『つはぶきの花』内田百閒
以前、古本市で数冊買って保存していた旺文社文庫シリーズです。
装丁が超絶素敵(装丁は田村義也。題字の素敵さに定評ありだが、デザインも秀逸)で、新字旧かな表記、解説はすべてヒマラヤ山系こと平山三郎氏。
ふふふふ、あの古本市で買い占めておくべきだったぜ…(ずっと後悔している)。

『つはぶきの花』は昭和36年(1961年)に刊行された随筆集。
昭和32年〜34年に新聞や文芸誌に掲載された随筆をまとめたもの。
表題にもなっている『つはぶきの花』は読売新聞に全14回連載された随筆で、宮城道雄や夏目漱石など、亡くなった友人先輩を偲ぶ内容。
特に宮城道雄氏との思い出は、あっちこっちに書かれている。本当に好きだったんだなあ。
まあ、百鬼園先生は長生きだったので、追懐文を書く機会も多かった(川端康成も自分より年下の葬儀委員を務めることが多くてしんどかったらしい)。
個人的には『面影橋』が好きです。
早稲田の安下宿に逼塞していた時代のお話し。
妻子もいるし教師にもなってるのに、借金地獄にどハマりして、単身、安下宿に身を潜めていたそうです。サラッと書くなあ笑(背景の説明は約二行である笑)
そんな事情はどうでもよく(よくない)、下宿のエピソードを飄々と綴ります。2階5番室の老夫婦はレヂーとレバーと言う。外国の人?ではなく。百閒先生の巫山戯たあだ名です。大工や職人の符牒で1〜5が、ホン、ロウ、ツウ、ソ、レ、と言う。5はレ。そこのぢぢいとばばあだからレヂーとレバー。
借金から逃げてる割に余裕あるな笑
『つはぶきの花』にも漱石先生に借金を頼みに行くエピソードが載っています。「湯河原の“天野屋”」にいる、という情報だけで、往路の交通費だけを握りしめて行く。天野屋が見つからなかったらどうすんだ。
この逗留先での借金ネタ、文豪エピソードでちょこちょこ見かけますけど。檀一雄を見捨てた太宰治(金がないから借りてくるよ!と言ったまま太宰は東京に帰った)よりも好きですね。文豪どいつもこいつも、である。
大事に取っておいた百閒の積読を一冊読んでしまった。
そろそろでっかい全集を買おうかなあ。