元村さんは毎日新聞の科学記者として有名な方です。
けっこう長い間毎日新聞を購読していたので、その署名記事も読んだ覚えがありました。
その元村さんが2019年から2023年まで、いろいろなところに書いた文章をまとめたものです。
それほど長い文章はなく、せいぜい2ページほどのものばかりでしょうか。
科学に関するものが多いのですが、時事関係も結構多く、この時期ですからコロナ、東京オリンピック、ウクライナ戦争といった話題に関する記事も目につきました。
大学では教育学部を卒業され、取得した免許は「国語」ということですからもともとは自然科学専門ではなかったようですが、毎日新聞に入社して配属されたのが科学環境部、それ以来そこ一筋ということです。
ノーベル賞の授賞者発表というのは、科学記者にとっては年に一度のお祭りのようなものだそうです。
ただし、「問題は時差の関係で発表が日本時間の夕方となる」ことだそうで、翌日の朝刊に受賞者の業績などを分かりやすく解説する記事を書くというのは大変なことのようです。
特に、直木賞やアカデミー賞と違って誰が最終選考に残っているかも分からず、一応評判の高い人たち数十人分の予定稿を作って待ち構えるのですが、時にはノーマークの人が受賞するということが起きます。
特に2002年の化学賞受賞の田中耕一さんがそれでした。
「Koichi Tanaka」という名前がノーベル賞のウェブサイトに出てもそれが誰かも皆知りません。
そのうちにタナカ氏の所属が島津製作所であるという情報が入り、とりあえず会社に電話を入れたそうです。
島津製作所の方でも田中がノーベル賞などと言うことは予測もしておらず、広報課も頓珍漢な答えをしていたそうです。
その日は特にその会社の「ノー残業デー」、もう皆帰ってしまいその職場に居たのが部長ただ一人で、それも帰る間際だったとか。
「家事ロボットは可能か」という文章も面白いものでした。
家事労働を減らすために家電が発達してきましたが、まだまだ多くの家事をしなければなりません。
ロボットが洗濯物を畳めるかというと、これが相当難しいことのようです。
シャツとパンツを見分けることも難しく、さらにそれを畳むなどと言うことはほとんど無理。
これに挑んだベンチャー企業があったそうですが、まったく不可能で経営破綻したそうです。
”名もなき家事”というのが多すぎ、家事労働は複雑なわりに安く見積もられるため、家事ロボットの開発はまだ当分先のようです。
コロナ・ウクライナ・原発といった話題は、やはり簡単に書くわけにもいかないことのようで、ちょっと空振り気味に見えました。