鬼平犯科帳の小説はすべて読みましたが、この本は著者の池波正太郎自らが編集したその小説についてのまとめのようなものになっています。
ただし、発表されたのが平成元年7月の発行の「オール讀物」7月臨時増刊号ということで、鬼平犯科帳最後の「誘拐」後半部はまだ未発表のため内容に含まれていないようです。
そして池波氏はその後病に倒れ翌年亡くなりますので鬼平犯科帳も打ち切りとなり、最後の「誘拐」は未完のままとなってしまいます。
この本では冒頭に文芸春秋社の編集委員金子勝昭氏による著者インタビューが掲載され、その後に小説の主要登場人物の紹介、さらにほぼすべての登場人物についての数行の解説文が続きます。
そして後半部は18世紀の江戸の市井事情ということで様々な江戸の町についての解説がされています。
「買物独案内」というその頃に出版された江戸町内の案内本が紹介されており、そこには各種店舗の案内もされていますが、どうやら鬼平犯科帳執筆時に池波氏がそれを参考にしていたようで、盗賊に襲われた商店というのもモデルとなったところがあるようです。
小説の中で一番襲われた業種というのが薬種問屋で、被害・未遂あわせて15店舗、この独案内という本に掲載されている薬種問屋は60店ということですので、かなり高い確率で襲われていることになります。
まあかなり利益の高い業種のようですので、それでそこを被害者のモデルにしたのかもしれません。
一方、まったく被害にあっていない業種というのが、塗り物(漆器)問屋や雛人形等の問屋だそうで、池波氏がそこを描かなかった理由は分からないそうです。