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「22世紀を見る君たちへ」平田オリザ著

著者の平田さんは劇作家ですが、演劇というものが教育に有用であるという信念のもと、大学での講義や教育に関する提言などを積極的に行っているということで、大学や行政からの協力要請も受けているとか。

大学入試の改革や教育全般についての発言も盛んに行っているということですが、この本はそれをまとめた内容となっています。

なお、書名通りに内容はこれから教育を受け大学受験に挑んでいく若者に向けた内容となっているようですが、はるかにそれを過ぎた年寄りにとっても有効な内容となっているようです。

 

現在の教育界は「社会で求められる人材」の養成に特化しようとしているようで、経営やITなど、「現在の社会に必要な」能力ばかりに着目してそれを教え込もうという方向ですが(それが有効かどうかも怪しいものですが)、本書冒頭では「漁師になるのに必要な能力は何か」と問いかけ、子どもがもしも漁師になりたいという希望を持っていてもその子が実際に漁師になる年代になった時にどんな能力が必要なのかは全く予測ができないということを示しています。

現在の漁業とその子が携わる時代の漁業は全く違う可能性が大きい。

もしかしたら、漁業ロボットを操作する能力かもしれず、あるいは魚の遺伝子操作の研究力かもしれません。

それと同様に、現在の職業というものがほんの数十年先には無くなるかも、あるいはまったく違うものになっているかも、その予測は不可能です。

英語教育すらどうなるか分かりません。

自動翻訳機の機能が進歩を遂げ、それを装着したら何の問題もなく使えるようになれば下手な英語教育などは不要になるかもしれません。

 

そこから、現在と将来の大学入試、著者も現在取り組んでいる入試改革、共通テストの挫折などを取り上げていきます。

著者は教育という点からも演劇の可能性を強く意識しており、大学に演劇学部を設けることを提唱していますが、そういった大学の入試で行われるのが討論劇(ディスカッションドラマ)を受験者に行わせるというものです。

数人が取り組むもので、何らかの状況を設定しそれを各自が役割を分担しながら討論を演じていくというものです。

これで状況の把握と認識、他の受験者とのコミュニケーション力、など多くの能力を測ることができます。

 

そして、実はこういった能力は演劇のためだけでなく、他の多くの人々にとっても重要なものであり、他の教育機関にとってもこれを応用することが有効だと主張しています。

いわゆる「非認知スキル」というものが広く話題になっていますが、こういったものを養成するためにもこれが役に立つということのようです。

 

なお、著者がこういった主張をしていくと、教育関係者で非常に強く反対意見を述べる人たちがいるそうです。

従来の受験勉強で養成される能力もあるという主張ですが、どうやら現行の受験制度で一定の地位を保持できている人々も多いのではないかという観測がされています。

 

非認知スキルに関する議論の中では「マシュマロ・テスト」という、60年代にスタンフォード大学の研究者が行った実験が現在でも大きく取り上げられていることが紹介されていました。

これは別の本でも紹介されていたことがありましたが、4歳児の目の前にマシュマロを置き「私が戻ってくるまで食べなかったらもう1個あげるよ」と言って部屋を出ていき、15分後に戻るまでその子が食べるか食べないかを調べたというものです。

我慢できたのは4分の1の子どもだけだったのですが、その後被験者の追跡調査を行ったところ、我慢できた子どものその後は大学進学試験のスコアも高く、その後も収入の高い職業に就く割合が高かったというものです。

しかし平田さんが見るところ、この試験には落とし穴があり、もしかしたら我慢できなかった4分の3の子どもはその後作家や起業家になったのではないか。

「食べなかった子どものその後」の調査だけでなく「食べちゃった子どものその後」がどうかも調べるべきだったとしています。

 

数学者の新井紀子さんが書いた「AIvs教科書が読めない子どもたち」という本は私も読んで衝撃を受けましたが、これについても平田さんが疑問を呈しています。

そこでは読解問題を多くの生徒が間違えることについて、新井さんが「語彙がない」ということをあげ、「だから教科書も読めない」と結論しているのに対し、平田さんは「試験慣れしていないだけではないか」としています。

試験問題の書き方には特徴があり、その模擬試験を何度もやっていると即座に答えられるものの、経験がないとそうはいかない。

そのため、都会の受験慣れした生徒たちには簡単であってもあまりそういった経験のない子どもには難しいのではないか。

さすがに専門家は見所が違うものと思いました。

 

受験というものを変えるということは教育自体も変えるということなのでしょう。

なかなか教えられたことの多かった本でした。

 

 




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