『歴史のなかの奇妙な仕事』ニコラ・メラ/訳:寺井杏里
著者はフランスのサイエンスライター。
なので「歴史の中」の舞台はヨーロッパがメイン。
100近い職業をピックアップし、それぞれ数ページで紹介する構成です。
「死体泥棒」「抜歯屋」「道化師」などの有名なものから、「国王のトイレ係」「罪喰い」「パンカー係」などの「?」というものまで幅広い。
気になった項目をちょこちょこ拾い読みするのに良い一冊です。
私は「知らなかった〜」系の職業が楽しかったかな。
「罪喰い」はイギリスの風習。
弔問の際、遺体の上にケーキなどの食べ物を置いておく。と、「罪喰い」と呼ばれる人がやってきて食べるらしい。
それは死者の罪や穢れを引き受ける行為で、弔問客は「罪喰い」に対して冷ややかに接する。幾ばくかの支払いをして追い払うそうです。
職業というよりも民俗学の範囲な気がする。
『金枝篇』や他の本でも読んだことがなかったので興味深い。
「パンカー係」というのは、イギリス植民地時代のインドの職業。
植民地の暑さに慣れない支配者層の家で、天井から四角い布を吊るしたものが「パンカー」。その大きな布を「パンカー係」が外側から引っ張っては下げる。すると風が通って暑さがやわらぐ。
要するに人力の送風機である。
動かしている当人はもちろん暑い。賃金もお小遣い程度だったそうです。
帝国ムーブの産物ですね。
「サイコロ飲み」というのもおもしろかった。
サイコロ賭博が禁止されていた時代に、踏み込まれた際に文字通りサイコロを飲みこんでくれる仕事。飲めるか…?6面サイコロよりダイスの方が飲みやすいかな…。
これはイギリスにしかなかった職業で、その理由はフランスではダーツやルーレットが流行っていたから。それはさすがに飲めないな。
既知だった職業も、由来や歴史上のエピソードが盛り込まれているので読み応えがありました。
もっと古代の職業とか、アジアやメソポタミアの職業とかの本もあるといいなあ。