡単ですのでテーブル法とブンブンはどちらの書き様が好みかというだけの話しで同じにしかみえません.

なお,瞬間部分積分法とブンブンが異なるのは正しいと書きましたが,瞬間部分積分法を片方が消えるまで繰り返し行う場合はブンブンと同じです.瞬間部分積分法は積分しきることが目的であるため,部分積分の連鎖を途中で止めることは考慮していないという点でブンブンとは異なると言うこともできますが,少し注意すれば瞬間部分積分法も途中で止めることができます.例えば

x^3e^{2x} の原始関数は \dfrac{x^3e^{2x}}{2} から,これを微分した相棒 \dfrac{3x^2e^{2x}}{2} の原始関数を引かなければ帳尻が合わないので,\dfrac{3x^2e^{2x}}{4} を引いてその相棒 \dfrac{6xe^{2x}}{4} の原始関数を足さなければ帳尻が合わないと考えると

\displaystyle\int x^3e^{2x}\, dx=\dfrac{x^3e^{2x}}{2}-\dfrac{3x^2e^{2x}}{4}+\displaystyle\int\dfrac{6xe^{2x}}{4}\, dx

のように途中で止めることが可能です.積分され続ける関数は \displaystyle\int を超えたら積分され,微分され続ける関数は最初そのままで微分され続けるというところを押えておけば,結局同じことをやっているので,瞬間部分積分とブンブンは同じことになります.もちろん瞬間部分積分は暗算で帳尻あわせという考え方なので考え方は異なりますが,暗算で確定した部分を書き下していくと結局はブンブンと同じことになり,繰り返し行うときは片方は積分され続け,もう片方は微分され続けるのだから暗算しなくても機械的に書き下せることになり,結局ブンブンと同じことになってしまうということです.この部分をテーブル法では、積の微分法だから最後にはいつも斜めと横が残るということで説明することができます.そして横の部分が0が登場したら終るということで斜めだけを足した形といて繰り返し瞬間部分積分やブンブンと同じ形になるのです.

そういうこともあって巷に溢れている瞬間部分積分法の説明が結局はブンブンと同じ説明になってしまっているのです.まぁ結局は世の中の「瞬間部分積分法」が山本矩一郎氏の「瞬間部分積分法」とずれているために起きた悲劇のような気もします.山本矩一郎氏がどう思っているかどうか知りませんが,当初「瞬間部分積分法」と名付けた時代には複数回部分積分をする問題は少なく,それぐらいだったら暗算でやればできると行った軽い気持だったようにも思います.

この件についてはもう少し書いても良い気もしないでもないですが,まぁとりあえずやめておきます.なお,何か長いコメントを発見しました.

積分計算の便利ツール「瞬間部分積分」を使ってみる - 理系のための備忘録




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