こんばんは。
梅雨はどこへ行ってしまったんでしょうか。
さて、今年も半年が終わってしまったので恒例の本紹介です。
前回のはこちら。
ビジネス
キーエンス流 性弱説経営
善とか悪っていう意志の力っていうのはかなりコストがかかるものではあるので、それをあらかじめ仕組みでカバーしておこうというのは効率的で、一種のシステム思考なんだと思います。
シンプルにキーエンスってすごいなっていうところもあるんですが、ただ、なんというか失敗しないように仕組みをどこまでもストイックに洗練していくっていうのはなかなかにハードだなとは思ったりもします。
ファイナンス学者の思考法――どこまで理屈で仕事ができるか?
理論的思考やロジカルシンキングというキーワードはビジネスにおいてもよく聞きますが、ロジカルっぽい考え方と真にロジカルな考え方にはやっぱり差があるんだなとは感じました。
とてもエレガントな思考プロセスの気持ちよさと、現実にはそうはいかないんだよなという引っかかりを胸にすらすらと読んでいける感じが良いです。
サブタイトルの「どこまで理屈で仕事ができるか?」と問題定義されている通り、筆者も理屈だけではどうにもならないことがあるとは重々承知しており、それでも理論に落とし込んでいくとこうなるんだなという不思議な体験でした。
NINE LIES ABOUT WORK 仕事に関する9つの嘘
「どの会社で働くかが大事」「最高の計画があれば勝てる」など、どれも確かに一見するとそれっぽいけど実のところ…みたいな感じですね。
まぁ100%嘘かっていうとそういうわけでもなくて、切り取り方と解釈を間違えると変なことになってしまうし、実際にそうなっていることがたくさんあるっていうのが本当のところでしょうか。
何の疑いもなく正しいと信じていることに対して「ちょっと待てよ」と疑いの目を向け、本当であるかを再考するにはとても良い機会になる本だと思います。
マネジメント
まず、ちゃんと聴く。 コミュニケーションの質が変わる「聴く」と「伝える」の黄金比
本書では「自分の解釈を入れることなく、意識的に耳を傾ける行為」を「聴く」と定義しており、「相手の言動の背景には、肯定的意図があると信じている状態で聴く」を「ちゃんと聴く」と定義しています。
ここで終わってしまって「なるほどそれはわかった、それでどうしたらいいんだ」となってしまうのが傾聴の本あるあるなのですが、この本ではその部分はあくまで「まず」であってその続きがちゃんとあるというのがミソです。
考え方や受け取り方を変えるっていうのはなかなかに難しいことで、正直なところ読んだだけですぐにできるようになるようなものではないですが、それでもすごく良いヒントにはなりますね。精進です。
EMPOWERED 普通のチームが並外れた製品を生み出すプロダクトリーダーシップ
なかなかに攻撃力が高く、例えば以下のような内容などは随分とグサリと来るものがあります。
最も基本的なレベルでは、大半の企業がテクノロジーを必要経費とみている。重要だということは理解しているが、事業を営むためのコストであり、外部委託できればなおよい、という認識だ。(中略)一方、優れたプロダクト企業では、テクノロジーは経費ではなくビジネスそのものである。テクノロジーこそが、顧客に提供するプロダクトやサービスを実現する原動力であり、今ようやくできるようになった方法で顧客の問題を解決してくれる手段である。
EMPOWEREDとは「力を与えられた」といった意味だと思いますが、リーダーシップを発揮して人の力やモチベーションを引き出すのは本当に難しい仕事です。
その中でいかにして、アウトプットではなくアウトカムを出していくかがすべてだというのは、とても正しく、そしてとても厳しいですね。
マネジメントは嫌いですけど
いや、きっと嫌いだったけど自分なりのマネジメントという形を見つけたのではないでしょうか。
役割、気持ちの置き方、時間の使い方など、きっとさまざまな経験からこういった考えに落ち着いたんだろうなという感じがします。
個人的にも人間関係や感情労働的な部分にマネジメントの役割を見出していた時期は結構つらかったですが、仕組みやシステムを作るのだと思ってからだいぶ気持ちが楽になったななどと読みながら考えていました。
(ちなみに補足しておくと、これは別にどこまでもドライになりましょうとかそういうことではなく、苦労することが仕事なわけではないので、うまくいく仕組みを作ったほうがみんなにとっても幸せだよねって話です)
技術
LangChainとLangGraphによるRAG・AIエージェント[実践]入門
気が付けば猫も杓子もエージェントな時代に突入していて、やっぱり自分でエージェントを作ろうとするとLangGraphはかなり有力な選択肢になるのではないかと思います。
後半はエージェントデザインパターンについてかなりしっかりとページがとられており、この部分だけでもこの本を買う価値はあるかなと思います。
何でもやってくれるエージェントだからこそ、基本的なその仕組みは理解しておきたいですよね。
改訂新版 良いコード/悪いコードで学ぶ設計入門 ―保守しやすい 成長し続けるコードの書き方
なんだかネット上で賛否両論みたいな感じで言われていたのでどうなんだろうなと思っていましたが、個人的には良い本だと思います。
書いてあることに100%同意できるかっていうとそういうことはないのですが、「私はこう思う、なぜなら~」という考え方がしっかりと述べられているのが好印象で、「うんうん、でもこの部分の私の考え方はちょっと違うかな」と受け入れれば参考になることはたくさんありそうです。
