『怖い絵 死と乙女篇』中野京子
1作目はこちら。2作目「泣く女篇」はこちら。
今作の収録作は以下22作。
レーピン『皇女ソフィア』
ボッティチェリ『ヴィーナスの誕生』
カバネル『ヴィーナスの誕生』(文庫オリジナル)
ベラスケス『フェリペ・プロスペロ王子』
ヨルダーンス『豆の王様』
レオナルド・ダ・ヴィンチ『聖アンナと聖母子』
ミケランジェロ『聖家族』
セガンティーニ『悪しき母たち』(文庫オリジナル)
伝レーニ『ベアトリーチェ・チェンチ』
ルーベンス『メドゥーサの首』
アンソール『仮面にかこまれた自画像』
フュースリ『夢魔』
ドラクロワ『怒れるメディア』
伝ブリューゲル『イカロスの墜落』
レッドグレイヴ『かわいそうな先生』
フーケ『ムーランの聖母子』
ベックリン『ケンタウロスの闘い』
アミゴーニ『ファリネッリと友人たち』
ホガース『ジン横丁』
ゲインズバラ『アンドリューズ夫妻』
ゴヤ『マドリッド、一八〇八年五月三日』
シーレ『死と乙女』
レッドグレイヴ『かわいそうな先生』は住み込みの女家庭教師ガヴァネスを描いたもの。出自はレディ(働かなくて良い身分)なのに、働かざるを得ないという矛盾。使用人やメイドとも異なる、もちろん雇い主(上流階級)とも異なる、どこにも居場所がない身分。キュリー夫人やシャーロット・ブロンテも務めた職業ですね。
ゴヤ『マドリッド、一八〇八年五月三日』はナポレオンのスペイン侵攻による、理不尽なレベルの一般市民殺戮を描いたもの。
この傑作との対比でマネ「マクシミリアンの処刑」(1868)のダメっぷりが登場するのですが、この構図は『名画で読み解く ハプスブルク家12の物語』ですね。セットで覚えると便利!
シーレの『死と乙女』のモデルは、シーレ自身と、彼が身勝手に捨てた恋人ヴァリ。絶望的な表情をしているのは捨てられる女ではなく、捨てているシーレである。
中野さんはその目をレーピン『イワン雷帝とその息子』の子殺しをした雷帝に重ねている。確かに。
ちなみに個人的にはイヴァン・クラムスコイ『荒野のイエス・キリスト』に似ていると思った(悪魔の誘惑と苦悩しながら戦っている。だいぶ人間臭い表情のイエス)。
余談に余談を重ねると、この荒野のキリストを中野作品のどれかで読んだはずなのに、本棚の蔵書から見つけられず。整理整頓ができなすぎて辛い…。