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2006年(平成18年)京都大学後期-数学(理系)[4]

2025.10.01記

[4] 平面上の点 \mbox{O} を中心とし半径1の円周上に相異なる3点 \mbox{A}\mbox{B}\mbox{C} がある. \triangle\mbox{ABC} の内接円の半径 r\dfrac{1}{2} 以下であることを示せ.

本問のテーマ
オイラーの不等式とオイラーの定理(外心と内心の距離)
Ravi 変換
反転
Johnson の定理

2025.10.13記
計算主体の解法は
2018年(平成30年)東北大学-数学(理系)[4] - [別館]球面倶楽部零八式markIISR
にありますが,誘導があるので誘導に従わない形の計算主体の解法をしておきます.

[解答]
\angle\mbox{A}=\alpha\angle\mbox{B}=\beta\angle\mbox{C}=\gamma
0\lt\alpha,\beta,\gamma\lt \pi\alpha+\beta+\gamma=\pi
とおくと,2\triangle\mbox{ABC}=\mbox{AB}\cdot\mbox{AC}\sin\alpha=(\mbox{AB}+\mbox{BC}+\mbox{CA})r
であるから,正弦定理より \mbox{AB}=2\sin \gamma などを用いて
r=\dfrac{2\sin\alpha\sin\beta\sin\gamma}{\sin\alpha+\sin\beta+\sin\gamma}
が成立する.\sin\alpha,\sin\beta,\sin\gamma\gt 0 より AM-GM 不等式から
\sin\alpha+\sin\beta+\sin\gamma\geqq 3\sqrt[3]{\sin\alpha\sin\beta\sin\gamma}
であるから,
r\leqq \dfrac{2(\sin\alpha+\sin\beta+\sin\gamma)^{2}}{27}…①
が成立する.一方 \sin x0\lt x\lt \pi)は上に凸であるから,Jensen の不等式により
\dfrac{\sin\alpha+\sin\beta+\sin\gamma}{3}\leqq\sin\dfrac{\alpha+\beta+\gamma}{3}=\sin\dfrac{\pi}{3}=\dfrac{\sqrt{3}}{2}
が成立するので,
\dfrac{2(\sin\alpha+\sin\beta+\sin\gamma)^{2}}{27}\leqq \dfrac{2}{3}\cdot\dfrac{3}{4}=\dfrac{1}{2}…②
が成立する.①②により r\leqq\dfrac{1}{2} が成立する.

注)等号成立は①②の等号が成立する場合なので \alpha=\beta=\gamma=\dfrac{\pi}{3} となり \triangle\mbox{ABC} が正三角形のときである.

[別解]
\triangle\mbox{ABC} の面積を S とおく.

\angle\mbox{A}=\alpha\angle\mbox{B}=\beta\angle\mbox{C}=\gamma
0\lt\alpha,\beta,\gamma\lt \pi\alpha+\beta+\gamma=\pi
とおくと,2\triangle\mbox{ABC}=\mbox{AB}\cdot\mbox{AC}\sin\alpha=(\mbox{AB}+\mbox{BC}+\mbox{CA})r であり,正弦定理から
2S=4\sin\alpha\sin\beta\sin\gamma=2(\sin\alpha+\sin\beta+\sin\gamma)r
が成立する.\sin\alpha,\sin\beta,\sin\gamma\gt 0 より AM-GM 不等式から
\sin\alpha+\sin\beta+\sin\gamma\geqq 3\sqrt[3]{\sin\alpha\sin\beta\sin\gamma}…①
であるから,\dfrac{S}{r}\geqq 3\sqrt[3]{\dfrac{S}{2}},つまり r\leqq \dfrac{\sqrt[3]{2S^2}}{3} が成立する.

さて,f(x)=\log(\sin x)0\lt x\lt \pi)とおくと f'(x)=\tan xf''(x)=\dfrac{1}{\cos^2 x} であるから f(x)0\lt x\lt \pi で上に凸であるから,Jensen の不等式により
\dfrac{\log(\sin\alpha\sin\beta\sin\gamma)}{3}=\dfrac{\log(\sin\alpha)+\log(\sin\beta)+\log(\sin\gamma)}{3}\leqq\log\left(\sin\dfrac{\alpha+\beta+\gamma}{3}\right)=\log\left(\sin\dfrac{\pi}{3}\right)=\log\dfrac{\sqrt{3}}{2}…②
が成立するので,S=2\sin\alpha\sin\beta\sin\gamma\leqq 2\cdot \left(\dfrac{\sqrt{3}}{2}\right)^3…(★) が成立する.よって
r\leqq\dfrac{\sqrt[3]{2S^2}}{3}\leqq\dfrac{\sqrt[3]{2^3\cdot\left(\dfrac{3}{4}\right)^3}}{3}=\dfrac{1}{2}
が成立する.

