ここで は,それぞれ第
週における未感染者数,感染者数,回復者数を表す.
および
はそれぞれ感染率,回復率を示し,
とする.また
,
,
,
とする.
を基本再生産数,
を第
週の実効再生産数と呼ぶ.このとき次の問いに答えよ.
(1) を求めよ.
(2) を仮定して,
のグラフ(
横軸,
が縦軸)をかけ.さらにその特徴を記述せよ.
(3) (2)の理由を「基本再生産数」と「実効再生産数」の用語を使って説明せよ.ただし公比の絶対値が 未満の等比数列
は,
が限りなく大きくなるとき
が
に限りなく近づくという性質は使ってもよい.
(4) となるためにはどうすればよいか.「感染率」,「回復率」の用語を使って,例を挙げて具体的に説明せよ.
ランベルトのW関数(2021.02.22)
2021.02.21記(2021.02.22前置きを加筆)
離散型 Kermack-McKendrick SIR(Susceptible-Infectious-recovered)モデル.
高校数学で理解する感染症の数理(pdf) を読むと良い.
本問はどこまで丁寧に解答して良いかは謎.
(2021.02.22追記)
SIRモデルでは、
感受性者(感染可能性がある非感染者),
感染者(感染力をもつ感染者),
回復者(免疫を保持しいる等で感染のおそれがない者)
となっており,このモデルでは
・出生,死亡,転出,転入はないことが仮定
((1)で合計人数が変化しない
注) 死亡者を回復者に含める場合もある)
・回復者は再感染しないことが仮定
((2)で回復者は単調増加する)
・感染者は一定の割合で回復することが仮定
(感染者が多くても医療が逼迫しないことが仮定)
・新たな感染者数は感受性者に比例し,感染者に比例する,つまり接触回数は感受性者に比例し,感染者に比例し,その一定の割合で感染することが仮定
(個人毎の接触回数の違いや,個々の接触の度合いの違いは考えない)
・潜伏期間はなく即時に感染力をもつ
というモデルである.
回復者が再感染しないことから
・回復者は感染者がいる限り単調増加する
・回復者が感受性者になることはないので感受性者は感染者がいる限り単調減少する
ことがわかる.そして十分時間が経つと感染者が0になることを示すのが(2)である.
(1) により,
は一定となるので,
(2) まず, のときに
を示す.
より成立する.また より
(等号成立は )
となり は感染者がいる限り単調減少する.
次に であるから,
,つまり
のときに
となる.今,
により
となる.そして
は感染者がいる限り単調減少するので,
は感染者がいる限り単調減少することから
の増加率は単調に減少する,つまり,
は最初は増加するが,やがて減少していき,最終的に0に近づいていくような単峰のグラフになる.
[別解](途中から)
は感染者がいる限り単調減少する.
また, より
は感染者がいる限り単調増加する.よって
により,
の増加量
と
の減少量
を比較して
,つまり
ならば
は増加する.また同様に,
ならば
は減少する.ここで
より,
は最初は増加し,
は感染者がいる限り単調減少することから,やがて
となり,
は減少する.
ここで であるから,
の差分は最初は正であるが,ある時点を境に負に転じ,それ以降は感染者がいる限り負のままであることがわかる.つまり,
は最初は単調に増加し,ある時点を境に単調に減少することがわかり,単峰のグラフになることがわかる.
注) であるが,
とは限らない.
は単調減少であるが,感染者が0になった時点で,これ以上
は減らなくなる.この値
を感受性者の最終規模といい,連続型の場合は
をみたすことが知られている(後述).ここで,この方程式をみたす
は唯一であることが計算により確認できる.
(グラフは略)
(3) 実効再生産数は感染者数の増加率であり, 基本再生産数は初期条件での感染者数の増加率である.基本再生産数は1よりも大きいため感染者数は最初増加するが,実効再生産数は減少関数のため,感染者数の増加率は減少し,やがて1を下回る.実効再生産数が1を下回った後は感染者数が単調に減少するが,減少の度合いは公比が正で1未満の等比数列よりも大きく,公比が正で1未満の等比数列が を限りなく大きくするときに 0に限りなく近付くことから,それよりも速く感染者数は 0 に限りなく近づくことがわかる.
(3)は(2)を数式なしで説明しているだけだなぁ.もしかして(2)はもう少し真面目に を解かないといけない?
(4) 未感染者数 を小さく,感染率
を小さく,回復率
を大きくすれば良い.
未感染者数は定数であるから,それを小さくすることは不可能であるように思えるが,未感染者数とは感染するかも知れない人数のことであるから,感染しない人が増えれば実質的に未感染者数は小さくなっているとみなすことができる.つまり未感染者数(感染可能性のある未感染者数)を小さくするためにはワクチンを開発して接種することによって免疫保持者を増やす必要がある.
感染率を小さくするためには,外出や会食を控えたり学校を休校にしたりリモートワークを推進することによって人と人との接触機会を減らしたり,マスク装着や手洗いやソーシャルディスタンスを保つことによる感染症対策を行うことが必要である.また,PCR検査によって感染者を早期発見して隔離して感染者が人との接触をしないように隔離することも必要である.
回復率を大きくするためには,治療薬を開発することが必要であり,またPCR検査によって治療すべき感染者を早期発見することが必要である.
実際は, は定数ではなく
に依存するため,そのうち感染者数は減少するという見通しは甘いことがわかる.
は定数とはならないことは,これは緊急事態宣言の発出や解除により心理的に接触機会や感染症対策を増減したり,PCR検査の拡充が進むことからもわかるだろう.
もちろん,SIRモデルはあくまでもモデルであり,現状にきちんとあてはまっている数理モデルであるかどうかはわからないので,SIR モデルによる未来予測が100%正しい訳ではないが,このモデルは定性的には妥当なモデルと考えた場合,このモデルに基づくと,接触機会を増やしたり感染症対策を疎かにしたり PCR 検査数を減らしたりすると,実効再生産数が1をはるかに超えて大きくなる可能性があり,感染爆発が起こる可能性を示唆している.
正解がわからない以上、悲観的に考えて SIR モデルの結果を信じると,ワクチンの開発,接触機会の逓減,感染症対策の衛生の徹底,PCR検査の拡充,治療薬の開発を行えば良く,個人にできることは接触機会の逓減,感染症対策の衛生の徹底,PCR検査の受診である.PCR検査の受診が気軽にできるように,安価でPCR検査が受診できること,及び受診できる場所を増やすことが必要である.
連続型 Kermack-McKendrick SIR(Susceptible-Infectious-recovered)モデルについては,例えば
2021.02.22記
連続型だと,
となる.
① ,③から
だから,
つまり
となる.ここで
であるから,
となる.離散の場合と同じように で
だから,
となり,これを変形すると
が得られる.
とすると
より増減表は次表となる.
| … | … | ||||
|---|---|---|---|---|---|
だから,
に
をみたす
が唯一存在する.これが
である.
この解を表現するには, ランベルトの W 関数 を用いれば良い.
は
と変形できるので,ランベルトの W 関数を用いて
と表すことができる.この範囲では,
は二価関数となるが,分枝の値,つまり二つの値のうちの小さい方(負の方)をとる.
ちなみに,ランベルトの W 関数は, の極限値が
となるという話でも登場する.