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1950年(昭和25年)京都大学(新制)-数学(共通)[3](旧バージョン)

2025.11.19記

[3] 各頂点では自由に動けるようにちょうつがいで結ばれた棒からなる凸四辺形 \mbox{ABCD} がある.これを適当に変形すれば一つの円に内接するように出來るかという問題である.\mbox{ABCD} の辺の長さを図のように順に a,b,c,d とし,\angle\mbox{ABC}\theta とするとき,それには a^2+b^2-2ab\cos\theta=c^2+d^2+2cd\cos\theta となるようにすればよい.

(i) これは何故であるか.

(ii) 上の等式を満足するように角 \theta をいつでも(即ち辺の長さ a,b,c,d の如何を問わず)取ることが出來るであろうか.

2025.11.25記
これはある意味難問です.当時の書籍 共通問題の研究と入試数学の完成 : 樂に学べて入試に万全 - 国立国会図書館デジタルコレクション(p.123),全國大學入試問題正解 昭和25年度 - 国立国会図書館デジタルコレクション(数学p.54)は概ね次のような解答でした(ab の差を表わす a\sim b|a-b| に直してあります).

[当時の解答]
(i) 凸四辺形 \mbox{ABCD} において \triangle\mbox{ABC}\triangle\mbox{CDA} に対して \mbox{AC} の長さについて余弦定理を適用することにより,a^2+b^2-2ab\cos\theta=c^2+d^2+2cd\cos\angle\mbox{CDA} が成立しなければならない.このとき凸四辺形 \mbox{ABCD} が円に内接するためには \theta+\angle\mbox{CDA}=\pi,つまり \cos\angle\mbox{CDA}=-\cos\theta となることが必要十分条件であるから a^2+b^2-2ab\cos\theta=c^2+d^2+2cd\cos\theta が成り立つような \theta を取ればよい.

(ii) a+b\gt \mbox{AC}\gt  |c-d|a+d\gt \mbox{BD}\gt  |b-c| であるから(何故そうなるかは書いていない),a+b\gt |c-d|a+d\gt  |b-c| が成立すれば良い.

(i) は特に問題はないのですが,(ii)が問題です.a=10,b=c=d=1 は条件を満たしますが,そもそも四角形をなさない4辺になっています.もちろん \mbox{AC}^2=a^2+b^2-2ab\cos\theta=c^2+d^2+2cd\cos\theta から \theta が鈍角であれば a+b\gt \mbox{AC}\gt  |c-d| が導かれますが,\theta が鋭角であれば |a-b|\lt \mbox{AC}\lt  c+d が導かれるので,条件は必要十分にはなっていないのです.つまりここで挙げた当時の書籍の解答は誤りです.

それでは,この両者をあわせて得られる

(ii) \mbox{AC} の存在条件により a+b\gt  |c-d|c+d\gt  |a-b| であり,\mbox{BD} の存在条件により a+d\gt  |b-c|b+c\gt  |a-d| である.

という条件はどうでしょうか.三辺のうち2辺の長さが a,ba,b\gt 0)であるような三角形が存在するための残りの一辺 ll\gt 0) に関する必要十分条件は第二余弦定理から l^2=a^2+b^2-2ab\cos\theta\gt 0 を満たす \theta0\lt\theta\lt\pi)が存在することですから,求める必要十分条件

a^2+b^2-2ab\cos\theta\gt 0c^2+d^2+2cd\cos\theta\gt 0a^2+b^2-2ab\cos\theta=c^2+d^2+2cd\cos\theta

の三式を同時に満たす \theta0\lt\theta\lt\pi)が存在することと同値です.もちろん任意の \theta0\lt\theta\lt\pi)に対して a^2+b^2-2ab\cos\theta\gt (a-b)^2\geqq 0c^2+d^2+2cd\cos\theta\gt (c-d)^2\geqq 0 が成立するので結局,求める必要十分条件

a^2+b^2-2ab\cos\theta=c^2+d^2+2cd\cos\theta を満たす \theta0\lt\theta\lt\pi)が存在すること

となり,\cos\theta=\dfrac{a^2+b^2-(c^2+d^2)}{2(ab+cd)} を満たす \theta0\lt\theta\lt\pi)が存在すれば良いので, a,b,c,d-2(ab+cd)\lt a^2+b^2-(c^2+d^2) \lt 2(ab+cd)
を満たせば良く,求める必要十分条件

|c-d|\lt a+b かつ |a-b|\lt c+d\mbox{AC} の存在条件)

となります.ここで \mbox{BD} の存在条件である a+d\gt  |b-c|b+c\gt  |a-d| は不要です.後述しますが,\mbox{AC} の存在条件と \mbox{BD} の存在条件は同値になるからです.

[解答]
(i) 凸四辺形 \mbox{ABCD} において \triangle\mbox{ABC}\triangle\mbox{CDA} に対して \mbox{AC} の長さについて余弦定理を適用することにより,a^2+b^2-2ab\cos\angle\mbox{ABC}=c^2+d^2+2cd\cos\angle\mbox{CDA} が成立しなければならない.このとき凸四辺形 \mbox{ABCD} が円に内接するためには
\angle\mbox{ABC}+\angle\mbox{CDA}=\pi
となることが必要十分条件であるから a^2+b^2-2ab\cos\theta=c^2+d^2+2cd\cos\theta となるようにすればよい.

