もう人生の残りも少なくなり、老化の真っ只中の私ですが、この本の題名「なぜヒトだけが老いるのか」を見て驚きました。
老いるというのは人間だけのことなのか。
そして読んでいくうちにそうだったのかと大きく納得できました。
そもそも生物はなぜ死ぬのか。
そこからこの本は始まり、生命というものが誕生したこの地球で進化する能力を得た生物はそれと引き換えに死ぬことも運命づけられました。
「死ぬものだけが進化できた」というのが本当のところです。
そして、ヒトという動物は「老化して病気で死ぬ」というのが(何も無ければ)運命です。
ところがヒト以外のほとんどの動物は「老いずに死ぬ」ということです。
野生の動物は基本的には老化せず、いきなり死にます。
もちろん捕食関係にある動物の場合は動きが鈍くなればすぐに食べられてしまうということがありますが、そうでなくても生物としての身体の仕組みからしてそうなっているようです。
哺乳類の生殖可能な期間(非老後)とそれ以降の期間(老後)とを一覧にしたグラフが掲載されていますが、驚きの結果となっています。
老後期間の年数がある程度あるのは、ヒト以外ではシャチとゴンドウクジラのみ。
同じ霊長類のチンパンジーやゴリラなどでも老後期間というのはほとんどありません。
それがヒトのみは生殖可能期間とほぼ匹敵するような長さの老後期間を持っています。
これを生物学者の著者はもちろん科学的な解説も詳しくしていますが、それ以上に力を込めて語っているのがその老後期間がなぜ人間社会に必要だったかということです。
著者はそのような生殖可能期間を過ぎた後の存在、その中でも社会のために貢献することができる存在を「シニア」という言葉で表しています。
そしてそのようなシニアの存在があったからこそ、他の動物との競争に勝ち人間社会が地球上に圧倒的存在となることができたのだということです。
動物の中でも極端に手間のかかるヒトの子育てですが、これには祖母の手助けが不可欠であり、それができた家族のみが生存できたとも考えられます。
そして男性のシニア、すなわち祖父的な存在も経験と知識を活かして人間関係を調節できるような存在、すなわち「長老」としての役目を果たすことで、その社会の効率化と最適化が図られていたと考えられます。
老化が始まったヒトは、ただそれだけでは本当のシニアにはなれません。
これまでの経験を社会のために活かすということを意識して暮らしていくことが必要です。
その意味では、シニアになれないただの老いぼれがかなり多いようです。
なお、「老化細胞」というものは、少し前にも「老化細胞を除去できる食品」などという発表があったので気になりましたが、この本でも解説されていました。
老化の根本原因ではないのですが、老化細胞というものが体内に蓄積するのは普通の現象です。
ただし、それが肝臓や腎臓などに溜まっていくとそこで炎症性サイトカインという物質を排出し、それが周囲の細胞を傷つけるということがあるようです。
老化細胞を除去するという機能は生体にあるのですが、それが弱ってくると上手く働かずに老化細胞蓄積につながるそうです。
何らかの手段で除去できれば良いのは確かです。
年寄りも社会のために何か活動することが必要なんでしょう。
それが役割でありこれまでの人類進化の要因でもあったということです。