現代ではかつてのようにすぐに国家間の戦争を始めることは少なくなりましたが、その代わりのように「制裁」というものが頻繁に行われています。
しかしどうも見ているとずっと制裁を続けているにも関わらず何の効果も無いように見えることがほとんどのようです。
そういった制裁というものについて、政治学者で特にこの研究を続けているジェントルスン教授が細かく実例を挙げて論じています。
本書の第Ⅰ部は学術的な議論と課題として、制裁の種類、主要アクターは誰か、制裁は実際に効果があるのか、制裁の成否の判断はといったことを取り上げます。
第Ⅱ部では様々な実例を取り上げます。
そこでは歴史的にアテネのメガラ布令、ナポレオンの大陸支配、スエズ危機のアメリカのイギリス制裁、OPECによる石油禁輸、南アフリカの反アパルトヘイト制裁と論じていきます。
また特に制裁を乱発するアメリカについては詳しく論じられています。
それに対し数では少ないようですが中国の制裁はかなり効果があるようです。
またロシアはほとんど制裁も行うことができない事情があるようです
制裁の種類というのは知っているようで知らなかったことでした。
貿易、金融、対外支援、渡航、スポーツ、文化といった各場面で制裁されることがあります。
歴史上最初?の経済制裁が、前432年にアテネの指導者ペリクレスがスパルタと同盟を結んだ小さな都市国家メガラに対して科した経済制裁でした。
メガラはアテネとデリアン同盟の全帝国との交易を禁止されました。
しかしそれに対し翌年スパルタがペロポネソス戦争を起こし結局はスパルタが勝利しました。
結局この制裁がスパルタの支配の引金となったということです。
1973年、エジプトとシリアがイスラエルと戦争を起こした際に、石油輸出国機構(OPEC)が石油供給を制限したことで世界中に石油ショックが広がりましたが、これも経済制裁の一つに数えられます。
イスラエルが占領地からの撤退を行うまでには至りませんでしたが、アメリカなどがイスラエルに対する圧力を強めたという点ではこの制裁は成功したと言えるかもしれません。
なお、1970年代には他の商品カルテルを使った経済制裁も行われましたが、この石油制裁のような効果を上げるものはありませんでした。
2025年現在でもロシアのウクライナ侵攻に対するアメリカなどからの制裁は厳しく施行されていますが、制裁が効果を発揮しているという状況ではないようです。
この制裁は前例のないほどの規模と広がりだったのですが、それでも制裁の効果は表れないということでしょう。