「帝国の崩壊」というテーマで朝日カルチャーセンターで開かれた連続講座で各時代の専門の歴史学者が講演した内容の書籍化、その下巻です。
ここでは、ビザンツ帝国、モンゴル帝国、神聖ローマ帝国、ロシア帝国、オスマン帝国、大清帝国、そしてイギリス帝国を扱います。
このテーマで話をするとなるとどうしても「帝国とはなにか」を最初に話しておきたくなるもののようで、この下巻でも何人かの講演者がそれを冒頭に説明しています。
中でもロシア帝国を担当した東大の池田喜郎さんのものが分かりやすいようです。
それは、1広大な空間を統合、2多元性、3,住民の合意を得ない統治
ということです。
まあだいたいそれに合致しているようです。
この下巻では中世から近世そしてイギリス帝国の近代までを扱っていますので、古代の話よりははるかに史料も多く、様々な話題も豊富なようです。
しかし崩壊ということになるとその解釈は広く定説がないという場合もあるようです。
最後に編者の鈴木さんがまとめていることが簡潔なようです。
帝国の崩壊には3つのパターンがあります。
1崩壊 コア地域を残してバラバラになる オスマン帝国、ハプスブルグ帝国、イギリス帝国、ソ連
2分裂 バラバラになり消滅 ローマ帝国、アレクサンドロス帝国
3版図維持 政体は崩壊しても版図を維持 清朝(中華人民共和国)、ロシア帝国(ソ連)
この本で扱った範囲はイギリス帝国までですが、現在の帝国というべきアメリカと中国も崩壊が来るかもしれません。
さすがにそれを今述べることはできませんが、どの崩壊パターンを取るのでしょうか。
なお、大清帝国を解説した東京大学の平野聡さんの文章の中で、清朝は壊れてもそのほぼ同じ版図が中華民国から中華人民共和国へと維持されたのですが、それが清朝と中共とでは大きく異なるところがあり、大きな問題となっているということです。
清朝の乾隆帝はチベットからウイグルまでを攻め取り中国の歴史上最大の領土としましたが、清朝は漢人ではなく満州人であり、乾隆帝もそれを強く意識していて、清朝領土としても漢人独裁などと言うことを考えるはずもなく、各地の住民の自治を尊重しました。
しかし版図だけは同様の中共ではそこを間違えており、漢人優先の概念で辺境地域の統治も行っているために少数民族問題が悪化しているのだそうです。
皇帝制の清朝から政体が変わったとしても現在の中国も一つの帝国と見て考えていけばその問題点も分かりやすいようです。
多くの帝国が崩壊していったのですが、その理由はどうやら歴然としていたようです。
だとしてもその崩壊は止めようもなかったのでしょう。