そろそろ、日本の財政が厳しくなってきたので、MMTという手法が関心を集めています。これは、戦前日本で国債日銀引受が行われた結果、インフレーションが起きたことを先例として、中央銀行が国債を買い続ければ、インフレになるのではないかという期待が先行しています。

https://www.investopedia.com/modern-monetary-theory-mmt-4588060
”Modern Monetary Theory (MMT)”investopedia

「パンがなければお菓子を食べればいいじゃないの」的に、「日本銀行が、お金刷ればいいじゃないの(日銀が無制限に国債買えばいいじゃないの?)」という指摘が参照するMMTは、英語圏のページでは、日本の例を参考にして、国債発行が財政破綻の直接の原因ではないと主張する学者さんの存在を説明しています。

 経済学者のP.クルーグマンの主張はMMTに似ているものの、彼自身はMMTには反対しており、その他の方の反対意見としては、結果的に重税を増やすことになるので、結果的に経済に悪影響を与えるというものが多いようです。
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インフレターゲットのノリはこんな感じ

たまたまダイヤモンドオンラインで記事があったので取り上げましたが、何を言ってるのかよくわかりません。インフレ目標を立てればインフレになるという案は昔からあって、
「社会主義かよ!(๑˃̵ᴗ˂̵)و 」と一蹴されて終わりでした。

日銀買いオペによって物価上昇しない理由

 インフレは過剰流動性という説明は正しいのですが、財の移動を伴わず、決済の行使に使わない通貨が発行されても、実経済に影響を与えないため意味がありません。

子供が「俺、百万円持ってるぜ!」、「俺、百億万円持ってるぜ!」と言い合うことでインフレーションを起こそうとするようなもので、子供が嫌なら内閣総理大臣でも良いですが、百億万円(?)分の資金があるぞ!と高らかに宣言しても、インフレという、財に対する商品の枯渇という現象が起きません。

「じゃあ、デフレ脱却は、どうすりゃいいんだよ!」
ソフィーさんは個人的には、財務省が確信犯で財政を引き締めのために言っているような気がしていて、読みが正しければ、財務省はキチンと説明しない方がうまくいくので、故意に省略していると考えています。


財政規律は必要なのか

 財政規律は、複雑な経路をたどって、必要不可欠という結論になります。
 1年、2年くらいは、大盤振る舞いして、医療費、高齢者福祉、児童福祉に使えるでしょう。問題は、新たに雇ったケアマネージャーさんや、保育士、医師、看護師の費用を国家財政でまかなうと、5年、10年と雇用を続ける必要が出てくるので、赤字国債が止まらなくなります。

 赤字国債が限界なので、雇用をやめるといえば、何のための支出かわからなくなってしまいます。

 後年度負担を過小評価して、赤字が増えてきたのが自治体の財政で、信用があるからといって支出してきた結果、最近になって児童福祉や育児支援が削られています。最終的には、雇用を圧縮せざるをえなくなり、労働過剰を招くことになります。


ためしに日本銀行券を印刷してみる?

 通貨発行高は11末で931,591億円、貨幣流通高46,619億円、マネタリーベース3,436,698億円なので、日本人一億と簡単に計算すると、銀行口座に93万円、現ナマ4万7千円を日本人は持っています。350万円までなら「足りなけりゃ、すぐにでも日本銀行が刷ってやるぜ!不足が生じた場合は、日本銀行が紙幣を用意する準備があります」と日本銀行は宣言しておられます。統計的には、思ったほど紙幣は刷っておらず、みんな、金融機関の決済で済んでいるのですね。少なくとも、物理的に刷る刷らないは意味がありません。
https://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/mb/base1511.pdf

ここまでやってみたらどうか。
皆様が持ってるインフレのイメージがコレ。
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社会の教科書に必ず載っている紙幣の山ですが、住宅ローンを抱えている人は、紙くずで返済すればいいので、これほど楽なことはありません。

実は、アジア通貨危機時に147円/ドルまで上昇し、日本円の価値が目減りしましたが、銀行や企業の自己資本比率が減少し、海外事業を撤退せざるを得なくなりました。一方で、輸出産業は好調になるものの、アジア地域が総崩れになり、アジア通貨危機、1997年の日本国内の金融破綻が相次ぐことになりました。写真のようなことが起きると、資本金も紙くずになってしまいます。


今でも日銀の国債保有でインフレ効果が起きている

 通貨は存在しているので、国債に見合う資本があります。
 日本国内の投資がなければ、海外に流出するわけで、これによって生じた資金により2008年の米国住宅バブル、その処理のリーマンショックを引き起こしています。

 日本の土地に使われれば、資産効果でバブル再来になるわけですが、日本人の一人当たりの所得は世界的に高かったことと、投資に見合う成長産業が存在しないので、日本には流入せずインフレは起きません。

 日本企業には投資価値はありますが、投資効率を上げるためにリストラする構造で、減収増益でしか投資価値を生み出すことができません。これは米国企業でも同様で、SP500指数が上がり続けているものの、米国経済は縮小していくため、年々、町並みは寂れていくように感じるはずです。日本で起きていることは、米国でも起きています。

 日本は地価が高すぎるために、 現預金は大部分が50代以上に集中し、40代以下では全く流動性資産がありません(ニッセイ基礎研究所参照)。65歳以上の世帯の資産額が約6000万円、平均が約4000万円ですが、大部分が宅地資産です。

 高齢者世帯の現預金が多いのは、質素倹約をしたからではなく、不動産価格は今に比べると安かったため、住宅ローンも生活費も少なく、可処分所得が生活費を上回る状態が続いたからです。

 麻生太郎議員が「地価を上げなければ日本は元気にならない」と言っていますが(2015年時点)、現実は逆で、もう少し居住費が安くならないと、現役世代は生活もままならないのです。地価が上がって資産が増えたとして、生活が楽になると思いますか?地価政策を持ち出す人は、統計資産に囚われすぎです。

No.11-007 22 November 2011 動かない家計金融資産と高齢化 ニッセイ基礎研究所
http://www.nli-research.co.jp/report/gerontology_journal/2011/gero11_007.pdf

高齢者世帯の家計資産額の約9割は宅地資産と金融資産 総務省統計局(平成16年11月実績) 
http://www.stat.go.jp/data/topics/topi183.htm


インフレターゲット手法は存在しない


 祖母は「年金に頼るのは恥知らずのすることだ」と言っていましたが、そのマインドは変わり、「年金だけでは足りない」という論調一色です。年金制度創設時には「貰えるモノはすべて貰う」というマインドでなかったらしく、前提が崩れてしまったので逆ざやになります。

 資産の多い高齢者層が亡くなれば、現役世代は譲渡税が払えなくなり、不動産は一定程度流出してデフレは継続します。住宅中古市場が形成されて不動産価値が下がれば、逆資産効果によって景気は悪化します。

 インフレ政策は何をしてもおかしくなります。
 国家財政を膨張させれば、一時的に増えた雇用により国債発行に歯止めがかからなくなり、福祉分野の労働需要が増え、輸出分野の労働需要が減ることで、労働単価が下落し、国債発行が限界を迎えたときに、労働過剰により労働単価が下落します。 

「お札を刷って国の借金帳消し」ははたして可能か 高橋洋一 【第135回】 2015年12月17日
http://diamond.jp/articles/-/83391