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「棋士とAI」王銘琬著

2016年3月、「アルファ碁」は韓国の囲碁トッププレーヤーのイ・セドルを5番勝負で4勝1敗で破りました。

著者の王さんはプロ棋士ですが囲碁対局ソフト開発にも関係していたため、すでにAIの能力がかなり高まっていたことを知っていたものの、それは衝撃でした。

しかし、2017年5月にアルファ碁の新バージョンは世界ランキング1位の中国の柯潔に三勝無敗で勝ったのですが、その時にはもはや世間もさほど驚かなくなっていました。

 

この本ではそのアルファ碁について、そしてその内容について詳しく示されています。

さらに最終章ではAIというものと人間との関り方について、囲碁の範囲にとどまらず広く社会や人間についても考察していきます。

 

囲碁というものを良く知らない人でも分かるように、囲碁の性質や特徴なども解説されています。

囲碁のプロ制度があるのは、日本、中国、韓国、台湾の四か国ですが、それぞれの国での囲碁文化というものには少しずつ違いがあるようです。

 

日本の囲碁は文化事業として特に新聞社がプロ制度を応援するなど、社会的には茶道や華道などの習い事と同じような場所に位置付けられています。

しかし中国では「体育」の一項目として扱われ、囲碁ニュースはスポーツコーナーで流され、スポーツ選手の年収ランキングの中に囲碁棋士も含まれます。

韓国は日本と中国の間のようで、プロ制度は日本をモデルとしているものの、扱いはスポーツ的、収入源も企業から。

台湾では完全に教育産業の様相を呈し、囲碁は習い事、「囲碁教室」があちこちにあります。

 

2016年のアルファ碁とイ・セドルとの五番勝負で、一番だけイ・セドルが勝った対局がありました。

その負け方というものも注目を集めたようで、「だからAIは怖い」などと言われることもありました。

しかしイ・セドルが予想外の手を打ったことでAIが急に乱れたように見えたのも一応説明のつくことだったようです。

それが「水平線効果」というもので、AIといえどやはりすべてを読むことはできず、ある程度のところで打ち切っているためにそれを越えた手が来た場合は対応できなかったということです。

したがって、さらに能力が上がった新バージョンではそれも起きなくなりました。

 

囲碁には「定石」というものがあります。

将棋の場合は「定跡」と言いますが、これはゲームが違うから別の表記となっていると思われています。

しかしその間には大きな差があり、将棋の場合は全局を対象とするものであるのに対し、囲碁では部分的なものだということです。

将棋では定跡を外すと一気に負けてしまうこともありますが、囲碁の場合は少しくらい外してもその後に取り戻せるのだとか。

そしてAIは「定石」というものを取り入れていません。

もともと「部分」というものを持っていないので、それに止まる定石というものは必要ないということです。

人間の定石とは違う手をAIが打つということが多いようです。

 

王さんの記述はその後囲碁だけにとどまらず人間の思考や社会の在り方といったものまで広がっていきます。

 

 




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