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「『食品の科学』が一冊でまるごとわかる」齋藤勝裕著

毎日食べる「食品」を見ると「科学的」なことが詰まっています。

それを一つ一つ考えていくと、かなり科学にも強くなれそうです。

 

著者の齋藤さんは、食品化学が専門というわけではなく有機化学の大学教授ですが、一般の人に科学を分かり易く説明したいという目的で書かれたのでしょう。

 

そういう意味で見ると、食品というのは多くの科学的要素が盛沢山とも言えます。

 

食品全般について、いろいろな科学的知識を説明されていますので、その全体を見るということもできませんが、中でも興味深いことだけ紹介します。

 

食品の成分のなかでも最も多いのは「水」なんですが、その説明から始められています。

ミネラル分の多寡により硬水、軟水の差があり、日本には軟水が多いのですが、日本酒の製造に適したと言われる「灘の宮水」はかなりの硬水だということです。

これは意外だったところで、だいたい酒を造る水としては軟水の方が良いと思っていたので驚きました。

どうも江戸時代の酒造技術との関係で硬水の方が良かったようです。

 

 

栄養成分として重要な「油脂」ですが、タンパク質と糖類は1gあたり約4㎉のエネルギーであるのに対し、油脂は約9㎉とエネルギーが高いため、ダイエットの敵と思われることが多いようです。

しかし、油脂は生命活動にとって重要なものであり、これ無しには生命体は存在できません。

その理由は、油脂は「細胞膜の原料」であるからなのです。

ヒトの身体の一つ一つの細胞を成り立たせるのは細胞膜です。

その細胞膜を作っているのが油脂から分解されてできる脂肪酸のナトリウム塩で、セッケンと同じ構造の分子です。

それは両側に親水性と疎水性の部分を持ち、それが並ぶことで膜を形成しています。

そこを通して色々な成分が行き来することで、生命活動が成り立っています。

 

農産物の増産には化学肥料が不可欠でしたが、それを支えたのがハーバーボッシュ法によるアンモニアの製造でした。

そのアンモニアから硝酸を作るのですが、その硝酸は一方ではダイナマイトはTNTの原料にもなりました。

それまでは爆薬原料には鉱石として硝石を掘り出すか、人間の尿から作るしかなかったのですが、ハーバーボッシュ法で無尽蔵とも言える爆薬原料を作り出すことができました。

二度の世界大戦もこれがなければできなかったかもしれません。

 

豆腐の作り方の中には重要な科学的現象が含まれています。

最初に豆乳というものを作るのですが、豆乳は「乳」と書くように牛乳と同じような状態の「コロイド溶液」です。

コロイド粒子は大豆のタンパク質で、分散媒は水です。

ここにニガリつまりMgSO4を加えると、コロイド状態を保っていた大豆タンパクの周囲を覆っていた水分子はニガリの方に行ってしまい、大豆タンパク分子は丸裸となってタンパク同士がくっついていきます。

そうして互いに接合しあって沈殿するのですが、この反応を「塩析」と呼びます。

科学実験のようなことを毎日豆腐製造では行っているわけです。

 

化学のことも、食品のこともよく知っているような気がしていても、並べると驚くようなことがあるものです。

 

 

 

 




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