『スパイス、爆薬、医薬品 世界史を変えた17の化学物質』
ジェイ・バーレサン/ペニー・ルクーター
小林力:訳
化学物質を切り口にしつつ、
世界史の一面や、発明品の裏面などが覗ける。
良いアプローチのおもしろ本!!
化学構造式の解説も丁寧でありがたい。
スパイスの分子に必ず入っている「芳香環」や、
同じ分子式でもカタチが違う「異性体」など、
わかりやすかった〜。
いや、私は理系なので遠い昔に習ったはずですけど。
びっくりするくらい忘れていたし、初耳感がすごかった…。
以下、メモ。
・壊血病、といえば大航海時代。
原因はビタミンC(アスコルビン酸)不足。
マゼランの世界一周(1519-1522)では乗員の死因の
ほとんどが壊血病と言われている。
一方でイギリスのジェームズ・クック(1728-1779)は
壊血病予防を徹底したことで有名。
・南極探検隊も、壊血病。
ノルウェーのアムンゼンは壊血病予防で
アザラシの生肉(ビタミンCが豊富)を摂っていた。
一方、イギリスのスコットは腐った肉が壊血病の原因
と信じてアザラシの肉も食べなかったらしい。
ここらへんも隊の結果に関わっているのかもしれないと思うと味わい深い。
(アムンゼンが南極一番乗りで、一方のスコット隊は全滅である)
・砂糖=スクロース=蔗糖(しょとう)
グルコース(ブドウ糖)は砂糖の「構成分子」
蔗糖はαグルコース(単糖類)とβグルコース(単糖類)が
結合したもの(二糖類=多糖類)である。
・グルコース(ブドウ糖)とフルクトース(果糖)は
同じ分子式C6H12O6で構造が違う(=異性体)。
・ラム酒は砂糖精製の副産物からつくられる。
サトウキビの植民地ではラム酒が飲まれている理由。
・ローマ人の鉛中毒。
酢酸鉛(さくさんなまり)、Pb(CH3COO)2
鉛糖とも言い、ローマ帝国ではワインを甘くするのに使われた。有毒。
最古の人工甘味料のひとつではなかろうか。
ローマ人の鉛中毒は有名だけど、
鉛のグラスや鉛の水道しかしらなかった。
直接ワインに入れて摂取してたんか〜い!と。
・絹の生産は紀元前2640年、中国黄帝の時代と言われる。
552年にキリスト教の僧が蚕と桑の種を盗んで広めた説。
絹織物業者は宗教的迫害を受けてイタリア→リヨン→イギリスへ。
それぞれが絹織物産地として有名になる。
・フェノール
ジョゼフ・リスター医師が1867年に殺菌剤として使用。
・ピクリン酸
1700年代、初期の人造染料。
ニトロ化(NO2が付いてる)されているので爆発する。
現代だから言えるのかもしれないけど、
「爆発する染料」ってなんやねん?となるパワーワード。
(1871年に爆薬として使えることが判明、
WW1では軍需品になる)
・アスピリン
1893年、ドイツ・バイエルのフェリックス・ホフマンが
サリチル酸(抗炎症作用があるが胃を痛める)の誘導体
アセチルサリチル酸をつくり、リウマチの父で実験する。
って、これも現代だから言えるのだけど、やったらあかんやつ。
・ベラドンナ
オオカミナスビの別名。
果汁を目にたらすと瞳孔が開いて美人になるということから
イタリア語「美しい婦人」=ベラドンナと呼ばれる。
瞳孔が開くと美人なのか?
あと、痛そうじゃない?
・麦角アルカロイド
麦角病を引き起こす。
ガリア戦のカエサル軍で麦角中毒が流行したとか
1812年ロシア行軍中のナポレオン軍で流行ったとか。
いろいろと歴史に干渉しているらしい。
・1898年
ドイツ・バイエル社、モルヒネのアセチル化に成功。
習慣化のない鎮痛作用薬をつくる。
と思ったけど習慣化があった。ヘロインだ。
・16世紀、タバコが新世界からヨーロッパに広がる。
ニコチンの由来は、駐ポルトガル・フランス大使ジャン・ニコ。
エポニム!
・マラリアにはキナの樹皮が効く。
ペルーのイエズス会士がヨーロッパに広めたため
「イエズス会の粉」と呼ばれる。
そのため、プロテスタントの多いイングランドでは不人気。
クロムウェルはカトリックの薬を拒んでマラリアで死亡(1658)。
そんな理由で…。
その後、ロンドンの医師がオリジナルで薬を処方して人気になる。
が、中身はキナの樹皮。
ネーミングって大事ですよね。