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ホッペの反動的”リバタリアニズム”

今日は、オーストリア学派の思想家ハンス=ヘルマン・ホッペ氏(ネバダ大学ラスベガス校名誉教授)を取り上げたいと思います。ホッペ氏は無政府資本主義者ロスバードの弟子で、自身も無政府資本主義を標榜しています。一部の本格派の(?)リバタリアンの間では、フリードマンハイエクは生ぬるく、ミーゼス、ロスバードやホッペこそ本物のリバタリアンだという人もいるようです*1

リバタリアンで知られるアルゼンチンのミレイ大統領も影響を受けた人物としてホッペ氏の名前を挙げていました。しかし、先日のインタビューでは、ミレイ大統領は、ホッペ氏について「彼は哲学については多くを知っているのかもしれないし、哲学に関しては良き無政府資本主義者なのだろうが、政治学と金融理論については愚か者だ」と激しく批判していました。もとはホッペ氏を高く評価していたミレイ大統領ですが、ホッペ氏からのミレイ大統領に対する度重なる攻撃的な批判にさすがに頭に来たのでしょう*2

ところで、ミレイ大統領はホッペ氏の経済学者としての無能さを指摘しつつも哲学者としての評価には一応は留保をつけていますが、ホッペ氏はそんな高い評価に値する哲学者なのでしょうか*3。そもそも彼の思想はリバタリアンと呼ぶべきなのでしょうか?原理主義者のリバタリアンの皆さんには失礼ながら、これは前々から大変疑問に思っているところなのです。

ホッペ氏を同性愛嫌悪、移民排斥論者の反民主主義者、言論の自由の敵、暴力を支持する反米極右と呼ぶのは本人の言葉で十分裏付け可能な正当な客観的評価です。ホッペ氏はDemocracy-The God That Failedという本で、民主主義は極めて悪い政治体制でそれ以前の王政の方が良かったと主張していますし*4、自他ともに認める反民主主義者です。

もちろん、ホッペ派の皆さんからは「そんなことは当然で知っている。民主主義は自由とは関係ない。ホッペ氏の目指す社会は民主主義よりももっと急進的な自由な社会なのだ」と言われることでしょう。なるほど、民主主義に否定的だったり懐疑的だったりした自由主義者は歴史上いなかったわけではありません。ですが、ホッペ氏の著作を読んでもどこにリバタリアンな要素があるのか理解するのは極めて難しいのです。

ホッペ氏は無政府資本主義を自称していますが、彼の理想社会は通常イメージする自由な社会とは程遠く、相当なディストピアです。この社会では人々は契約を結んで共同体を設立するそうなのですが、この共同体では”リバタリアンの”社会秩序を崩壊させるような言説や生活様式は許されません。ホッペ氏は、別の文化を持つ”悪い”隣人に対しては、たとえその人物が他人の自由を侵害していなくても、集団で制裁を加えて出ていくように圧力をかけるべきだと主張し、必要なら実力行使をすべきだと明言しています。

私有財産を守るために…締結された契約〔で設立された社会〕においては、自由な(無制限の)言論の権利など存在しないし、自分の借地内での無制限の言論の自由さえ存在しない。人は太陽の下で数え切れないほどのことを言い、殆どどんな考えでも宣伝できるだろうが、共産主義や民主主義のように私有財産を守るという契約の目的そのものに反する考えを主張することは無論だが誰にも許されない。リバタリアンの社会秩序において、民主主義者と共産主義者に対する寛容などあり得ない。彼らは社会から物理的に隔離され、追放されなければならないだろう*5。同様に、家族と親族を守るために設立された契約においては、この目的と両立しないライフスタイルを習慣的に広めている人々に対する寛容などあり得ない。私的な快楽追求(individual hedonism)、寄生的生き方、自然環境崇拝、同性愛(homosexuality)あるいは共産主義など家族や親族を中心としない異なるライフスタイルの提唱者は、社会から物理的に取り除かれなければならないだろう*6*7

要するに、ホッペ氏の”リバタリアン”の理想社会とは、共同体が今以上に強い力を持ち、多様性の存在しない、集団主義的な極右的文化を強制するムラ社会です。同性愛者は「物理的に取り除かれ」ます。まるで暗黒時代の封建社会みたいな世界ですが、現代でおそらくこれに一番近いのは極右やカルト団体の主催する軍隊式生活をするキャンプでしょう*8。個人のライフスタイルに対する寛容は常識的なリバタリアンの間では普通ですが、自称原理主義リバタリアンはそうは考えないようですね*9。ホッペ氏自身、彼の理想とするような社会は「根本的に不平等主義的で不寛容で差別的なものになるだろう。左翼リバタリアンが大切にしてやまない寛容と開かれた精神(open-mindedness)は殆ど、あるいは全くないだろう」*10ということを堂々と認めています。

