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「人種とスポーツ」川島浩平著

日本の冬の風物詩ともいえる駅伝競技では外国人選手が出てくると桁違いのスピードで日本人を圧倒します。

陸上競技の短距離では世界クラスの大会の決勝はほぼ黒人だけです。

そのような光景を見続けているような人たちは、この本の副題「黒人は本当に速く強いのか」にうなづいてしまいます。

 

しかし「黒人は速く強い」と言うこと自体も人種差別にあたると言われると困惑することもあるかもしれません。

また少し時代をさかのぼるとそのようなイメージは全くなく、黒人はスポーツにも向かない劣等人種だと言われたのもさほど古いことではありません・

そのような「人種とスポーツ」について、アメリカ社会の研究者でスポーツに関する著書も多い著者がいろいろな方向から解説しています。

 

スポーツというものがヨーロッパの白人社会で生まれたものであり、多くの有色人種社会とは全く無縁であった時代には黒人のスポーツ特性などというものは人々の視野にも入りませんでした。

黒人を奴隷として多く使っていたアメリカでその後のスポーツ史を見ていけばこの問題の多くは明らかになるでしょう。

 

奴隷制度は無くなり奴隷は解放されて自由となりましたが、多くの黒人はほとんど肉体労働に従事し余暇などは無く、学校にも行けない状況ではスポーツとの接点もありませんでした。

その当時は現代のような「黒人のスポーツ天性」などという考えも無く、黒人は知能も肉体も劣等であると考えられてきました。

 

しかしスポーツ先進国のイギリスなどではスポーツは貴族や富裕階層の楽しみであるという概念だったのが、アメリカでは一般庶民も楽しむものとなっていきます。

そしてプロスポーツというものが盛んになり特に優れた選手のプレーをみたいという欲求が高まり。彼らが高収入を上げるという風潮ができてきます。

 

1930年代はまだ白人至上主義が全盛と言える時代でした。

白人の中でも北欧などの北方人が最も優れているという主張もされていました。

ヒトラー率いるナチスドイツがそれを主張したことに、欧米各国も反発することになります。

そういった風潮の中開かれたベルリンオリンピックでは、ヒトラーに抵抗するかのようにジェシー・オーエンスが大活躍をします。

さらにボクシング世界ヘビー級王者としてジョー・ルイスも現れます。

しかし、黒人の優越性を主張するのはまだまだ先の話になります。

 

アメリカのスポーツとして、ベースボール、バスケットボール、フットボールが人気を集め、プロも出現するのはその頃からのことでした。

それらも初めは白人だけのものでしたが、それにも変化が現れます。

そこには第二次世界大戦で黒人も白人と同様に戦地で大きな働きをしたという認識が広まったことも関係してきます。

 

終戦直後の大リーグの野球でジャッキー・ロビンソンが現れ圧倒的な力を見せつけることがその他のスポーツ界にも黒人の活躍を促す契機となったと言えます。

アメリカでも南部では黒人の進出に対する抵抗が強かったのですが、実際に黒人を入れたチームの力を見せつけられることでどんどんと変化していくことになります。

 

黒人の進出が進めばその実力は誰が見ても明らかであり、何よりも成績次第のスポーツ界では人種差別よりもそれが優先してくることとなります。

 

ただし、どんなスポーツでも黒人の力が圧倒的ということはありません。

陸上競技ではそれが文句なしのように見えますが、水泳ではほとんど黒人の活躍は見えません。

それが本当に、「黒人は水泳が苦手なのか」どうかはまだ分かりません。

これには色々な要因がからんでいる可能性があり、まだ結論づけることはできません。

 

ただし、大きな問題は「黒人」と一言で片づけられるほど黒人という人々が一様ではないということです。

アフリカに住む人々は非常に多様性に富み、その中には大きな相違があります。

陸上競技を取って見ても、短距離に強い人々と長距離に強い人々とははっきりと分かれています。

長距離走に強いのはほとんどがエチオピアケニア出身の人々だということは明らかだと思いますが、実はケニアの中でも長距離走に強いのはごく限られた地域の出身者だということが分かっています。

リフトバレーという地域の中でもカレンジンという部族の中のナンディという集団の出身者に限定されるそうです。

ケニア人でもその他の地域の出身者は長距離走にはほとんど適性を持たないそうです。

短距離走は西アフリカ出身者に特に優れた人々が多いようですが、こちらは奴隷としてアメリカに多数連れてこられたために故郷の国よりはアメリカやジャマイカといったところで力を発揮しているようです。

しかし、やはりごく限られた出身地に由来する人々に特徴的に見られる特性のようです。

 

他のスポーツの適性でも同じような例が見られ、「黒人は何でもスポーツに優れている」ということはなく、ある地域の出身者があるスポーツの適性を持っているということはあるようですが、黒人ならどのスポーツでも優れているなどと言うことは全く間違いのようです。

黒人であってもスポーツにはほとんど能力を持たないという人たちも多数居るということも明らかです。(そういった人々が他の分野で非常に優れているということもあり得る話です)

 

なお、スポーツにおいての能力は遺伝的なものだけでなく、後天的な要素や社会的条件によっても大きく影響されます。

「スポーツしか金儲けの手段がなかった」というのも非常に大きな条件となり得ることであり、それが成功の要因となった可能性も大きいところです。

 

まあ、スポーツ界の現状をみて「黒人が何をやらせてもすごい」などと簡単に思い込むことはどうやら間違いのようです。

しかしわずかかもしれませんが、やはりそういった要素はありそうに見えますが。

 

 




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