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『ヤギの睾丸を移植した男』 タイトル通り!怖いんですけど

『ヤギの睾丸を移植した男 アメリカで最も危険な詐欺師ブリンクリーの天才人生』
ポープ・ブロック/訳:杉田七重

1910年代アメリカで大活躍(?)した詐欺師の物語です。
ジョン・R・ブリンクリー(1885-1942)は、医者を詐称して、若返りの外科手術を行い、大儲けした人。
その手法は、ヤギの新鮮な睾丸(生殖腺)を人の睾丸に移植するというもの。タイトル通りやんけ。
この本を積読から手に取った際、なんとなく「ヤギになりたかった人」みたいなやつ?と思いながら読み始めたのですが、本当にタイトル通りだった…。怖いんですけど…。

この本は、ブリンクリーの一代記でもあるんですが、背景としてのアメリカ社会や、医学の流れも書かれていて、助かります。
前者は、1900年前後のアメリカの空気感ね。この頃って、ジャクソン民主主義(草の根民主主義。キーワードは開拓者精神、自立心)からの流れで「反知性主義」の頃。医師や、牧師、法律家などの権威が失墜。そして無資格医が容認される気風の時代なのだそうです。
3州を除いたアメリカ全土で医師の免許制度が廃止されたとか。極端じゃないか…?
ちなみにブリンクリーは無免許どころか大学も出ていないのですが、「ディプロマミル」というものがありまして。これは非正規の大学(自称!)が、お金を払うと「学位」を出してくれる、というやつです。スティーブン・キングの小説の主人公も先生の資格を通販で買ってましたね。
ディプロマミルは、バカダ大学の学位証が買えるってイメージ。実在大学の偽造学位が買えるのは「ディグリーミル」で、当然ですが、こちらのほうはゴリゴリの犯罪です。

話が逸れた。
後者の「医学の流れ」は、当時の医療技術の潮流みたいなもの。
瀉血じゃダメじゃん?と分かってきたものの(それでもやる医者はいる)、まだまだ人体の仕組み全てはわからない、みたいな。で、医学界のなかでも「若返り」「寿命延伸」を本気で主張する界隈と、その流行があったそうです。
その代表として登場する2人が、セルジュ・ヴォロノフとオイゲン・シュタイナッハ。
ヴォロノフはサルの生殖器を人に移植すれば150年生きられると主張した人。この施術の流行とともに毛皮需要もあり、チンパンジーが絶滅の危機に瀕したとか。怖いんですけど。
シュタイナッハは精管結紮や卵巣への放射線照射による若返りを提唱。怖いんですけど!

という、アメリカ社会背景と若返り医療ブームがあり、無免許医ブリンクリーの成功があったと。
もちろんそれだけでなく、詐欺師としてのマーケティング的な才能が凄かった、というのがこの本のおもしろいところ。

元祖選挙カーどころか、飛行機での遊説などを行ったり。
ラジオ黎明期に娯楽音楽とともに健康情報をお届けしたり。
特にMQB(メディカル・クエスチョン・ボックス)という仕組みは凄いなと思いました。ラジオで健康相談に答えるんですが、「お近くの薬局で処方薬7番を買うように」と診断するんですよ。地元の薬局には、すでに番号を記したブリングリー印の薬がずらっと並んでおり、同じ症状で悩む人も後追いで買いにくるという設計。薬の名前も間違えないようにシンプル数字にしているとか、細やかである。詐欺師だけど。

ラジオで好き勝手にやりすぎて怒られると、メキシコ(国外だが、電波は届く)にラジオ局設立。強い!
局アナならぬ局ミュージシャンも起用するので、「田舎のハリウッド」ができたとか。

とにかく精力的に働く詐欺師なのですよ。
ちゃんと働けよ…!!

いやあ、おもしろかった。
ひとつだけ言うと、誰が主語かわからないな…という文章や行ってこいの構成が散見されたのが残念。もうちょい読みやすい本になると思うんだけどな…。
いや、おもしろかったですよ!




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