人間の寿命は延び続け、各国で平均が80歳を越えるまでになっています。
それはここ数十年で極めて顕著な延びを見せていたのですが、このところ延びは止まり始めているようで、中には反転して低下している国もあるようです。
そういった、「健康」について、これまでの歴史と現状、そして未来についてフランスの医師であり医療全般についても詳しいゼトゥン博士が解説しています。
工業化以前の世界では人間の平均余命は30歳ほどでした。
とはいえ、その実情は多くの乳幼児が生まれてすぐに死んでしまうためというもので、生き延びた人々が高齢まで生きるということは珍しくなく、「ほとんどが30歳ほどで死んでしまう」というイメージとは異なるものです。
その原因は主に、微生物、栄養不足、暴力でした。
感染症は多くの人々の生命を奪いました。それは栄養不足とも関連し、飢え死にするとまでは行かなくとも栄養状態不良は感染にも弱くなるという影響を及ぼしました。
さらにそれらから運よく生き残った人々も戦争や強奪などの暴力が襲いました。
それらの状況が徐々に改善され出したのは18世紀からです。
特に劣悪であった都市の衛生環境も徐々に改善に向かい、感染症発生も減少します。
さらに経済発展に伴い食料供給も増加し栄養状態が良くなると身体の免疫力増しました。
そして20世紀も後半になり医学と薬学の大きな進展でそれまでの乳幼児の死亡率減少から大人の死亡率減少へとモデル転換が起き、平均寿命の増加が世界的な進歩を遂げました。
しかしその進展が思うように行かなくなったのが現状です。
医学にはこれまでよりさらに多くの資金が投入されるようになりましたが、その割に寿命の延長にはつながらなくなりました。
もはや世界の多くの国でGDPの10%以上が健康のために使われるような状況です。
健康と所得とに大きな関連があることも現代の特色です。
かつては感染症で王族や貴族でもあっという間に死んでしまうということがよくありましたが、現在では金持ちはあらゆる医療・健康への出費ができるため病気になりにくく寿命も延びるということになっています。
このような健康格差が経済力と深く関係するということになってしまいました。
以前の人類の死亡理由の大きな要因であった感染症は、パンデミックで時折上昇することはあっても昔と比べればはるかに抑えられるようにはなっています。
しかしそれに代わって大きな問題となったのが慢性疾患です。
ガンや循環器疾患等の慢性疾患がどの国でも死亡率の第一位となっています。
これらは生活習慣を原因とすることも多いのですが、それを変えることは困難であり豊かな食生活が作用することもあって発症率は上がり続けます。
それを医薬で改善しようとする努力は続けられていますが、莫大な治療費をかけてもさほど効果は上がっていません。
環境リスクも健康を損なう大きな要因となってきており、大気や水質汚染、温暖化などでも悪影響を受けています。
すでにアメリカでは平均寿命が低下し始めています。
イギリスでも健康悪化が顕著となりました。
どうやらこの先は世界的に平均寿命が低下することになるのかもしれません。
慢性疾患の大きな要因となる、不健康な食生活をもたらす「健康に良くない食品」への有効な対応策はそれらに多額の税金を付加することです。
しかしこの有効策を取ることができた国はまだありません。
肥満というものが諸国の大問題となっている中で、それを助長する食品を増税するということは利益がありそうですが。