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「玉人」宮城谷昌光著

宮城谷さんは古代中国を舞台とした小説を多数発表していますが、この短編集は他の物とは少し趣が違います。

他の小説では歴史資料を十分に参考とし、史実と異なる設定はせず、史料が無いところのみを想像で補うことで登場人物に肉付けをしていき、魅力的な像を描いていきます。

 

しかしこの本に収められた短編はあまり史実を描くといった雰囲気はありません。

 

そこは本書の解説で宮部みゆきさんが解き明かしていました。

この短編たちは「ミステリー」風味が強くなっているそうです。

そこに男女の恋愛を深く絡めている。

それが宮部さんの好みにも合ったとか。

 

「雨」の主人公は魯の国の叔孫豹、一応歴史的人物でこのエピソードも春秋左氏伝にはあります。しかしそこに一夜の女性との交わりとそれでできた子供の悪意が描かれます。

 

「指」の主人公は衛の国の大叔疾。これも一篇の挿話が史書に残されていますが、大活躍した人物ではありません。

しかし彼の死後残された妻妾たちからは「先主は聖人でした」と慕われた人と描いています。

政治的に活躍はできずとも、家族にとっては最高だったという人は多いのでは。

 

「風と白猿」は舞台は戦国時代の斉の国、墨子の孫という原々斎が主人公で、貴族の妻の失踪事件をさぐるという、ホームズのような雰囲気の物語です。

 

他にも「桃中図」「歳月」「玉人」の三篇、どれも雰囲気の在る小説となっています。

 

 

 




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