Trichronauts...

Clifford代数
Clifford代数から始める.
は異なる)は
次元の実線形空間の基底を成しており, その線形結合は和と積について閉じている. なお,本記事中, ラテン文字a,b,c...の添え字は1から4までとする.
そのうちを次のように定義する.
に注意. によって張られる実線形空間を
と定義する.
上の元に対してチルダ~であらわされる共役を次のように定義する.
すなわち基底のうち以外の符号が反転する. 基底の間には次の関係がある.
ギリシャ文字は0から5までを表すとする.
このチルダを用いて上の内積を次のように定義する.
ただしはAの
成分を表すとする.
はこの内積に対して正規直交基底である.
さて, 上に, Aに応じて定まる線形変換
を次のように定義する.
±それぞれが反交換子積, 交換子積に対応する. Xがの元であるとき, いかなるときに
が
上の線形変換になるか調べる. Aの基底について調べれば十分.
(i)のとき
どちらの場合にも明らかに線形変換(スカラー倍のためあまり興味がない)
(ii)のとき
a=1の場合に
などから,
(iii)のとき
の場合に
などから,
(iv)のとき
の場合に
などから,
(v)のとき
などから,
まとめると, のとき反交換子積,
で互いに相異なる)のとき交換子積が
上の線形変換になる.
そこでの元に対して次のシャープ
で表される共役を定義する.
は和, 実数倍と順序を入れ替えられ, これら基底の線形結合に対しては各基底に対して共役を取ればよい. つまり異なる
2つか3つの積で表される基底の成分の符号を反転させたものになる
この共役は次のようにも表される.
ゆえに
が成り立っている.
このシャープ共役を用いて
と定義すると, 上で調べたことは
とまとめられる. つまりは
上の線形変換である. これを利用すると,
が示される*1.
Lie群
Aのうち成分は実数倍にしか寄与しない. そこで
の基底から
を除き, その他15個で張られる部分空間を
と表す.
は交換子積について閉じるためLie代数を成している.
この元を指数の肩に載せて作られるLie群をGで表す.
このGの元Dに対して上の線形変換
を
で定義する. 次のことが示される.
これは
をA,Xそれぞれの基底について示せば十分であり, 実際に上でやったように計算すればこれが確かめられる. たとえばなら
などである*2.
これを用いると, 上で定義した上の内積について,
つまりは計量同型写像になっている.
行列表現, 3+3次元の例
ここで行列表現を与える(逆にここまでは行列表現に依存していなかった). をそのまま表現行列として同一視する.
例として,の場合を考える. 3+1次元Lorentz計量のそれ(いわゆる東海岸cnvention)である. Pauli行列を用いて次のように取ることができる.
このとき,
その他のの基底を以下に列挙する.
Pauli行列はのみが虚数成分を持つことに注意すると, これらが4次の実行列の基底を成していることが分かる(と言うよりそうなるように最初の
を選んだ). すなわち,
また, 以外はトレースレスであるから,
そして上で議論した通り, Gの元Dについて上の計量同型な線形写像への準同型で, 二対一の対応関係を持つ. このことから
が示される. は
の単位元との連結成分のなす群である. これにより,
を得る.
これを利用してDirac方程式を導出する. 3+3次元の座標変換Oに応じてベクトルVとそのチルダ共役は
と変換する. これと同時に次のように変換する2つの2×4の実行列を導入する.
次の微分方程式はSO(3,3)共変性をもつ.
すべての成分が実数であることに注意. これが3+3次元のDirac方程式である.
各成分はKlein-Gordon方程式も満たす*4;
の固有値は1,-1であり,
をその固有ベクトルu,vに掛けると次のようになる.
上の連立方程式に右からu,vをかける.
これらは元の式と同値で(単位行列をかけて列ベクトルに分解しただけなので), すべて実数から成っている. そのため,(第3式)-i×(第1式), (第4式)-i×(第2式)のふたつの複素数の方程式の実部と虚部をとれば再構成できる. すなわち,
とおき(u+ivはの固有ベクトル),
と表しても同値. さらにまとめて
とすればいつも通りのDirac方程式になる. スピノルの変換は
ガンマ行列は具体的には,
となっている.
実はSpin(3,3)とSL(4,R)の同型に関する以上の道筋は, Spin(5,1)とSL(2,H)の同型を示した際の議論において, 四元数を分解型四元数(split quaternion), 複素数を分解型複素数(split complec number)に置き換えたものと並行になっている.
5+1次元Dirac方程式 - Spin(5,1)とSL(2,H)の同型から - Shironetsu Blog
逆に最初にとすればSpin(5,1)とSL(2,H)の同型が現れる. 本項では一段抽象度の高い4次の実Clifford代数から初めて両者を統一的に扱ったことになる.
では, 他のQを採用すれば6次元の他の直交群が現れるかというと残念ながらそうはならない. Qとgとの対応関係は以下のようになるためである.
| Q | g |
|---|---|
| ++++ | +----- |
| +++- | +---++ |
| ++-- | +--++- |
| +--- | +-++++ |
| ---- | +++++- |
このようにgには1+5か3+3しか現れない.
おわり
Spin(2,2)と同型なSL(2,R)×SL(2,R)はふたつの自明でない群の直積であるため, Spin(3,1)とSL(2,C)の同型をヒントにSpin(5,1)とSL(2,H)の同型を構成したときとはやや異なるがだいたい同じ対応関係がSpin(3,3)とSL(4,R)との間にある. 上の図で2+2の下に3+3を並べたのはそういった理由から.
2+2次元Dirac方程式―Dichronautsをよみはじめた - Shironetsu Blog
本項の内容は前回5+1次元を扱ったときに行列表現を眺めていたら気付いたことだった.SL(4,R)にしてもSL(2,H)にしても32次元の4次複素行列環の半分, 16次元部分線形空間の元になっており4次の実Clifford代数の次元に一致していたのだった. 同じようにうまくはいかないがSpin(6,0)とSpin(4,2)ももう少し抽象的に理解したいところである.