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ノーテーション等はこの記事を踏襲.
前回, 2×2行列同士の関係式として表されたDirac方程式として
(……式(1))
を得た. 再度書いておくと, 右肩にを付けて表す「ダブルダガー共役」は, GL(2,C)の元に対して「余因子行列のHermite共役」で定義されている. 「正方スピノル」と呼んでいた
はその列ベクトルが左手型の2成分スピノルで構成されており, Lorentz変換とともにSL(2,C)の元D(定義は前の記事を参照)によって
と変換する. 一方「共役正方スピノル」と呼んでいたはその列ベクトルが右手型の2成分スピノルで,
と変換する.
さて, 次の事実を使うことでこの方程式を変形する. すなわち, はGL(2,C)に対して複素ベクトル空間としての基底をなす. このことは,
の実係数線形結合がHermite行列になり, 一方虚数係数だと歪Hermite行列になること, 任意のGL(2,C)の元がHermite行列と反Hermite行列の和に分解できることを考えれば自然に理解できる.
このことは
と表せる. このように表すと, ダブルダガー共役は次のようになる.
これを使って式(1)を書き換える.
とすると,
ここで
とする. は複素数で, 具体的には
である(添え字の上下がややいい加減だが...). また,
から,
が成り立つ. このαを用いると,
となる. 行列α, βを
で定め, を
を成分にもつ4成分の複素ベクトル(列ベクトル)とすると, 式(1)は
と表せることになる. これがDirac方程式の別の表現である. 複素共役が顕わに出てくるのがむず痒い. 行列α,βは書き下すと
となっており, αはすべてHermiteである. さらに
が確かめられる. の間に成り立つ関係はPauli行列のそれと同じ. すなわち
はsu(2)の表現になっている. しかしClifford代数の関係は満たされない.
変換性
正方スピノルは行列Dで変換するのだった. Dも
を基底としてその成分を表す.
後の便宜のためにチルダ付きの基底で定義している. det(D)=1の条件は次のように書ける
DはLorentzノルムが1の複素ベクトルだとわかる. 正方スピノルの変換
に応じて, ベクトル成分は
と変換する. 4×4行列を
で表すと, これは
と表せる.
共変ベクトルの変換性などから式全体の変換性を見て……いきたいもののすっきりと計算できない(ひたすら4×4行列の積を計算するだけだけど). 特にβが何者なのか納得できていない. 物理的解釈も含め理解できたら続きを書くことにしてここでいったん打ち切る.