(ii) \cos\theta=\dfrac{a^2+b^2-(c^2+d^2)}{2(ab+cd)} を満たす \theta が存在すれば良いので, a,b,c,d
-2(ab+cd)\lt a^2+b^2-(c^2+d^2) \lt 2(ab+cd)
を満たせば良い.つまり「(c-d)^2\lt (a+b)^2 かつ (a-b)^2\lt (c+d)^2」,すなわち
|a-b|\lt c+d かつ |c-d|\lt a+b」を満たせば良い.

しかし,この条件,すなわち,「|a-b|\lt x\lt c+d かつ |c-d|\lt x\lt a+b を満たす実数(正数)x が存在する」は「|a-b|\lt x かつ |c-d|\lt x かつ「x\lt c+d かつ x\lt a+b を満たす実数(正数)x が存在する」と同値ですから,結局

|a-b|\lt x\lt a+b かつ |c-d|\lt x\lt c+d を満たす実数(正数)x が存在する」

と同値であることがわかります.要するに

「三辺の長さが a,b,x となる三角形と c,d,x となる三角形が同時に存在する」

と同値であることがわかります.このとき,2つの三角形の長さ x の辺をくっつけることによって四辺の長さが a,b,c,d である凸四辺形を作ることができることがわかります(凸四辺形を対角線で切って裏返してくっつけることにより,四辺の長さの順番は自由に入れ換えられるので,問題文のように順に a,b,c,d である必要はなく,四辺の長さが a,b,c,d(順不同) である凸四辺形で大丈夫です).よって最終的な求める必要十分条件

「四辺の長さが a,b,c,d となる凸四辺形が存在する」

となります.そして「四辺の長さが a,b,c,d となる凸四辺形が存在する」ならば等式を満たす \theta が存在するので「必ずその凸四辺形を適当に変形することによって一つの円に内接させることができる」ことがわかります.

実際,\angle\mbox{ABC}=\pi となる極限から \angle\mbox{BAD}=\pia+d\lt b+c の場合) または \angle\mbox{BCD}a+d\gt b+c の場合)となる極限まで \angle\mbox{ABC} を減少させると \angle\mbox{ABC},\angle\mbox{CDA} はともに単調減少し,\angle\mbox{ABC}+\angle\mbox{CDA} の値は \pi より大きな値から \pi より小さな値へと連続に変化します.よって中間値の定理から
\angle\mbox{ABC}+\angle\mbox{CDA}=\pi となる場合が(唯一)存在します.

という訳で[解答]をより整理します.その前に,本問の場合,\mbox{AC} を主役に考えたので「|a-b|\lt c+d かつ |c-d|\lt a+b」という必要十分条件が得られましたが,\mbox{BD} の長さを主役に考えると「|a-d|\lt b+c かつ |b-c|\lt a+d」という必要十分条件が得られることに注意しておきます.これら2つの条件が即座に同値であることは見えにくいですが,2つの条件はともに「四辺の長さが a,b,c,d である凸四辺形を作ることができる」ことと同値になるので同値という訳です.さらに,この2つの条件が同値であることは,
\max\{x,y\}=\dfrac{x+y+|x-y|}{2}\min\{x,y\}=\dfrac{x+y-|x-y|}{2}
という式を用いればわかります.この前者の式を用いると,求める必要十分条件は「a+b+|a-b|\lt a+b+c+d かつ c+d+|c-d|\lt a+b+c+d」,つまり「2\max\{a,b\}\lt a+b+c+d かつ 2\max\{c,d\}\lt a+b+c+d」と同値であり,よって求める必要十分条件

a\lt b+c+d かつ b\lt a+c+d かつ c\lt a+b+d かつ d\lt a+b+c

となります.この \mbox{AC} を主役に考えた条件は a,b,c,d について対称な条件に変形することができるので,\mbox{BD} を主役に考えた条件と同値となるという訳です.この対称な条件は結局,

「凸四辺形の四辺の長さはいずれも残りの三辺の和未満となる」

ことと同値であり,これはやはり,「四辺の長さが a,b,c,d となる凸四辺形が存在する」ことと同値となります.

([解答]のつづき)
|a-b|\lt c+d かつ |c-d|\lt a+b」は |a-b|\lt a+b|c-d|\lt c+d により「|a-b|\lt x\lt a+b かつ |c-d|\lt x\lt c+d を満たす実数(正数)x が存在する」ことと同値であるから,「三辺の長さが a,b,x となる三角形と c,d,x となる三角形が同時に存在する」ことと同値であり,このとき,2つの三角形の長さ x の辺をくっつけることによって「四辺の長さが図のように a,b,c,d である凸四辺形を作ることができる」ことと同値となる.

よって各頂点では自由に動けるようにちょうつがいで結ばれた棒からなる凸四辺形を適当に変形すれば必ず一つの円に内接するように出來る,つまり,四辺の長さが図のように a,b,c,d である凸四辺形を作ることができるならば等式を満足するような \theta をいつでも取ることができる.

問題文が「 各頂点では自由に動けるようにちょうつがいで結ばれた棒からなる凸四辺形 \mbox{ABCD} がある.これを適当に変形すれば一つの円に内接するように出來るかという問題である」,「\theta をいつでも取ることができるか?」とあったので,「四辺の長さが図のように a,b,c,d である凸四辺形を作ることができるならば等式を満足するような \theta をいつでも取ることができる」という形で解答しました.本問の意図は,凸四角形は変形することによって必ず円に内接させることができることを示すことにあると思います.

2025.11.26記
解析「1」の傾向と對策 : 新制大學入試 昭和26年版 - 国立国会図書館デジタルコレクション(p.179)
に正しい解答が載っていて,中間値の定理を用いた別解も書いている.




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