ミトコンドリアは生物の細胞内の器官で、エネルギー生産に関わる働きをしています。
しかし遺伝子の研究が進むにつれその独自の遺伝情報が注目されるようになりました。
それは古代に別の生物であったミトコンドリアが他の生物の細胞内に取り込まれ(あるいはミトコンドリアが侵入し)共棲を始めたことを示しています。
そのミトコンドリアについて、様々な方向から説明をするのが本書著者の林さんで、医学的な観点から長年ミトコンドリアについての研究をしてきました。
ミトコンドリアがガン発生の原因でないかと疑われたことがあり、その基礎研究を始めたのがミトコンドリアとの付き合いの始まりだったそうです。
本書ではまずミトコンドリアの大まかな紹介のあと、細胞内共生説を示します。
ミトコンドリアの遺伝情報mtDNAはミトコンドリアの中に止まっていますが、なぜ細胞の核にそれを取り込まなかったのか。
そして実はわずかながらミトコンドリア制御の遺伝子が核内にあることも示します。
ミトコンドリアは生命エネルギーを発生させるという大任を担っていますが、それは多量の活性酸素を発生させるという危険な工程です。そこからミトコンドリアの発がん性という疑いがかけられました。
著者の研究の大きな部分でもあるこの癌ミトコンドリア原因説との対決は詳しく語られています。
ミトコンドリアはすべて母性遺伝です。
精子のmtDNAは子どもに伝わりません。
それにまつわる話も一つの章を設けて説明されています。
非常に詳しい話をこの分野の先端で研究活動してきた著者が記すという本で、かなりの読み応えがありますが、2002年出版ということで、その後の研究の進展もかなり大きいものがあると思います。
しかし研究を進める姿勢は他分野の人々にも十分に参考になるものでしょう。