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「ウマの科学と世界の歴史」リュドヴィク・オルランド著

ウマは人類の歴史を大きく左右したとも言えます。

それを農耕に使えば生産性が大きく向上し、また遊牧には不可欠、さらに一番大きいのは戦闘力と移動能力を増すことでした。

しかし多くの家畜動物の中ではもっとも遅く家畜化が進められたとも言えます。

すでに原種というものは化石の中にしか見られず野生馬もありますがそれは原種とは違うようです。

そういったウマの歴史というものを、遺伝子解析で化石や遺物の中から多くの生物の由来を研究してきた著者が詳しく見ていきます。

 

ウマを最初に家畜化したのはどこか。そしてその時の家畜化されたウマが現在のウマの先祖なのか。

5500年前の遺跡がカザフスタののボタイで見つかり、そこからは多数の動物の遺物が出土しました。

そしてその遺物の大部分がウマのものだったのです。

これまでに知られたウマの遺物の中では最古のものだったので、ここがウマ家畜化の始まりであり、そこのウマが現在のウマの先祖かと思われました。

しかしDNA分析をしてみるとそうではないことが分かりました。

ボタイのウマのDNAは現在の世界各地で飼育されているウマのものとは関係なく、ただわずかに最後の野生馬と言われるブルジェワリスキーウマ(モウコノウマ)だけが近縁ということでした。

どうやら別に現在のウマの起源はあるようです。

 

その後も各地の遺物の解析が進みましたが、4200年前のドン川とヴォルガ川こ河口付近の遺跡から得られたウマの遺物のDNAが現在のものと関係が深いことが分かりました。これを仮にDOM2と名付けています。

現在の家畜ウマの真の発祥地はここだと見なして良さそうです。

このDOM2の特徴は「従順さ」と「丈夫な背中」であるということが、遺伝子解析からも分かっています。

それが家畜としてウマを飼い使う上では非常に重要でした。

そして家畜としてコントロールされた繁殖の中でこの系統だけが家畜馬として広まっていきました。

 

この「4200年前」の遺跡というのは、実は非常に重要な時代なのかもしれません。

世界の歴史を並べてみた場合、この4200年前を表す「4.2kイベント」という概念があるそうです。

メソポタミアアッカド王国の滅亡、エジプトの古王国の崩壊、インダス諸王国の崩壊、それらはいずれも大きな旱魃により同時期にもたらされています。

世界的な気象異常があったと考えられるのですが、それがウマの家畜化とも何らかの関係があるのかもしれません。

 

人類はウマを広く家畜化して使いましたが、同様にロバも使ってきました。

戦争にはウマの方が有用ですが、輸送などにはロバの方が耐久力があり使いやすい面があります。

そして父ロバと母ウマの間に生まれるラバというものが、その父母よりもさらに頑健で耐久力の点で優れていました。

このラバは世界中で使用されてきました。

ただし、よく知られているようにラバはその子孫を残すことはできません。

雌ラバを妊娠させようとしてもほとんどの場合流産してしまいます。

つまり、世界中で使用されてきたラバはその都度父ロバと母ウマから作り出されなければならなかったのです。

そのため、世界のどこでもラバは非常に高価になったということですが、それを上回る利点があったためにウマとロバを別集団として維持し、その間での混血児を生産していたそうです。

 

本書最後はサラブレッドによる競馬で結ばれています。

現在、農耕も輸送もウマによるものはほとんどなく、ウマの活躍の場はほぼ競馬だけに限られていると言えるかもしれません。

しかしそこで使われているサラブレッドは非常に高度な血縁管理のもとで繁殖されているためにほとんどすべてが近親婚ともいえる状態になってしまいました。

そのため遺伝病が多数発生しており今後の種の維持も怪しくなっています。

さらに競馬自体がかなり不自然なものとなっており、ウマの身体成熟は6歳くらいなのですが、それをはるかに下回る2歳前後からトレーニングを始め3歳でレース開始という無理がたたり、多くのウマが怪我をしたり突然死をしてしまうことになっています。

また多額の賞金などが関係するためドーピング事件も後を絶たず多くのウマが不審死を遂げる事態にもなっています。

ウマの未来というものはあまり明るくはないようです。

 

 

 




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