注)等号成立は①②の等号が成立する場合なので \alpha=\beta=\gamma=\dfrac{\pi}{3} となり \triangle\mbox{ABC} が正三角形のときである.

(★)である S\leqq\dfrac{3\sqrt{3}}{4}(等号は \alpha=\beta=\gamma=\dfrac{\pi}{3} となり \triangle\mbox{ABC} が正三角形のとき)は,単位円に内接する三角形のうち面積が最大のものが正三角形であることを示しており,このような問題は \log(\sin x)微分を学ぶ前に解くことが多くて,\log(\sin x) の凸性と Jensen の不等式を用いた証明に出会わない人も多いように思います.

(外接円の半径)÷(内接円の半径)\geqq 2 という関係式はオイラーの不等式と呼ばれ,Ravi変換を用いた証明が有名です.
備忘録:Ravi 変換 - 球面倶楽部 零八式 mark II

結局 Ravi 変換は各頂点から内接円への接線の長さによる表示となります.

[うまい解答]
一般の三角形 \triangle\mbox{ABC} に対して外接円の半径 R と内接円の半径 r の比が \dfrac{R}{r}\geqq 2 を満たすことを示せば良い.

\triangle\mbox{ABC} の3辺の長さを \mbox{AB}=c\mbox{BC}=a\mbox{CA}=b とし,\mbox{A}\mbox{B}\mbox{C} から \triangle\mbox{ABC} の内接円に引いた接線の長さをそれぞれ zxy とすると
a=x+y,b=y+z,c=z+xx,y,z\gt 0
が成立する(Ravi変換).このとき
\dfrac{R}{r}=\dfrac{abc}{4S}\mbox{÷} \dfrac{2S}{a+b+c}=\dfrac{abc(a+b+c)}{8S^2}
となる.ヘロンの公式から s=\dfrac{a+b+c}{2}=x+y+z を用いて
S^2=s(s-a)(s-b)(s-c)=(x+y+z)xyz
となることから
\dfrac{R}{r}=\dfrac{2(x+y)(y+z)(z+x)(x+y+z)}{8(x+y+z)xyz}=\dfrac{(x+y)(y+z)(z+x)}{4xyz}
が成立する.x,y,z\gt 0 により AM-GM 不等式から
\dfrac{R}{r}\geqq \dfrac{2\sqrt{xy}\cdot2\sqrt{yz}\cdot2\sqrt{zx}}{4xyz}=2
となり,題意は示された.

等号成立は x=y=z から \triangle\mbox{ABC} が正三角形となるときである.それでは \dfrac{R}{r} が最大となるときはどのような場合だろうかとなりますが,外接円を固定した状況で \mbox{A}\mbox{B}\mbox{C} を限りなく近づけると r はいくらでも小さくすることができるので \dfrac{R}{r} はいくらでも大きくなることができます.

本問は有名問題ですから,幾何的な証明もいくつか知られています.

[解答]
\mbox{AB}\mbox{BC}\mbox{CA} の中点を \mbox{L}\mbox{M}\mbox{N} とおくと \triangle\mbox{LMN}
\triangle\mbox{ABC}\dfrac{1}{2} 倍に拡大したものであるから,\triangle\mbox{LMN} の外接円の半径は \dfrac{1}{2} である.ここで \mbox{AB}\mbox{BC}\mbox{CA} と共有点を持つ円の中で最小半径のものは \triangle\mbox{ABC} の内接円であるから,r\leqq\dfrac{1}{2} である.

等号成立は,\triangle\mbox{ABC} の内接円と \triangle\mbox{LMN} の外接円が一致するときであり,\triangle\mbox{LMN} の外接円が
\mbox{AB}\mbox{BC}\mbox{CA} とそれぞれの中点で接する場合であるから,\triangle\mbox{LMN} の外心が \triangle\mbox{ABC} の外心と一致する場合となり,それが \triangle\mbox{ABC} の内心でもあるので,\triangle\mbox{ABC} が正三角形のときである.

