3月7日の打ち上げ失敗(3月10日追記)
H3打ち上げ失敗は、前回の固体ブースター側ではなく、第2段水素エンジン(LE-5B-3)ですが、弾道飛行まで達したものの、最後のところで周回軌道に乗らないで、落ちてきたようです。
現在でも、原因は不明で、着火信号処理の不具合があったことだけ判明。同じ機体レプリカが地上にあるので、実際に動作させることができ、今のところ、2段エンジン着火指示までは入ったが、電源系統に異常があり点火しなかったとされます。
2月17日の不具合は、アンビリカル電気的離脱時、FPGAが過渡ノイズで半導体スイッチがOFFになったというものですが、今回も電源箇所らしいので、設計やプログラムはできていても、実際の動作時の機器挙動に問題がありそうです。
記者は質問しているときには記事ができあがっていた
共同通信記者が2月17日(金)のH3打上の記者会見の場で、打上失敗の言質を取ろうとしたが、最後までJAXAプロマネが失敗ではなく中止と主張したため、共同通信記者が声を荒げたというもの。これに対して、TWやネット情報では非難が相次ぎ、特に記者による不快感の顕示が批判されています。
共同通信社は地方情報に強みがあるため、地方宇宙センターで落胆する画像を直後に撮っていたので、「失敗に落胆する市民」というニュースを準備していました。この記事を出すためには失敗という言質を取る必要がありました。
しかし予想外にも、日本人はロケットを好意的に見ていた人が多く、共同通信記者への共感が少なく、ネット上では批判が集中してしまいました。特に個人名まで晒して批判する方もいますが、それはかわいそうな気も。
【J-CAST】「あり得ない」「敬意のかけらもない」 H3打ち上げ中止、JAXA会見で反発広げた「記者の捨て台詞」2023年02月17日20時56分
事故するとすごく困るので回避手段が発達
ロケットは何万点の部品から構成されているため、失敗しやすく、また、意外な日本企業の部品が使われていることがあります。しかし打ち上げ失敗すると、その欠陥箇所が公表され、製造会社がナニガシで、何という部品が不具合という情報が報道されてしまうため、その企業広報担当者は気が気でありません。
時々、NASA調達品、宇宙開発用と書かれた製品があって、いかにも高度な印象がありますが、失敗した場合の逆宣伝をおそれて、断ってしまう企業もあります。
宇宙飛翔体は宇宙空間で修理できないので、故障回避の機構が充実しています。この機構が働いたことを、平気で「それを世間では失敗といいま~す」と言い切ってしまうには、あまりに無神経であって、全く失敗があってはならない神経質なものを、可能な限り健全状態に維持しているものと、あ~失敗しちゃったと簡単に言えるものとは違います。気の使い方が尋常でないことを、張り詰めた現場の中で共同通信の記者さんが感じないとしたら、経験不足なのかなと思います。
危機管理はまだ続いている
構造としては、水素エンジン LE-9 は点火したものの、固体燃料ブースターSRB-3点火しなかったものです。
推力用ブースター点火の AND 論理のいずれかが OKにならなかったわけで、そのまま打ち上げると爆発したか、推力が足りずに衛星ごと失われていたかもしれません。検出機能が働いて、点火直後に再起動可能状態で止められたのは、かなり奇跡的に失敗を回避できた例です。
実際、ひろゆき氏が現場を見たというように、雲や風だけで打ち上げ中止になることがあり、JAXA内では失敗と考えている方はないと思われ、一ヶ月後の3月の打ち上げに向けて動いています。
今回点火しなかった固体燃料ブースターSRB-3は、一種の火薬類と酸化剤を混ぜたもので、爆発により推力を得るバランスの難しさから、姿勢制御のずれで、あらぬ方向に進んでしまいます。

2月17日は水素エンジンに点火をしているため、液体水素を交換する必要から、打ち上げ可能になるまで一月かかります。
「H3」組み立て棟に 原因究明し3月10日までに打ち上げ臨みたい 2023年2月18日 11時53分
飛翔体ペイロード ALOS3(陸域観測技術衛星)の役割
ALOSを簡単に言うと、google map 人工衛星画像撮影です。
地震災害撮影を目的としてALOS衛星は開発され、地球を約98分で一周する周回衛星です。
陸の地形の変化を見るために、事故直後から急いで被災地へ撮影に行くのですが、陸上は道路が陥没したり、風が強くてヘリコプターが向かえないことが多いので、陸の有事に人工衛星で撮影することを目的としています。
人工衛星は、定期的に同じ場所を撮影するので(たしか2~3週間で同じ場所に戻る)、災害前の状態を撮影して記録しておき、災害後に再度撮影をすることで、その災害状況を比較しながら調べることができます。
ALOS3は白黒高分解能(0.8m)センサーに加えて、5波長センサを持っているので、津波や海域の調査のため、水を透過しやすい短波長を、植生によって吸収波長帯が変わる植物用に赤外光を使うなどの地表の違いも確認できます。可視光センサは分解能が低いので、分解能の高い白黒にカラー情報を載せて、パンシャープン処理をして地表画像として合成します。
最近の衛星は燃料を搭載する傾向があり、撮像場所に急接近させる必要から、重量が大きくなってしまいます。また、副衛星を積んで、複数の人工衛星を飛ばすことでコストパフォーマンスが上がります。
特大級の米国偵察衛星Keyhollは、燃料を使って下降して撮影することで高分解能撮影を可能にしているため、非常に重い衛星です。軍事衛星は総じて下降・上昇燃料を大量に積んでいるので、軍事目的の衛星はペイロードが大きくなります。



