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2026年(令和8年)京都大学-数学(理系)[6]

2026.03.05.00:13:26記

[6] n3 以上の整数とする.1 から n までの番号が書かれた枚の札が袋に入っている.ただし,同じ番号が書かれた札はないとする.この袋から 3 枚の札を同時に取り出し,一番大きな番号を X とする.X の期待値を求めよ.

本問のテーマ
ホッケースティック恒等式
期待値の線型性(和の期待値は期待値の和)

2026.03.12.01:57:29記
期待値に関する漸化式を作る解法をまず紹介しましょう.

[解答]
X の期待値は n に依存するので E_n とおくとき,E_3=3 である.

n\geqq 3 において n+1 枚の札から 3 枚を選ぶとき,n+1 が書かれた札を含まない確率は \dfrac{{}_{n}\mbox{C}_3}{{}_{n+1}\mbox{C}_3}(この場合の最大番号の期待値は E_n),含む確率は \dfrac{{}_{n}\mbox{C}_2}{{}_{n+1}\mbox{C}_3}(この場合の最大番号は n+1)であるから,
E_{n+1}=\dfrac{{}_{n}\mbox{C}_3}{{}_{n+1}\mbox{C}_3}E_n+\dfrac{{}_{n}\mbox{C}_2}{{}_{n+1}\mbox{C}_3}(n+1)=\dfrac{n-2}{n+1} E_n+3
が成立する.よって
(n+1)n(n-1)E_{n+1}-n(n-1)(n-2)E_{n}=3(n+1)n(n-1)
となり,
(n+1)n(n-1)E_{n+1}-3\cdot 2\cdot 1\cdot E_{3}=\dfrac{3}{4}\{(n+2)(n+1)n(n-1)-4\cdot 3\cdot 2\cdot 1\}
から E_{n+1}=\dfrac{3}{4}(n+2) が成立する.よって E_3=3 とあわせて E_n=\dfrac{3}{4}(n+1) となる.

取り出す札が m 枚のとき,同様に考えると一番大きな番号の期待値は \dfrac{m}{m+1}(n+1) となります.これは m 枚の札で m+1 等分したときの境界が \dfrac{k}{m+1}k=1,…,m)となり,その最大のものが最大値の期待値になっているという直感に合致しています.

定義通りに X=k となる確率を求めて期待値を計算してみましょう.その際

ホッケースティック恒等式(と最近では呼ぶそうです)
{}_{n+1}\mbox{C}_{k+1}={}_{n}\mbox{C}_{k}+{}_{n-1}\mbox{C}_{k+1}+\cdots +{}_{k}\mbox{C}_{k}

を用います.

[証明] {}_{n}\mbox{C}_{k}+{}_{n-1}\mbox{C}_{k+1}+\cdots +{}_{k}\mbox{C}_{k}(1+x)^k+\cdots +(1+x)^nx^k の係数であり,(1+x)^k+\cdots +(1+x)^n=\dfrac{(1+x)^{n+1}-(1+x)^k}{x} であるから,(1+x)^{n+1}-(1+x)^{k}x^{k+1} の係数に等しい.ここで k 次の多項式 (1+x)^{k}x^{k+1} の係数は 0 であるから,{}_{n}\mbox{C}_{k}+{}_{n-1}\mbox{C}_{k+1}+\cdots +{}_{k}\mbox{C}_{k}(1+x)^{n+1}x^{k+1} の係数に等しい.つまり{}_{n+1}\mbox{C}_{k+1} に等しい.

[解答]
X=k となる確率は \dfrac{{}_{k-1}\mbox{C}_2}{{}_{n}\mbox{C}_3} であるから,求める期待値を E とすると,
E=\displaystyle\sum_{k=3}^n k\cdot \dfrac{{}_{k-1}\mbox{C}_2}{{}_{n}\mbox{C}_3}=\dfrac{1}{{}_{n}\mbox{C}_3}\displaystyle\sum_{k=3}^n k\cdot {}_{k-1}\mbox{C}_2=\dfrac{3}{{}_{n}\mbox{C}_3}\displaystyle\sum_{k=3}^n {}_{k}\mbox{C}_3=\dfrac{3}{{}_{n}\mbox{C}_3}\cdot {}_{n+1}\mbox{C}_4(∵ホッケースティック恒等式)
=\dfrac{3}{4}(n+1)
となる.

あれ?漸化式を作るよりも普通にやった方が簡単でした.階乗羃の差分を利用した(差分の片方が 0 になるまでの)望遠鏡和とホッケースティック恒等式は良く考えたら同じ式ですね.

5 枚取り出す場合の問題が,1988年の札幌医科大学に出題されています.札幌医科大の問題は
「一番大きな番号と一番小さな番号の和」の期待値が n+1に,「一番大きな番号と一番小さな番号の差」の期待値が「一番小さな番号」期待値の 4 倍に等しいことから求めるという誘導でした.この流れで本問を解いてみます.k\mapsto n+1-k と番号を振り直すことで一番大きな番号と一番小さな番号の和がいれかわるので,「一番大きな番号と一番小さな番号の和」の期待値が n+1になることは明らかですが,少し丁寧に説明しておきます.

