来年開催となる大阪万博は大方の国民の冷ややかな視線をものともせず準備が進められていますが、その何が問題なのか、この「万博の歴史」を読むと見えてきます。
著者の平野さんは小学生の時に1970年の大阪万博を見て感動し、博覧会というものと関わる仕事を目指し、ここ30年に開かれた14の万博をすべて見て、さらにそのうち5回では日本政府館の製作にも関わってきた方で、博覧会実務に関する著作・論文も多数書いているということです。
その平野さんが2016年に出版したのがこの本で、今度の大阪万博については何も触れられていません。
しかし本書の最後にまとめているのが、「万博は終焉するのか」という言葉で、そのためにはこれまでの万博の価値とは違う価値を見つけていかなければ人々から見放されるということです。
来年の万博に対しそのような「新たな価値」が主張されているという話は全く聞きませんので、やはり失敗確定ということなのでしょう。
万博は1851年のロンドンで第1回が開かれました。
それから165年の歴史があるのですが、それを通観すると二つの時代に区切られます。
だいたい80年ずつに分けられるのですが、最初の「万博1.0」というものが第1回ロンドン万博を始まりとして1900年のパリ万博が最高潮と見なせます。
この時代は世界中から集められた最新のモノ、珍しいモノを眺めることのできる「モノで語る博覧会」でした。
それが1933年シカゴ、1939年ニューヨークのあたりから新しい動きを見せます。
これが「万博2.0」であるとしています。
そこでは「思いを伝える博覧会」が姿を現しました。
様々な空間体験を通して理念やビジョンを表現するものでした。
そしてその頂点が1970年の大阪万博だったのです。
その万博では「すぐそこにある未来」を疑似体験させることで「まもなく訪れるより良き世界」を大衆に見せようとしていました。
それが政権を取る権力者の思惑と大衆の欲望とにぴたりとフィットしていたために万博の大成功につながりました。
しかしその前提条件が崩れた今、「万博がどんどんつまらなくなっている」と感じる人が増えています。
日本では前回の大阪万博の大成功を受けて、その後も沖縄、つくば、大阪花博、愛知と夢よもう一度の博覧会が開かれましたがどれも失敗しました。
世界的にもヨーロッパで久しぶりの開催となった2000年のハノーバー万博は入場者は目標の半分以下の1810万人、しかもほとんどが北部ドイツからだけ、そして1200億円の赤字を出すというものでした。
そもそも「万博2.0」のほとんどを開催していたアメリカが万博に対する熱意を失ったことがヨーロッパ開催となって理由でもあり、世界的に万博熱は冷めきっていたところでした。
ハノーバー万博ではテーマの一つとして環境が取り上げられました。
しかし環境問題の多くは人類皆に責任のあることで、わざわざ金を払ってお説教を聞く気にもなれないというところでしょう。
万博にアップルなど巨大IT企業はほとんど参加しません。
万博に参加するためにはかなり早い時期に計画を決めなければならず、IT企業のように数か月単位で計画を決め、変更していくような体制からするともうはるか昔の「明日の姿」を見せるような万博の展示などは必要ないということでしょう。
ネット社会自体から見ても万博というものの時代遅れ感は激しいものが在りそうです。
来年の大阪万博というものに対する期待感など最初からないのですが、それが完全に粉々に砕かれてしまうような本です。万博を見に行こうと思っている方は読まない方が良いかも。