初版は1990年に出版されていますが、2019年に増補版として終わりの2章を追加して出版されました。
筒井さんは長編小説も書きますが、短編小説も数多く著しています。
しかし執筆当時、徐々に短編小説を書く人が減っているように感じていたそうです。
まさか執筆料が稼げないからということはないのでしょうが、短編独特の手法が行き詰ってしまったとも見えたのかもしれません。
それは「短編小説の芸道化」という言葉で表されています。
そこで、まあそんなことはないよと短編小説作家志望者に向けて書いたということではなく、自分自身の短編に対する姿勢を整理するためという意味だとあとがきには書かれています。
本編には古典的な作家たちの短編小説の解説が収められています。
ディケンズ、ホフマン、アンブロウズ・ビアス、マーク・トウェイン、ゴーリキー、トオマス・マン、サマセット・モームのものです。
いずれも他の小説は有名な作家たちですが、この短編小説は知りませんでした。
これら8人の短編に対して解説をした後、「新たな短編小説に向けて」という筒井さんの文章が収まり、元の版は終わっていたのですが、増補版出版の際にそこまででは少し足らないという話が出て、ローソンというオーストラリアの作家の「爆弾犬」というスラプスティック作品の解説を加え、そして筒井さんの「繁栄の昭和」という文章を最後に据えて終わりとしました。
小説を書きたいという人は、それまでに書かれた小説や同時代の小説を飽き飽きするほど読み込む必要があり、飽き飽きした以上はその人が新たに小説を書こうとした場合に同じようなものを書く筈はない、という文は重いものを投げかけます。
やはり自分でも書こうというからには、他の人の小説を嫌と言うほど読んでからでなければならないということでしょうか。