副題は「児童精神科医からみた子どもたちの居場所」というもので、「居場所」というものがキーワードのようです。
居場所というものが人には一つではなくいくつか必要です。
それが無くなっていくと追い詰められてしまいます。
それが「インターネットやゲーム」である子どもも多くなっています。
なお、あとがきにあるように「本書をインターネットやゲームの世界から救うための書籍だと思って読んでくださった方には期待外れの内容かもしれません」とあるように、実際にはもはやインターネットやゲームだけが唯一の居場所という子どもも数多くみられるようで、もしもその子どもからそれを取り上げるともうどこにも居られなくなるという場合もあるようです。
著者の関さんは児童精神科医で臨床で多くの子どもさんの診察を行い、さらに発達障害の啓発活動を行って家族支援をしています。
その診察の実例も患者さんの了承を取った上で細部は少し変えて掲載しており、その実態には驚かされるほどです。
また追い詰められて診察を受け何とかぎりぎりのところで回復するといったこともあり、それにはほっとさせられます。
関さんはゲームやアニメなども趣味としており広く楽しんでいると書いていますが、どうもそれは患者の子どもたちとの会話の糸口のために情報収集しているようにも見えます。
診察の当初はほとんど口を開くこともない子どもが、ゲームの話題などをしていくと徐々に会話をし始めます。
そういったところでも、もしも生半可な知識であれば子どもは警戒するばかりでしょうが、本当にゲームを楽しんでいるということを見せれば引き込まれます。
そこまで考えてのことでしょうか。
子どもの世界というものがうまく定義されているそうです。
ギャンググループというのは一般的に小学生(児童期後半)に現れる仲間関係であり、そこでは同じ行動をすることで一体感が重要視されます。
同じ遊びができない子どもは自分たちの仲間ではないと考えます。
チャムグループというのは、その後の時期、中学生くらいに現れる仲間関係です。
そこでは互いの共通点や類似性が重視されます。
同じクラブ活動であったり、共通の趣味を持つということが重要視されます。
そこではギャンググループでは同じ行動が重要視されていたのに対し、「共通言語」が重要視されます。
それから生まれた一体感から仲間関係に対する絶対的な忠誠心や同調圧力も生まれ、それらを背景としたいじめも起こることがあります。
ギャングやチャムを経て生まれるのがピアグループです。
そこでは趣味や考えが違っていても互いに語り合い認め合う関係です。仲間関係が最も発達した段階がピアグループと言えます。
ただし、近年ではこういった友達関係に変化が生じ、ギャンググループが消失し、チャムグループが肥大化。そしてピアグループ化することが遅れる又は到達しないというように変わっています。
小学生でも同じ遊びをするということが減っており、チャムグループ化が著しくその中で同調圧力の強化、いじめの頻発となっているようです。
オンラインゲームにおける課金というものの経緯もまとめられていました。
定額課金制の始まりは1997年発売の「Ultima Online」であったそうです。
ただし定額課金は遊ぶために最初からかなりの金額の負担が必要です。
そういったオンラインゲームが多数登場してくると、有名なゲームだけにプレイヤーが集まり、新規のゲームはなかなか収益が上がらないということになりました。
実はそういったゲームにお金を使うユーザーというのは一握りで、彼らを奪い合う状況となりました。
そこで基本プレイは無料で、その後任意でアイテムを購入させるアイテム課金制というシステムが取り入れられました。
それの最初が2003年の「メイプルストーリー」だそうです。
発達障害・不登校の子どもたちとネット・ゲームの関わりという例は考えさせられるものでした。
不登校になっていく子どもたちはすでに学校という居場所を失っています。
辛うじて家庭という居場所があるのですが、そこでも親の理解がなく怒られるばかりだとそれも失われます。
そこで入っていくのがネットやゲームだけとなります。
それすら「ゲームばかりして」と怒られるともう何も残らなくなります。
そういった子どもは徐々にゲームから認めていき会話を成立させていく必要があります。
親にも同じゲームをやってみるよう勧めたこともあるそうです。
不登校児童が何十万人などと言われますが、それを数だけ見ていては分からないこともあるのでしょう。
一人一人が様々な問題を抱え、苦闘し、さらに家族も苦しんでいるのでしょう。