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トランプ関税延期でも油断は禁物

トランプ大統領は4月9日の相互関税発動から僅か13時間後、中国以外に対する関税発動を90日間一時停止すると発表しました。発表を受けて株式市場は一時急回復しました*1。ベッセント財務長官によると、相互関税は交渉のための手段で、最初からこうする予定だったとのことですが、果たしてどうでしょうか。

確かにいわゆる相互関税の計算式は極端にいい加減で*2、元々から暫定的措置のつもりだったのは事実でしょうが、トランプ政権の関税発動延期前後の発言は矛盾だらけで、方針は二転三転しています。これが事前の綿密な計画通りとは到底思えません。やはり市場の反応に驚いて方針を変えた可能性が高いでしょう。
関税延期は歓迎すべきですが、当初の市場の反応は楽観的過ぎたように見えます*3。関税引き上げが中止されたわけではなく延期されただけですし、油断は禁物です。日本の主要な貿易相手国で、製造業の拠点である中国への関税は当初よりもさらに引き上げられています。米中対立の激化が世界経済の冷え込み、金融市場の混乱を招くリスクは小さくありません。周知の通り、日本の対米輸出の約3分の1が自動車関連ですが、やはり自動車工場のあるカナダやメキシコの25%の関税や自動車関税25%もそのままです。

日本との交渉にトランプ政権が意欲的なのは不幸中の幸いですが、そうはいっても、自動車産業を中心とする製造業が重要な産業で、中国とも経済的に深い関係にある日本が他国と比べて特に不利な影響を受けることに変わりはないでしょう。1か月前にカナダやメキシコへの関税は延期されましたが、結局実施されました。同じ事が90日後に起きない保証はありません。

90日間を無駄にしたといわれないように、早めに対策を立てておく必要があります。自由貿易体制に留まる利益を米国に根気強く説得すべきです*4。もちろん、日本が米国の通商政策に対してできることには限界がありますが、国内景気の対策なら可能です。前回の投稿でも書いたようにまず減税が必要ですし金融政策も再検討すべきです。

自動車産業が一番打撃を受けるのは明らかですから、政府でもエコカーの購入補助金の拡充案などが議論されているようですが、これは不公正な貿易慣行として米国に批判の材料を与えることになりかねません。どうせなら自動車関連の税はたくさんあるのですから、それらの減税措置をとる方が遥かに賢明でしょう*5。農業関税引き下げは米国に対する交渉材料にもなる上に日本の消費者のためになる最良の対策です。コメなどの関税を引き下げることは、食料価格高騰に苦しむ日本経済全体にとっても利益になりますから、どちらにせよやるべきです。

4月9日の講演で植田日銀総裁は各国の通商政策の不確実性を注視する必要があるとしつつ、「これまで示してきた見通しが実現していくとすれば、それに応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになる」と述べておられましたが*6、見通しが実現しそうにないのは明らかです*7。利上げは当然見直しになると思いますし、むしろそうならなければ驚きです*8

細かな方針の調節はあるにせよ、トランプが保護主義を撤回する可能性は殆どありません。関税政策は大統領の権限が強いですし、たとえ中間選挙で敗れてもトランプ政権の方針は変わらないでしょう。中間選挙共和党はおそらく下院で負けても上院の過半数を維持する可能性が高いですし、民主党保護主義者が多く一枚岩ではありません。民主党のバイデン政権もUSスチール買収反対や対中関税の強化などの措置をとっており、極めて保護主義的でした。少なくとも今後4年間、おそらく当分の間は、米国は保護主義に傾斜したままで、世界貿易は試練の時代が続くだろうと予想するのが妥当です。

*1:11日追記:予想通り長続きしませんでした。「急回復しています」⇒「一時急回復しました」に変更。

*2:この点は前回の投稿で説明していますので、ご参照いただければ幸いです。

*3:Dead Cat Bounceという格言がありますが、今の状況はそれではないでしょうか。11日追記:「市場の反応はややオーバーに思えます」⇒「当初の市場の反応は楽観的過ぎたように見えます」に変更。

*4:前回の投稿でも書いた通り、米国製品への関税(主に農業ですが)や非関税障壁の引き下げは米国からの譲歩を引き出す材料になるだけでなく、日本経済にとっても有益ですから、いずれにせよやるべきですが、一方で譲歩すべきでないのは、金融政策の円高誘導などの国際協調の要求です。プラザ合意後の円高不況やルーブル合意後のバブルなど、国際協調で金融政策を決めるとろくなことがないのは歴史的経験からも明らかです。

*5:なお、トランプ政権が消費税や輸出還付金制度を非関税障壁と見なして問題視しているのは実際には誤解です。消費税は国内製品にも輸入品にも平等ですから中立ですし、輸出還付金も輸出先で課税されるのですからやはり中立です。消費税減税は景気対策として効果が大きく望ましいですが、トランプ政権の誤解は放置しない方が賢明でしょう。

*6:【挨拶】植田総裁(第100回信託大会) : 日本銀行 Bank of Japan

*7:状況に応じて機動的に動くとだけ言えばよかったのではないかと思います。トランプ政権が円安是正を主張していることもあり為替が円高気味に触れていることからしても、今後米国の早期利下げの可能性が高いことからしても、利上げを続けるのは難しいでしょう。

*8:そもそも日銀推計のGDPギャップはマイナスが続き、去年はゼロ成長でしたし、インフレ率も食料価格高騰などを除くと次第に落ち着いていますから、これまでも利上げを急ぐ理由は乏しかったと思います。前回の1月24日の0.5%への利上げもトランプ政権の動きがまだわからない状況で時期尚早だったと考えます。トランプ政権発足からまだ4日で判断する必要があったでしょうか。




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