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「地図とデータで見る 生物多様性の世界ハンドブック」サラ・ボルトラミオル、エルヴェ・プレディフ、ローラン・シモン著

生物多様性が失われていると言われていますが、その実情はというとなかなかイメージしにくいものでしょう。

それを豊富な実例のデータと世界全体の地図で示そうという本で、見ると分かりやすいと感じさせられます。

本書の著者はフランスの研究者ですが、世界全体を対象として編纂されています。

それでもやはりヨーロッパなどの例が多いのでしょう。

なお、地図の作図はル・モンド紙のカルトグラファー(地図製作者)と記されている方々が当たっており、非常に美しく分かりやすいものとなっています。

 

全体の構成としては、「生き物のバランス(アンバランス)」「一義的原因から複雑なプロセスまで」「進め方、アプローチ」「バランス(アンバランス)のコントロール」と分けられており、生物多様性を巡る現状だけでなく、それに対する政策などの要因についてもまとめられています。

 

多様性というものが人間の介入によってより広げられていったということも意外に感じられるかもしれません。

人間が動植物の利用を進めることは、自然そのままのものを失わせる一方で新たなものを産み出しました。

さらに、「コロンブス交換」として知られる、新大陸発見以降の新大陸・旧大陸相互の生物の入れ替えというものが事態を複雑化しています。

それまでその土地にいなかった生物を導入することは、在来生物を絶滅させる危険性がある一方でその場の多様性を増やすことにもなります。

 

動植物の栽培化、家畜化の主要な中心地はメソポタミア周辺ということは知ってはいましたが、それと並んでアマゾン川流域一帯がそれに匹敵するということは気づきませんでした。

ギアナ高地ではサツマイモ、タロイモ、パイナップル、パパイヤ、トウガラシ、アンデスでは綿花、カボチャ、トマト、熱帯雨林アマゾン川流域では落花生、カボチャ、タバコ等々、現在世界中で栽培されている作物の多くがこのアマゾン周辺地域で最初に栽培化されたそうです。

 

生物の多様化が進むのは、自然そのままの場所よりも人間の介入があるところの方がより強いということは意外かもしれません。

この例として本書にあげられているのが、フランスのグラン・コース高地、そして日本の里山でした。

そしてその双方とも「手つかずの自然が残されている」と誤って理解されているということも明記されています。

 

生物多様性を守る場合、「病原菌やウイルスも守るのか」という問題があります。

本書にも「新規感染症ホットスポット」を示す世界地図が掲げられていますが、よく知られているようなアフリカの熱帯雨林周辺よりも危険なのが中国、インドで真っ赤に塗られて示されています。

アフリカでは確かにエボラウイルスなどがしばしば発生しますが、Covid-19、SARS鳥インフルエンザ、ニパウイルスなどは中国由来と言われています。

こういった細菌・ウイルスを根絶すべきなのかどうか。

さらにそれらを媒介すると言われているネズミ・コウモリなどの小動物、蚊などの昆虫を退治すべきなのか。

これまでは感染症対策として疑いもせずに根絶を目指してきましたが。

 

生物多様性を守るための方策としての自然保全と大きく関わるのが最近に新エネルギーです。

大規模水力発電のためのダムは一方で大々的に河川環境を変えてしまいます。

大きな面積を必要とする太陽光発電は環境破壊と見なされる場合もあります。

風力発電の風車は低周波公害もひどく、さらに鳥などを衝突死させています。

このような新エネルギー施設がどんどんと広がればそれだけ生物多様性が失われます。

どこかで折り合いをつけなければならないのか。

 

生物多様性を守りましょうと簡単に言うだけでは済まない問題が多数あるということがはっきりと分かります。

 

 




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