著者の石黒圭さんは国立国語研究所の教授で文章論が専門の言語学者です。
もう一人の著者石黒愛さんは、圭さんの娘さんで3人姉妹の長女、現役の女子大生です。
石黒圭さんは現代の若者言葉というものに興味を持っていますが、その実例として娘さんたちが話す言葉の中から特有の言葉を拾い上げます。
姉妹も長女が大学生、次女は高校生、三女は小学生ということで、若者言葉といっても微妙に年代差があるようです。
娘たちが話す言葉の中で聞きなれない言葉を聞くとそこで会話はストップ、その言葉についての調査を始めます。
娘たちに問いただし、さらに毎回お決まりのことば「例文を示せ」で実例を聞き取りその言葉の意味、細かいニュアンス、使用例をまとめていきます。
私もほとんど若者言葉を話すような若い人との会話をする機会がありませんし、昔のように電車の中で他の客の会話を聞くということもなくなりましたので、若者言葉というものの実際に触れることはまずありません。
そんなわけで、この本で紹介されている言葉の多くはうっすらとしか知らず、中には全く聞いたこともないというものもありました。
なお、通常はこういった場合には名詞の珍奇な使い方というものに興味が集まり勝ちですが、他にも形容詞、動詞、副詞、接続詞などがあり、本書もそれぞれ別の章としてまとめられています。
英語由来のようですが「モブ」という言葉が使われています。
映画などから来たようですが、モブキャラクターすなわちエキストラのような存在の無名、群集のような人々を指すということです。
他の言葉とつなげて「モブ顔」「モブみ」といったように使うこともあるとか。
ちなみに「モブ顔」とは没個性な顔という悪口です。
「えぐい」というのはもちろん食物のアクが強く口の中に不快感が残るという意味で、それは全年齢で使われます。
しかしそれを若者たちは「ありえないほどすごい」という意味で使います。
その意味で使われていた「やばい」がどんどんと普通になってしまったので、インパクトが強いような言葉を求め「えぐい」に移りつつあるようです。
若者言葉の作り方で特徴的なのが「語形を短く省略する」ということです。
スピード感が求められる中で、「気持ち悪い」は「きもい」「恥ずかしい」は「はずい」「難しい」は「むずい」といった具合です。
形容詞だけでなく、動詞でも「ツボにはまる」を「つぼる」「告白する」は「こくる」など。
複合語でもそれが起こり、「リア充」「レべチ」「胸キュン」といった具合になります。「クリぼっち」は何かわかる人は若者でしょうか。
「ワンチャン」は「ワンチャンス」の省略だろうとは思いましたが(それでも”ス”を取っただけですが)その意味までは全く想像できませんでした。
これを副詞的に用いて「もしかすると」「ひょっとすると」の意味に使うそうです。
例文「この展開なら、ワンチャン勝てるかも」というように使うのだとか。
このような若者言葉というものは、今に始まったものではなく昔からその時の若者たちが使う言葉がありました。
そしてその言葉はすぐに消えるか、その世代の人たちだけが使う言葉として残るか、全世代が使う言葉になるか、といった運命をたどってきたそうです。
「サボる」などはかつての若者言葉ですが、その後全世代が使う言葉となり、今でも残っています。
なお、中年以上の人間が若者言葉を使うのは、当の若者たちから見ると非常に「イタイ」ものにしか見えないそうです。まあ無理に使うものじゃなさそうで。