『新宗教と巨大建築』読みました。新宗教の建築を分析した一冊。五十嵐太郎氏は建築史・建築評論家。
まずは神社建築と寺院建築の違いを覚えよう(知ってるよ!という人の方が多いかもしらん)。
神社は
・鳥居がある
・屋根は自然素材の茅、檜皮、柿(こけら)など
・屋根の装飾に千木(ちぎ)、堅魚木(かつおぎ)が用いられる
(ちぎはガンダムの角みたいなやつ。かつおぎは屋根のてっぺんに横向きに乗ってる俵みたいなやつ。という表現でわかるかあ!と思ったらウィキへ)
・直線的、非装飾的、素朴簡明のイメージ
・伊東忠太が晩年「神社木造論」をアツく支持。そういう雰囲気になる。
寺院は
・瓦屋根
・重厚感、曲線的、色彩豊か、華麗な装飾
・仏教が中国伝来という出自から、時代や社会と共に変化を厭わない
・なんとなく神社の「日本古来」の対極に寺院建築がいる二項対立的な位置付け
岸田日出刀のデザイン論で展開される。岸田は伊東忠太の弟子。
・近代寺院は1970年以降のポストモダンブームとも相性が良い。
(石田修武「観音寺」、谷口吉郎「乗泉院」、矢部又吉「梅窓院本堂」(現存せず))
そして言わずもがなですが神社は神道、寺院は仏教ね。
さて、幕末三代新宗教といえば、黒住(くろずみ)教、天理教、金光(こんこう)教です(知らなかった)。
黒住教と金光教は神道系と言われる。
天理教は神道とは別で、仏教の影響も指摘される。
ここらへんの教派(?)と、寺社建築の違いを、頭に叩き込んでおいてから読み進めるのが良い一冊です。
が、五十嵐氏はあまり気にしてない。なぜならこの本、五十嵐氏の博士論文がベースだから。建築界隈の人が読む前提だから。
建築知識弱者向きじゃないんだよ…!(本の中に書かれてはいるんだけど、優しく整理されてない)
でもくじけずに読む。
この本で最もページが割かれているのが天理教の建築です。
信仰の中心である「ぢば」という場所が設定されているのが特徴。これは動かせない。つまり建築も人の動きも、「ぢば」が中心となる。
ここに「神殿」ができ、「八町四方」を建築で囲むのが「おやさとやかた計画」。
一辺が八町(872m)の箱型建築が最終目標ということになる。壮大である。
このガワ建築は、切れ切れで半分くらいしか竣工していないのですが、天理教施設図を見ると、ちゃんと最終計画の箱型が見えてくる。すごい。
天理教建築の特徴のもうひとつは、変形の鬼瓦(屋根のはしっこにある瓦です。家紋とか屋号がついてるやつ)。千木と堅魚木が合体した鬼瓦なんです。ベースの建築は寺院風で、鬼瓦に神道モチーフが付いている。これは天理教だけの特徴だそうです。
一方、金光教は神道系なので神社っぽいのか?というとそうでもない。
むしろ戦前に地方協会の模範設計というものが「教規・教則」に示されていたのですが、それは入母屋+裳階、正面に唐破風の向拝。何言ってんだかわからん。
これ、長野の善光寺の特徴なんです。寺やんけ。
戦前の取り締まりが関係していたようで、今はもうない規則らしい。
ちなみに六角鬼丈のでっかいシャチハタみたいな福岡高宮教会(1980)が建築界隈では有名です。ザ・ポストモダン!
後半は海外の事例。
こちらもよくわかってなかったので勉強になる!(アメリカの小説に宗派の違いみたいな表現がよく出るけど、全然ピンと来ない)
有名どころだとアーミッシュ、シェーカー教、クエーカー教(もう混同しそう)、モルモン教ですね。
アーミッシュはプロテスタント系、スイスからアメリカへ。閉じた小規模コミュニティで教会を持たず、各家の持ち回りで礼拝。装飾を否定する。
建築的には「シンプル…」という感想になる。
シェーカー教もプロテスタント系、イギリスから。半都市的コミュニティ。なのでやはり建築はどシンプル。が、機能主義の家具デザインが評価されていたそうです。独身主義なので20世紀に消滅。
クエーカー教はペンシルバニアを建設。植民都市に典型的なグリッド状平面を持つ街並み。
モルモン教はアメリカ生まれの新宗教。天使モロナイと黄金の板と『モルモン書』とアメリカ起源神話とソルトレイクシティ建設。ソルトレイク神殿は尖塔が林立するゴシック風の外観。花崗岩。
さらに、ベトナムのカオダイ教(キッチュな大寺院が有名。行ってみたい)、インドのバハイ教(発祥はイラン。デリーのロータス寺院がとにかく凄い)などにも触れています。
海外にも色んな宗教建築があるんだなあ。ほんと勉強になる。
あと、五十嵐氏独自の言葉で「結婚式教会」というジャンルが日本独自様式として分類されています。
信者はおらず、祈りの場でもない、結婚式用の教会。言われてみれば不思議な存在だ…。
大開口の明るい空間(静謐さは必要ない)。奥行きは短め(信者いないし席数は必要ない)。そして外階段は大きくなりがち(写真映え!)。
海外の安藤忠雄ファンが「風の教会」「水の教会」(どちらも結婚式教会)を見るとびっくりするそうです。言われてみれば安藤建築らしからぬパカーっと明るい感じだ。全然気づかなかった!
いやあ、ほんと、勉強になる一冊でした。
怒涛のように読んでしまい、書いてしまった。