[解答]
一番小さな番号を Y とし,XY の期待値を E(X),E(Y) とおく.このとき
P(X=k)=\dfrac{{}_{k-1}\mbox{C}_{2}}{{}_{n}\mbox{C}_{3}}P(Y=l)=\dfrac{{}_{n-l}\mbox{C}_{2}}{{}_{n}\mbox{C}_{3}} であるから,P(Y=n+1-k)=\dfrac{{}_{n-(n+1-k)}\mbox{C}_{2}}{{}_{n}\mbox{C}_{3}}=P(X=k) となり,
E(X)+E(Y)=\displaystyle\sum_{k=3}^{n} k\cdot P(X=k)+\displaystyle\sum_{l=1}^{n-2} l\cdot P(Y=l)
=\displaystyle\sum_{k=3}^{n} k\cdot P(X=k)+\displaystyle\sum_{k=3}^{n} (n+1-k)\cdot P(X=k)
=(n+1)\displaystyle\sum_{k=3}^{n} P(X=k)=n+1
である.

Z=X-Y とおくと,Y の値は 1〜n-z のいずれかで,それに対して X の値は一意に決まり,残り一枚の札の値は n-1 通りであるから
E(X)-E(Y)=E(Z)=\displaystyle\sum_{z=2}^{n-1} z\cdot\dfrac{(n-z)(n-1)}{{}_{n}\mbox{C}_{3}}=2\displaystyle\sum_{z=2}^{n-1} (n-z)\cdot \dfrac{{}_{z}\mbox{C}_{2}}{{}_{n}\mbox{C}_{3}}
であり,z+l=n とおくと
E(X)-E(Y)=2\displaystyle\sum_{l=1}^{n-2} l\cdot \dfrac{{}_{n-l}\mbox{C}_{2}}{{}_{n}\mbox{C}_{3}}=2\displaystyle\sum_{l=1}^{n-2} l\cdot P(Y=l)=2E(Y)
が成立する.

以上から E(X)+E(Y)=n+1E(X)=3E(Y) となるので,E(X)=\dfrac{3}{4}(n+1) となる.

取り出す札が m 枚のとき,同様に考えると次のようになります.

一番小さな番号を Y とし,XY の期待値を E(X),E(Y) とおく.このとき
P(X=k)=\dfrac{{}_{k-1}\mbox{C}_{m-1}}{{}_{n}\mbox{C}_{m}}P(Y=l)=\dfrac{{}_{n-l}\mbox{C}_{m-1}}{{}_{n}\mbox{C}_{m}} であるから,P(Y=n+1-k)=\dfrac{{}_{n-(n+1-k)}\mbox{C}_{m-1}}{{}_{n}\mbox{C}_{m}}=P(X=k) となり,
E(X)+E(Y)=\displaystyle\sum_{k=m}^{n} k\cdot P(X=k)+\displaystyle\sum_{l=1}^{n-m+1} l\cdot P(Y=l)
=\displaystyle\sum_{k=m}^{n} k\cdot P(X=k)+\displaystyle\sum_{k=m}^{n} (n+1-k)\cdot P(X=k)
=(n+1)\displaystyle\sum_{k=m}^{n} P(X=k)=n+1
である.

Z=X-Y とおくと,Y の値は 1〜n-z のいずれかで,それに対して X の値は一意に決まり,残り一枚の札の値は {}_{n-1}\mbox{C}_{m-2} 通りであるから
E(X)-E(Y)=E(Z)=\displaystyle\sum_{z=m-1}^{n-1} z\cdot\dfrac{(n-z){}_{n-1}\mbox{C}_{m-2}}{{}_{n}\mbox{C}_{m}}=(m-1)\displaystyle\sum_{z=m-1}^{n-1} (n-z)\cdot \dfrac{{}_{z}\mbox{C}_{m-1}}{{}_{n}\mbox{C}_{m}}
であり,z+l=n とおくと
E(X)-E(Y)=(m-1)\displaystyle\sum_{l=1}^{n-m+1} l\cdot \dfrac{{}_{n-l}\mbox{C}_{m-1}}{{}_{n}\mbox{C}_{m}}=(m-1)\displaystyle\sum_{l=1}^{n-m+1} l\cdot P(Y=l)=(m-1)E(Y)
が成立する.

以上から E(X)+E(Y)=n+1E(X)=mE(Y) となるので,E(X)=\dfrac{m}{m+1}(n+1) となる.

2026.03.23記
取り出す札が m 枚のときのホッケースティックを書き忘れていました.

[解答]
X=k となる確率は \dfrac{{}_{k-1}\mbox{C}_{m-1}}{{}_{n}\mbox{C}_m} であるから,求める期待値を E とすると,
E=\displaystyle\sum_{k=m}^n k\cdot \dfrac{{}_{k-1}\mbox{C}_{m-1}}{{}_{n}\mbox{C}_{m}}=\dfrac{1}{{}_{n}\mbox{C}_{m}}\displaystyle\sum_{k=m}^n k\cdot {}_{k-1}\mbox{C}_{m-1}=\dfrac{m}{{}_{n}\mbox{C}_m}\displaystyle\sum_{k=m
}^n {}_{k}\mbox{C}_m=\dfrac{m}{{}_{n}\mbox{C}_m}\cdot {}_{n+1}\mbox{C}_{m+1}(∵ホッケースティック恒等式)
=\dfrac{m}{m+1}(n+1)
となる.

となります(3m に置換しただけで全く同じ).




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