哲学・心理学・行動経済学
新装版 「原因」と「結果」の法則
これは哲学の本なんですかね。結構短くてサクッと読めます。
私たち人間は、私たちを存在させている法則でもある「原因と結果の法則」にしたがい、つねにいるべき場所にいます。私たちが自分の人格のなかに組み込んできた思いの数々が、私たちをここに運んできたのです。よって、人生には、偶然という要素はまったく存在しません。私たちの人生を構成しているあらゆる要素が、けっして誤ることを知らない法則が正確に機能した結果なのです。
なるほどそうなのかとすんなり受け入れることはできないですが、どんな結果にも必ず原因があり、原因なしに結果は生じないというのはわからないでもないです。
ただじゃあ、正しい原因を生きさえすれば正しい結果が必ず得られると信じるっていうのはちょっと個人的には違うかなという印象です。
この辺りは後述するアドラー心理学とかとは相容れなそうな感じがちょっとしますね。
FULL POWER 科学が証明した自分を変える最強戦略
人間は意志の力で様々なことを乗り越えることができる生き物だと思います。目の前の辛いことにも意志によって立ち向かっていくことができます。
ただし、本書には以下のように書かれています。
心理学の研究によると、意志力とは筋肉のようなものだ。有限なリソースであり、使用とともに消耗していく。その結果、骨が折れるような忙しい1日が終わる頃には、意志力という筋肉は疲弊してしまい、あなたは意志力をまとわない無防備な裸になってしまう。 夜中のつまみ食いや時間の無駄遣いをしないよう自分を律する力は残っていない、というわけだ。
つまり意志は有限で、意志によってすべてを何とかすることはとても難しいわけです。
じゃあどうするかというと、限られた意志のリソースを、環境を作り上げ、選択することに使いましょうと筆者は述べています。
人間は自身の置かれた環境にものすごく左右されるし、自分のアイデンティが行動を作るのではなく、行動がアイデンティを作るのだと。
なるほど、これも仕組みってやつですね。
あいては人か 話が通じないときワニかもしれません
なんとも一風変わったタイトルですが、あいつはワニで話が通じないやつだから無視しようとかそういう話ではないです。
この本では人の脳を、ワニ脳、サル脳、ヒト脳と3つに分け、人はその置かれた状態によって脳の状態が切り替わると述べています。
ざっくり言うとワニ脳は生存本能を、サル脳は感情を、そしてヒト脳は論理的思考を司り、ストレスなどによって徐々にヒト脳から遠ざかってしまうというわけです。
というわけでタイトルの言いたいことは、ワニ脳状態の人と話しても話が通じないのは仕方がない。ヒト脳で話せる状態にする必要があるってことですね。
人によって話が通じる通じないではなく、その人の脳の状態によって左右されることがあるというのは頭の片隅に入れておきたいものです。
ファスト&スロー
行動経済学のかなり有名な本ですね。上下巻でかなりボリュームがあります。
人間は自動的に高速で動く「システム1」と意識的でゆっくり動く「システム2」で構成されており(つまりファストとスロー)、それを踏まえると人間は合理的ではないかもしれない行動や選択をすることがあるよというのが本書の、というか行動経済学のざっくりとした説明でしょうか。
プロスペクト理論などのいわゆる行動経済学における重要なモデルや、代表性ヒューリスティックやアンカリングといった認知バイアスについても一通り登場し、非常にボリューミーです。
そして本の内容的に当たり前なのですが、「システム2」でよく考えてみるとそうはならないみたいな話がたくさんなので、「システム1」でつらつらーっと読んでいけないのがなかなかに大変です。
嫌われる勇気/幸せになる勇気
少し前、といってももう10年くらい前にかなり流行った本ですね。
扱っているのはアドラー心理学ですが、解説書というわけではなく哲学者と青年の対話という形で話が進んでいきます。
「誰の課題なのかを分離する」、「縦の関係を否定し、横の関係とする」など、心理学にしてはかなり実践的な考え方が多く、アドラー心理学は「所有の心理学」ではなく、「使用の心理学」 だというのも頷けます。
全体的に理解はできるんだけど、そこまでは達観できないなぁとは思いつつ、心穏やかに生きていくには取り入れたい考え方もいろいろあるなというのが正直な感想です。
本文中にも出てくるニーバーの祈りにも通ずるところがあり、「変えられるものと変えられないものかぁ」と物思いにふけったりもしていました。
原因論と相入れないというのはアドラー心理学では目的論のスタンスをとっているからなのですが、そのあたり書き始めるとキリがないので気になった方は調べてみてください。
ところでこの本、読み終わるまでずっとなんで「幸せになる勇気」じゃなくて「嫌われる勇気」なんだろうって思って読んでいて、続編がまさにその名前で読まざるを得ませんでした。策士なり。
ひとこと
はい。というわけで恒例の本紹介でした。
この半年はちょっと技術系の本は少なめでしたね。
技術系のほとんどの関心がAIになってしまっているので、移り変わりがめちゃくちゃ早くて本のペースだと間に合わないっていうのが大きい感じがします。
哲学・心理学・行動経済学といった微妙に違うジャンルがなんとなく交わってくる感覚が結構好きなので、この辺りは引き続き読んでいきたいですね。
それでは。