三角形の外心と内心の距離に関するオイラーの定理(チャップルの定理)「\mbox{OI}^2=R^2-2Rr」を用いた証明も標準的です.もちろん本問でオイラーの定理を証明しなければ流石にまずい気がします.

[大人の解答?]
\triangle\mbox{ABC} の内心を \mbox{I} とすると,オイラーの定理により \mbox{OI}^2=1-2r が成立し,左辺は非負であるから r\leqq\dfrac{1}{2} である.

[解答]
\triangle\mbox{ABC} の外接円の半径を R とおく.R=1 である.

\triangle\mbox{ABC} の内心を \mbox{I} とし,\mbox{AI}\triangle\mbox{ABC} の外接円との \mbox{A} とは異なる交点を \mbox{D} とおく.

\angle\mbox{DIB}=\angle\mbox{IAB}+\angle\mbox{IBA}=\angle\mbox{IAC}+\angle\mbox{IBC}=\angle\mbox{DBC}+\angle\mbox{IBC}=\angle\mbox{IBD} であるから,\triangle\mbox{DIB}\mbox{DI}=\mbox{DB}二等辺三角形である.

正弦定理により \mbox{DB}=2R\sin\angle\mbox{DAB}=2R\cdot\dfrac{r}{\mbox{AI}} が成立するので,\mbox{DI}=\mbox{DB} と合わせて \mbox{AI}\cdot\mbox{DI}=2Rr が成立する.

外接円の \mbox{I} を通る直径を考えて方羃の定理を用いると
\mbox{AI}\cdot\mbox{DI}=(R+\mbox{IO})(R-\mbox{IO})=R^2-\mbox{IO}^2
であるから R^2-\mbox{IO}^2=2Rr,つまり \mbox{IO}^2=R^2-2Rr が成立する.

R=1 により \mbox{OI}^2=1-2r が成立し,左辺は非負であるから r\leqq\dfrac{1}{2} である.

ここで考えた点 \mbox{D}\triangle\mbox{IBC} の外心です.これを利用した証明が
onlinemathcontest.com
にありますので,これを補足して紹介しておきます.頂点の名前は変更しています.

[解答]
\triangle\mbox{ABC} が直角三角形または鈍角三角形のとき,それは外接円の半円に含まれ,半円に含まれる最大半径の円の半径は外接円の半径の半分である \dfrac{1}{2} 以下であるから,\triangle\mbox{ABC} の内接円の半径は \dfrac{1}{2} 未満となり題意を満たすので,\triangle\mbox{ABC} が鋭角三角形の場合について考えれば十分である.このとき \mbox{O}\triangle\mbox{ABC} の内部にある.

\triangle\mbox{ABC} の外接円の半径を R とおく.R=1 である.

\triangle\mbox{ABC} の内心を \mbox{I} とし,\mbox{AI}\triangle\mbox{ABC} の外接円との \mbox{A} とは異なる交点を \mbox{D} とおく.

\angle\mbox{DIB}=\angle\mbox{IAB}+\angle\mbox{IBA}=\angle\mbox{IAC}+\angle\mbox{IBC}=\angle\mbox{DBC}+\angle\mbox{IBC}=\angle\mbox{IBD} であるから,\triangle\mbox{DIB}\mbox{DI}=\mbox{DB}二等辺三角形である.

よって \mbox{D}\mbox{IB} の垂直二等分線上にあり,同様に考えて \mbox{D}\mbox{IC} の垂直二等分線上にもある.つまり,\mbox{D}\triangle\mbox{IBC} の外心となり,\mbox{OD}\perp\mbox{BC} が成立するので四角形 \mbox{OBDC} の面積は \mbox{BC}\cdot\mbox{OD}=\dfrac{aR}{2} となる.

同様に \mbox{BI}\triangle\mbox{ABC} の外接円との \mbox{A} とは異なる交点を \mbox{E}\mbox{CI}\triangle\mbox{ABC} の外接円との \mbox{A} とは異なる交点を \mbox{F} とおくと \mbox{E}\triangle\mbox{ICA} の外心,\mbox{F}\triangle\mbox{IAB} の外心となり,六角形 \mbox{AFBDCE} の面積は \dfrac{(a+b+c)R}{2} となる.

一方,\triangle\mbox{ABC} の面積は \dfrac{(a+b+c)r}{2} である.

