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「学力喪失 認知科学による回復への道筋」今井むつみ著

今井さんの本は以前に他の共同研究者たちとの共著の「算数文章題が解けない子どもたち」というものを読み、かなり衝撃を受けました。

算数の文章題を解くにあたり、そもそもその問題の意味が分かっていないようだということでした。

 

sohujojo.hatenablog.comその本の中でも紹介されていましたが、「たつじんテスト」というものを開発し、それを実際に小中学生に解いてもらいなぜそれが分からないのかに迫りました。

 

今回今井さんが単独で著したこの本では、その「たつじんテスト」の実例を細かく検討しさらにそれの原因を深く探り、その対策まで踏み込んでいきます。

 

なお、前著の書評では今井さんを「教育学者」と考えていましたが、実は認知科学の専門家で特に言語心理学発達心理学を研究されているそうです。

またコンピュータの進化の問題にも関わっており、AIにも通じています。

 

本書では第一部「算数ができない、読解ができないという現状から」第二部「学力困難の原因を解明する」第三部「学ぶ力と意欲の回復への道筋」と進めていきます。

 

この「たつじんテスト」では問題の答えを書くだけでなく、そこに至る道筋も細かく記載させるようなものとなっており、誤答の場合もその原因を探ることができるように作っています。

「子どもが14人一列に並んでいます。ことねさんの前に7人います。ことねさんの後ろには何人いますか」という問題は小学生にとってかなり難題のようでした。

単に「14-7=7」としただけ、「14×7=98」などとしたものもあります。

また14個の〇を書いてそれを数えたにもかかわらず「うしろに7人」と間違えた子もいます。

どうやら、「式の意味」を考えるということが全くできていないようです。

そして「問題文にある数字は皆使う、ない数字は使わない」という方策を決めてしまっているようです。

これを「スキーマ」と言います。

小学生の段階でもすでに「こういう問題はこういうスキーマで解く」ということを決めてしまっており、そのスキーマが間違っていた場合はどうやっても正解にたどり着きません。

この「間違ったスキーマ」を見つけ出すのもその子が「なぜできないのか」を探る第一歩となります。

 

小学生には、いや中学生でも高校生でも「分数」というものは非常に難しいもののようです。

分数の意味というものが理解できないまま、色々な問題をやらされても正解するはずもありません。

いやそもそも「イチ」という概念が間違っている場合もあるようです。

生徒が30人いるクラスが「一つの組」であるということが受け止められない子どももいます。

30=1、もちろんその単位が異なりますが、この「単位」というものも難関です。

 

認知科学では「記号接地」という用語を用います。

様々な「記号」というものを実体のあるものとして認識できることを「接地」と表します。

これは人工知能の機能の理解のために認知科学で研究されていますが、まだ未解決課題だということです。

AIに「いちご」という言葉を教え、「食用にする赤い実でストロベリーとも言う」といいうことがAIが覚えたとします。

これでAIは「いちご」という概念を「理解している」と思いがちです。

しかしAIにはイチゴの香りや味は決して理解できていません。

これは「接地」できていないということです。

現在の最先端AIであるChatGPIは非常に巧みに言語を操り対話もできるかのように見えます。

それで「生成AIが人間に取って代わる」などと言われることが多いようです。

しかしChatGPIといえど「記号接地」は全くできていません。

言って見れば「ChatGPIは超優秀な”次の言葉予測マシン”」だということです。

 

ChatGPIに、この本で使われている「たつじんテスト」の小学生用の分数問題をやらせてみました。

「2分の1 と 3分の1 のうちどちらが大きいですか」というもので、小学生でも半分近くが間違えていました。

この問題をChatGPIは「3分の1が大きい」という間違いを犯しています。

ChatGPIと算数が分からない子どもに共通するのは「パターンは覚えているがその意味が抽象化されていない」ことです。

 

新聞社の記者がChatGPIに東大入試問題を解かせたという記事があったそうです。

英語の問題は8割以上が正解だったのですが、数学のテストでは1点しか取れなかったそうです。

解答がたまたま一致したものもあったのですが、解き方の論理の説明を求められてもまったく答えられなかったとか。

 

こういった「学力が喪失されている子ども」に「生きた知識」を身に着けさせるにはどうしたらよいか。

以下の5点に集約されるということです。

1.基本概念の記号接地をすること。

2.ブートストラッピング・サイクルによって事例からの一般化、抽象化を自分で行うこと、その際質の高いアブダクションを行うこと。

3.基本概念のスキーマが誤っている場合には修正できること。

4.「システム2思考」で「システム1思考」をコントロールすること。

5.知識が身体の一部になっていて様々な状況で自在に使えること。

認知科学の術語で記載されておりちょっと分かりづらいものですが。

 

具体的には様々なゲーム化したもので遊びの中でこういった体験をさせて理解させることが有効だということです。

 

思ったより多くの生徒たちが試験の問題の意味すら分かっていないということは衝撃的なことです。

おそらく学校を卒業した大人たちの多くも同様なのでしょう。

 

 




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