バッシャール・アッサド大統領のロシア亡命強制モスクワ移住
バシャール・アッサドはロシアへ亡命し、現政権のバース党が消滅しました。
シリアはアッシリア、セレウコス、セルジューク、オスマンの要衝の地であり、地中海大国を目指す国は必ず領有する地域。トルコエルドアン大統領は、オスマン復活のためにシリアが欲しくてたまらない。
旧約聖書の言語の一つのアラム語は、アッシリアの言語であり、人の往来が多い肥沃な地域なので、古くから鉄器、文字、貿易が栄え、ローマと地中海を争ったフェニキア人もシリア出身です。
こうして、中東では米国・イスラエルが勢力を強め、ロシア、トルコ、イランが一体性を失い、劣勢に傾くことになります。ロシアの凋落が尋常でありません。
December 14, 2024 ISW Iran Update, Reported Control of Terrain in Syria
シリア元首のバシャール・アッサドはプーチン大統領とエルドアン大統領から支援を受け、イラン、ロシアの武器の中継地となり、軍空港のラタキアは兵站補給地とし、ウクライナ戦争、イスラエル戦争を制するために必要な地域として後詰めを守っていました。
シリアを巡る関係図 相関図をパワポに落としたら、とんでもなく複雑に
元々、バッシャールは1992年から英国留学をしていたことから、民主主義体制を築くよう期待されていましたが、ロシア、トルコ、イランの軍事アタッシェ政治に引っ張られ、軍部の暴走を招き、最後にはトルコエルドアン大統領、ロシアプーチン大統領からも見捨てられてしまいます。
バッシャールには統治能力が欠けていたフシがあり、不足を恐怖で補い支配する政治が暴走し、抑えが効かなくなり、ウクライナ戦線で兵力を喪失したロシアの支援が手薄になると、シャーム解放機構(HTS)の首都ダマスカスクーデターが成功してしまいます。
プーチン大統領は、下手に動いて戦線が拡大すると手に負えなくなるので、バッシャール・アッサド大統領は、強引にモスクワ移住を迫られたとコメントしています。
このシリアはISIS(Isramic State Iraq Syria)が誕生した地域。イスラム国の始まりはシリア政府反乱軍であり、アッサド政権では暴虐がひどく、また、南からのイスラエルの侵食が激しいため、反シリア・反米国軍閥が集結します。
イスラム教スンニの特殊性として、評議員がカリフを選任する仕組みがあり、スンニ派では野良カリフ(集団内のみしか通用しない)がポンポンと誕生します。
米国が旧ソ連を内部崩壊させるために、野良カリフのターリバーンを支援し、いざソ連が崩壊すると、アルカーイダというジハード・セクトの野良カリフに分派して9.11事件を起こすようになります。アルカーイダのシリア方面隊長ジョラーニは1000万ドル(15億円!)の賞金首がかけられ、米国から敵とみなされている人物です。
しかし、現実的に考えると、アルカーイダとて争ってばかりいられないので、米国(ブリンケン国務長官)と交渉し、きちんと統治するから支援を頼むと、新体制ができあがります。米国にとって、旅客機をWTCに突っ込ませた組織と調停するという、思い切った判断をします。
6 Dec 2024 【The Guardian】 Who is Abu Mohammed al-Jolani, leader of Syrian insurgents HTS?
ジハード主義者 HTSリーダーのジョラーニは、穏健派を装うが、誠実ではないラジカリストらしいとも
Isramic State、これはUnited Statesに対抗した、日出ずるStateの天子、日没するStateの天子に処す、つつがなきや的な対等な関係の命名です。アッサド政権の独裁制に反対する形で立ち上がり、米国を最大の敵とし、ここでHTSが抜け駆けして米国に近づき、ダマスカスクーデターに成功。
トランプ次期大統領からも、HTSは黙認するという約束を取り付け、とりあえず小康状態達成。
Isramic Stateは野良カリフであるものの、徴税機能を持たないので、麻薬栽培で資金を獲得するという、とんでもない連中なので、米国としては、まだHTSの方がマシです。加えて、ダマスカスとラタキアを南北におさえると、ロシア、イランの兵器輸送線が絶たれるため、一気に米国優勢に傾きます。
ここで、シリアはオスマンの要衝地であったことを踏まえると、とにかくエルドアン大統領は喉から手が出るほど欲しい地域。バース党はイスラム帝国領復興を目指す軍閥であり、エルドアンと相性が良い。
南のイスラエルにとって、ヒズボラの活動地は潰したく、国連緩衝地帯のゴラン高原への入植活動を始め、シリア側へ軍事行動を進めています。こうしてシリアを巡るトルコとイスラエルの抗争が始まり、特に米国傘下のHTS、クルド人(SDF)勢力を加えると、ほとんど中東では米国一強状態になります。
シリアを巡りトルコとイスラエルの戦争が始まるとも
この情勢では、とにかくトルコ・エルドアン大統領は全く面白くなく、領内、辺境のクルド人居住区を攻撃し、クルド人の肩を持つ米国に怒り心頭になっています。シリア難民を受け入れたのに、祖国がイスラエルに取られ、米国の勢力圏に落ちてしまうと、難民が暴動を起こしかねません。だから、どうしてもトルコはシリア領土をできるだけ保守する必要があります。今のところ、旧シリア軍はトルコ勢力圏にあり、ここが火種になりかねない。イスラエルは麻薬工場と武器庫破壊をしていますが、物理的に、シリア軍と接するため、一触即発です。
一方でトルコに対するクルド人は、英国の三枚舌外交によって祖国を失っているため、米国を完全に信用できるわけでもなく、また、トルコが背後から襲撃しているので、仕方なく親米HTS政権について、米国に頼らざるを得なくなります。