永井孝志さんのリスク学に関するブログでは、リスク学というものについての基本的な概念についても繰り返し解説されています。
「リスク評価はファクトではない」その1については紹介しましたが、続いてその2が公開されました。
ここではリスク学を含むもう少し広い概念として「レギュラトリーサイエンス」という分野の名称が使われています。
日本薬学会の分科会としてもレギュラトリーサイエンス学会というものが構成されているようですが、「科学的知見と政策などの橋渡しをする」というのがその概念のようです。
永井さんの文章では、純粋科学とレギュラトリーサイエンスとの考え方の違いの例として、「日焼け止め成分をオオミジンコに作用させたら死滅した」という論文を取り上げています。
実はこういった「何々を作用させたら死滅した」という科学論文は非常に多いものです。
実験生物を扱う技術を持った研究者にとって、何らかの物質を対象とした研究と言えばこういったものはやりやすいという側面があるのでしょう。
これ自体は研究として何ら疑うべきものも無く、科学的知見を広めるという意味は間違いなく存在します。
しかし、こういった論文があるからと言って、「だからこの物質は禁止すべき」という方向にすぐに進むことはできません。
レギュラトリーサイエンス(リスク学)では、まず「その物質の無影響レベルの推定」と言うことを行います。
これはあくまでも「レベルの推定」であり、「量の決定」ではないことも注意すべきでしょう。
そのような科学的な厳密性よりもとにかく素早く推定量を算定するということが求められます。
そこから、そのレベル以下になるように制御するということを考えますので、単純な「この物質は禁止」ということにはなりません。
他にも科学論文によくあるのが「何々を分析したら何々が検出された」というものです。
これもその事実が科学的ファクトであるのは間違いありません。
そしてこれが上記の「何々に暴露したらこんな生物が死んだ」という科学的ファクトと結びついて「だからこの物質は禁止せよ」という論法に利用されることがよくあります。
これもレギュラトリーサイエンス(リスク学)では、無影響レベルを推定するということで現実的な政策に利用できるようにします。
純粋科学というのも非常に重要なものですが、そればかりだと現実の対策が進まないということも間違いのないことなのでしょう。