数学分野では古典的名著ともいえる本で、初版はなんと1939年に発行。
その後1956年、1979年、2015年に改版されています。
著者の吉田さんは1923年に東大理学部卒業、その後数学者として活躍していたのですが、はしがきによれば病気療養の必要があり、その間に一般読者向けに数学の歴史などについて書いたとのこと。
その後、戦後になり漢字や仮名遣いの改訂、そして二進法の説明の補強なども行ったということです。
大きく2つの部分に分かれており、最初の「零の発見」はいわゆるアラビア数字、現在使われている「0」を用いた位取りの記法がどのように発展してきたかを説明したものです。
後半の「直線を切る」は数値の連続性について解説しています。
零の発見の最初は西洋でも使われていたソロバンの記述から始まります。
とはいっても、日本で広く用いられているソロバンとは異なるもので、操作性も悪く使い難かったもののようです。
日本では乗除算もできるようですが、そういった機能はなく除算といっても何度も減算を繰り返すだけのものだったとか。
そのような不完全なソロバンでも使わざるを得なかったのは、西欧中世以前には事実上筆算というものも無かったためです。
紙に数字を書いて、一つずつ掛けたり引いたりという筆算ですが、それを行うにもその記法が無ければならず、それ以前のローマ数字ではどうしようもなかったのです。
それを塗り替えたアラビア数字ですが、実際にはその起源はインドにありました。
その記数法がいつ始まったかということは分かっていませんが、少なくとも6世紀には位取り記数法が行われたという記録があるそうです。
それがインドからアラビアに伝わりました。
それがイスラム教国の発展とともにさらに進化し、ようやくヨーロッパ世界に入ってきたのは中世の頃からですが、ようやく13世紀になってイタリアでインド記数法が実用に使われるようになったということです。
コンピュータ化が行き届いた現在では筆算もすることは少なくなったのでしょうが、それすらできなかった時代がさほど遠くない過去にあったというのも忘れがちなことでしょうか。