現代の世界はこれまでの超大国と言われている国々が明らかに力を失いつつあるようです。
そんな世相であるためか、これまでの「帝国」と呼ばれた国々がなぜ崩壊してしまったかということに興味が集まるのでしょう。
この本は歴史上の帝国がなぜ没落していったのかをその専門家が解き明かした内容をまとめたものです。
最初は2020年から2021年にかけて朝日カルチャーセンターで開催された「帝国はなぜ崩壊したのか」という連続講座で講演されたのですが、その内容を各講演者が文章にまとめたということです。
なお、「帝国」というものを皇帝が支配した国とのみ捉えるとその対象は少なくなりますが、その解釈に止まることなく、当時の世界で大きな領域を支配した国という意味で定義していますので、扱われている国も、この上巻では古代エジプト新王国、ミケーネ帝国(エーゲ文明)、ヒッタイト、アッシリア、アカイメネス朝ペルシア、アレクサンドロス帝国、そして古代ローマ帝国、下巻ではビザンツ帝国、モンゴル帝国、神聖ローマ帝国、ロシア帝国、オスマン帝国、大清帝国、イギリス帝国となっています。
趣旨としては「帝国の崩壊」を解説ということですが、多くの場合には聴衆がその帝国の概要も掴んでいないことが多かったようで、その国がどのように繁栄を迎えたかというところから話を始めその後ようやく「崩壊した」ところに話が進むということになるため、「帝国の崩壊」だけでなく「帝国の興亡」の全体に話が及んでいるのはやむを得ないことでしょう。
結局はある帝国の歴史のすべてを語るというものになったようです。
古代ギリシアのミケーネは通常は帝国として扱われることはほとんどないのですが、ミケーネ諸王国と言われる国の集合体があったという説もあります。
だからというわけではないのでしょうが、この本の中でもエーゲ文明の中でミケーネ帝国として説明されています。
メソポタミアの最古の帝国、アッシリアは世界でも最古と言える帝国であったのでしょう。
最古の都市文明と言えるメソポタミアで、都市国家が興り徐々に支配地域を増やしていったのですが、紀元前2000年頃にアッシュルという都市国家となったものが、それから600年ほどかけて周囲の領土を併せて領域国家となりました。
その領域国家の名称が「マート・アッシュル」すなわち「アッシュルの地」ということで、そのギリシア語訳がアッシリアでした。
その後さらに盛衰を繰り返しながら最大領域となったのが紀元前8世紀から7世紀にかけてのことで、この時期がアッシリア帝国期と言えます。
その領域はバビロニア、ザグロスから西ではシリア、パレスチナ、トルコ、エジプトまで含むものでした。
しかし占領した地域の住民を強制的に他の地域に移住させる捕囚政策を取ったため住民たちの反発も強かったようです。
反乱も多発したため、皇帝の警戒感も強く、一族の中での皇位継承をめぐる争いも激しく、また有力者の処刑ということも行われました。
そのために反乱が強まるとそれを抑えることもできず、あっさりと帝国崩壊となったとも言えます。
なお、気候変動で食糧不足となったという説もあり、その可能性の検討も必要でしょう。
やはり大きくなりすぎると崩壊も起きるということが常のようです。
何々ファーストなどと言っていると墓穴を掘るということでしょうか。