リンに関する本を読みましたが、肥料用に用いるリン鉱石の資源は徐々に減少しており枯渇の不安が出ています。
一方、過剰に施肥されたリンが農地から流れ出たり、下水として排出されたリンが処理水の中に含まれるなどして海や川に蓄積し赤潮などのプランクトン異常発生につながるということも見られます。
農地に農作物の栄養成分として投じられたリンは植物体に移行しそれが食物として人間や家畜に食べられるのですが、その場所(生産地と消費地)が全く離れていることが問題です。
同じ場所で植物が成長しそこで枯死して分解するなら植物栄養成分として使われたリンもそのままその場所の土壌に帰るのですが、それが食料は人間が多数住む都会に運ばれ、動物飼料は牧場などに運ばれ、そこで食べられ(かなりの量は捨てられ)分解し排出され下水に流れ込み、もともと植物が成長した場所には戻ることはありません。
ここで問題となるのは下水処理の行程です。
かつては有機物や微細粒子などを取り除くのみで、水に溶け込んだリンを除去することができず、下水処理水として放流された中にも高濃度のリンが含まれそれが下流から海に流れ込みそこでリン濃度の上昇を招きました。
しかし下水処理の高度化が進みかなりの割合で処理水中のリンを取り除くことができるようになったそうです。
京都大学の津野教授がその工程の概説を説明したものがありました。
https://www.jiwet.or.jp/quarterly/n008/pdf/n008-004.pdf
リン肥料の原料としてのリン鉱石はかつては大半を米国から輸入していたそうです。
しかし米国側の政策によりそれが止められ、その後中国からの輸入に代わりました。それもこの頃は価格が急騰しているということです。
とはいえ、日本は世界中から多くの食料を輸入しておりその中には大量のリンが含まれています。
その多くは下水に流入しその量は年間55000tと肥料用のリンの輸入量の14%に相当するそうで、それを廃棄するのはもったいないと言えるのでしょう。
下水中のリンを除去する方法としては、三価の金属イオンによる不溶態沈殿を作るもの、石灰を加えてヒドロキシアパタイトリン酸カルシウムとして沈殿させるもの、そしてそれをさらに発展させた晶析脱リン酸法というもの、そして生物学的リン酸除去法としてリンの含有率が非常に高い微生物に取り込ませて沈殿させる方法ということです。
このような原理を用いる実際的な技術として様々な方法が開発されています。
ただし、どうしてもコストがかかるために現状ではいかにリン鉱石の価格が上がったとしてもまだそれには勝てない程度のものです。
それを社会の負担として受け入れさせることができるかどうかということです。
他の解説を見てもこのような下水処理過程からのリンの回収とその肥料使用にあたっては、そこに含まれる重金属などの有害物質の危険性があること、さらに最近では有機フッ素化合物の混入が問題視されていることから、それを除去できるかどうかも重要と指摘されていました。
最近でも周辺の有明海、八代海などでは赤潮の発生で養殖魚に大きな被害ということが報じられています。
こういったプランクトン異常発生にはリンなどの栄養成分の過剰な海域流入が関わってきているはずですが、その元になる食料などの輸入は大変な量です。
しかしいずれはその食料を作り出した農産物の生産へのリン肥料投入が難しくなるとしたら、なんとか下水からの回収を本格化し農産物生産へ還元すべきでしょう。
なお、本当はそういった農産物の原産国に回収したリンを送り返すのが真の循環なのですが、さすがにそれは輸送エネルギーの浪費になるのでしょう。
それを考えればやはり自国での農業振興は不可欠となります。