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田中秀臣先生より『本当に役立つ経済学全史』をご紹介いただきました!

田中秀臣先生より『経済学史研究』66巻2号(2024年12月)の論文「最近の経済学史教科書と経済学の多様性」にて拙著をご紹介いただきました。遅ればせながら、高名な先生方の優れた経済学史の教科書と並んで拙著を取り上げていただいたことに心より御礼を申し上げます。

田中先生の論文は、経済学史の教科書を読み比べ、経済学史の問題意識の共通性と経済学史研究・教育の在り方を論じた大変素晴らしいご論考です。取り上げられている経済学史の教科書は次の五冊です*1

どれもそれぞれの特色のある本ですが、田中先生は、これらの教科書を現代の課題への歴史の教訓を学ぼうとする意図、様々な学説を学ぶことで経済学の多様性を担保する意図という2つの観点から整理されています。

田中先生のご指摘の通り、私の教科書は、正統派経済学の流れの重要性を強調しており、正統派に批判的で異端派経済学に肯定的な教科書とは一線を画しています。もっとも、私の教科書も経済学の多様性を否定しているわけではなく、「主流派経済学内部の多様性」を提示し、異端派経済学との対話から主流派経済学が発展してきたプロセス、いわば「経済学自体の創造的破壊」を示すことで主流派経済学を理解する試みであると評価されています。MMT批判やフリードマンへの「人格」批判に対する反論なども高く評価していただき、私の意図を明確に理解してくださり大変嬉しい批評です。

学派の創始者の崇拝に陥って教祖(マルクスケインズ等々)が本当は何を言ったかが最重要の問題になっているような異端派経済学に私は批判的ですが、経済学を学ぶ際は多様な見方を知る必要があるという意見には賛成です。主流派経済学が成功を収めてきたのも異端派から学ぶ姿勢あってこそであると思っています。しばしば「市場原理主義」などと藁人形論法で批判を受けることが多いのですが、主流派経済学は自由市場を基本としつつも異端派の考え方も柔軟に取り入れてきました。物の価値は効用によって決まるという主観価値説の考え方が良い例ですが、かつては異端的だった理論が主流派になることは稀ではありません。現在主流の考え方といえども、飽くまで暫定的に支持されているだけであり、新しい学説に取って代わられることもあるでしょう。経済学史を学ぶことは狭い視野に陥ることなく、新しいアイデアを生み出す原動力になりえます。

過去の経済学者の忘れられた学説に革命的なアイデアが眠っていることも稀ではありません。実際、主観価値説のアイデアが生まれたのは1870年代の限界革命の遥か前、それどころかアダム・スミス国富論』(1776年)よりも前でした*2アダム・スミスやマーシャル、ケインズといったメジャーな経済学者であっても、理論が教科書的に解釈される過程でそぎ落とされてしまった学説が少なくありません。主流派から離れた学説を知り、主流派経済学者でも原典に戻ってその学説を確認することは、主流派経済学の研究者にもしばしば大きな示唆を与えてくれるものです。多様な経済学の学説の歴史を学ぶことは経済学を学ぶ学生の視野を広げる上でも極めて有益です。経済学者は競争の大切さを説いていますが、経済学においても競争は重要なのです*3

*1:私の本以外の4冊もぜひ読み比べてみていただければ幸いです!経済学史への理解が一層深まると思います。

*2:最近の主観価値説の起源の研究として推薦したいのがです。この本は主観価値説の先駆者のフランスの経済学者グラスラン(主著『富と税についての分析試論』1767年)の本格的な研究です。個人的には昨年の経済学史研究の一番の収穫だった本です。

*3:なお、田中先生も批判的に言及されていますが、2013年の日本学術会議の「経済学分野の参照基準(原案)」のような上からの画一化には私も批判的です。日本の経済学の現状に関しては(田中先生も紹介されていますが)、浅田統一郎「「経済学の多様性」をめぐる覚書ーデフレと金融政策に関する特殊日本的な論争に関連させて」(所収)が示唆に富んでいます。




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