\triangle\mbox{ABC} の垂心を \mbox{H} とし,\mbox{AB}\mbox{BC}\mbox{CA} に関して折り返した点を \mbox{P}\mbox{Q}\mbox{R} とする.このとき \angle\mbox{BPC}=\angle\mbox{BHC}=\pi-\angle\mbox{BAC} であるから,\mbox{P}\triangle\mbox{ABC} の外接円上にあり,\triangle\mbox{ABC} は鋭角三角形であるから \mbox{H}\triangle\mbox{ABC} の内部にあり,よって \mbox{P}\mbox{Q}\mbox{R} は弧 \mbox{AB},弧 \mbox{BC},弧 \mbox{CA} 上にあり,六角形 \mbox{ARBPCQ} の面積は \triangle\mbox{ABC} の面積の2倍となり,(a+b+c)r となる.

ここで \mbox{D}\mbox{E}\mbox{F} は弧 \mbox{AB},弧 \mbox{BC},弧 \mbox{CA} の中点にあることから,

(六角形\mbox{ARBPCQ}の面積)\leqq(六角形\mbox{AFBDCE}の面積)

が成立し,(a+b+c)r\leqq\dfrac{(a+b+c)R}{2},つまり r\leqq \dfrac{R}{2}=\dfrac{1}{2} が成立する.

su-hai.hatenablog.com
に Johnson の定理と反転を利用した面白い証明があります.

2円に対するポンスレの閉形定理(三角形の場合)の反転を利用した証明 - 球面倶楽部 零八式 mark II は引用中心ですが一応参照しておきます.
なお,Johnson の定理を既知とするので[大人の解答]としておきます.

[大人の解答]

\triangle\mbox{ABC} の内接円の半径を r=1 としたときに外接円の半径 R2 以上であることを示しても良い.

\triangle\mbox{ABC} の外接円を C_{\rm O} とし,\triangle\mbox{ABC} の内接円を C_{\rm I},内心を \mbox{I}C_{\rm I}\mbox{AB}\mbox{BC}\mbox{CA} それぞれとの接点をそれぞれ \mbox{X}\mbox{Y}\mbox{Z} とし,\mbox{IX}\mbox{IY}\mbox{IZ} を直径とする円を C_{\rm X}C_{\rm Y}C_{\rm Z} とすると,これらは半径が \dfrac{r}{2}=\dfrac{1}{2} の円である.

C_{\rm I} に関する反転を f とすると
f(直線\mbox{AB})=C_{\rm X}f(直線\mbox{BC})=C_{\rm Y}f(直線\mbox{AB})=C_{\rm Z}
であるから,円 C_{\rm Z} と円 C_{\rm X}\mbox{I} でない交点を \mbox{P},円 C_{\rm X} と円 C_{\rm Y}\mbox{I} でない交点を \mbox{Q},円 C_{\rm Y} と円 C_{\rm Z}\mbox{I} でない交点を \mbox{R} とすると
f(\mbox{A})=\mbox{P}f(\mbox{B})=\mbox{Q}f(\mbox{C})=\mbox{R}
が成立する.よって \mbox{P}\mbox{Q}\mbox{R} を通る円とその中心を C_{\rm J}\mbox{J} とおくと,
f(C_{\rm O})=C_{\rm J}
が成立する.ここで Johnson の定理により円 C_{\rm J} の半径は \dfrac{1}{2} である.

直線 \mbox{IJ}C_{\rm O}C_{\rm J} の交点を考えることにより
2R=\dfrac{1}{\dfrac{1}{2}-\mbox{IJ}}+\dfrac{1}{\dfrac{1}{2}+\mbox{IJ}}=\dfrac{1}{\dfrac{1}{4}-\mbox{IJ}^2}\geqq \dfrac{1}{\quad\dfrac{1}{4}\quad}=4
つまり R\geqq 2 が成立する.

反転は対合なので,同じように考えると
1=\dfrac{1}{R-\mbox{IO}}+\dfrac{1}{R+\mbox{IO}}=\dfrac{2R}{R^2-\mbox{IO}^2}
となり,
\mbox{IO}^2=R^2-2R
(内接円の半径を r とすると \mbox{IO}^2=R^2-2Rr
となりオイラーの定理が導かれる.

2025.10.20記
オイラーの定理
manabitimes.jp
にまとまっているので,参照しておきます.

2025.10.27記

には本問と同じテーマの問題である「Theme 6-6(97年滋賀医科大学・前期)」が紹介されています.




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