この「物理的に取り除く」という強烈で暴力を示唆する表現はホッペのお気に入りです。批判を受けても何度もむしろ喜んで使っています。なんですって?「曲解だ!暴力を示唆しているわけではない」?では誤解のないように、別の2017年の講演(後に論文集Getting Libertarianism Rightに収録)から引用しておきます。

「ある領域で隣人同士や定期的に直接接触する人々の平和的な共存、すなわち平穏で和やかな社会秩序を保つためには、言語、宗教、習慣、慣習といった文化の共通性も必要になる。遠く離れた、物理的に離れた領土では、異なる文化の平和的共存はあり得るが、多文化主義、文化的異質性が同じ場所、同じ領域に存在することは不可能だ。それは社会的信頼の喪失、緊張の増大、そして遂には強権的政治家を求める声が強まり、リバタリアン的な社会秩序の類似物の破壊につながることになるだろう。…リバタリアン的な社会秩序は(たとえ攻撃的ではないとしても)悪い隣人から社会的な排斥(村八分)、すなわち、「お前はここでは歓迎されていない(から出ていけ)」という共通の文化によって守られなければならないだけでなく、どのような形であれ共産主義社会主義、サンディカリスム、民主主義を公然と主張する隣人には、さらに警戒しなければならない。彼らは、それによって〔そうした主張を広めることで〕全ての私有財産と財産所有者に公然と脅威を与えているのであり、単に仲間はずれにするだけではなく、今では少々有名になったホッペのミーム〔流行語〕を使えば、必要ならば暴力によって「物理的に取り除き」*11、別の場所へと離れていくように強制しなければならない。もしそうしなければ共産主義社会主義、サンディカリスム、民主主義、従って、リバタリアン的社会秩序とは正反対のものが生まれるのは避けられないからだ。」*12

これでホッペ氏の意図はよくわかったでしょう*13。ホッペ氏はこれ以外にも民主主義国の政治家は全員絞首刑等の刑罰で処罰にすべきと示唆したり*14やたらに暴力的な表現を好んで使っています。ホッペ氏の「物理的に取り除く」という表現は極右の間でも大人気で、彼らの間ではヘリコプターから人を突き落とす”ホッペ氏のヘリコプター”の絵柄が流行しています*15。ホッペ氏自身もヘリコプターの玩具をもって写真を撮るパフォーマンスをするなど殺人を”冗談”にしています*16

自由なライフスタイルや様々な文化的背景を持つ人々の交流等が社会秩序を崩壊させるというホッペ氏の主張は控えめに言って相当議論の余地がある意見ですが、その主張には何の根拠も提示されていません*17。誰の権利も侵害していない他人に対して、ただ単にその思想や性的志向等が気に食わないからと言って暴力を振るって弾圧して良いというのは驚くべき主張ですし、全くリバタリアンでも何でもないように思われます。むしろこれは通常理解されるような自由を尊重する哲学としてのリバタリアニズムと正面衝突する主張でしょう*18

ホッペ氏にとって言論の自由も移動の自由も幸福追求の自由も身体的な自由すらも大したものではないのですが、彼が専ら擁護し礼賛するのは人種や性別などの偏見による「差別の権利」です*19。ホッペによれば、同性愛者を差別し民主主義者を差別し「物理的に取り除く」のは素晴らしい権利なのです。この権利はホッペ氏にとっては他者危害原則すらも無効にする殆ど絶対的な権利です*20

ホッペ氏は 「全人類の歴史上で最も成功した社会、最高度の発展、人類の文明の頂点は、伝統的な父・母・子の家族構造を持つ、西洋的で白人、異性愛者、男性優位の社会であるという明白な事実」*21こそが「文明の基本」であると(何の根拠も示すことなく)主張し*22女性差別LGBT差別、人種差別を強く肯定します*23。何しろそれは「文明の基礎」なのですから!

極めて滑稽なことに、経済学については経験を無視した急進的な先験主義を標榜する哲学者であるホッペ氏が人種差別的主張を正当化するのに持ち出す根拠は「経験的な問題」*24なのですが、ホッペ氏は彼の主張の根拠になるデータも証拠も何も提示せずただそれが「明白」だと断言するだけです。ホッペ氏は「西洋的で白人、異性愛者、男性優位の社会」が最も豊かだと断言しますが、台湾や韓国、日本のような国を度忘れしているようです(厳密な先験主義を標榜する学者らしいことですね)。ホッペ氏は、人種の平等などの「左派の経験的な主張は…あらゆる日常経験と膨大な実証的社会調査によって反証されている」*25と自信満々に断言しながら、脚注でも一つも文献も証拠となるデータも挙げていません*26。ホッペ氏は西洋諸国への移民を犯罪を引き起こし福祉給付を増やす「寄生虫の大群」等と呼びますが *27、やはり何の証拠も示していません。実際は米国等の移民は福祉給付の受取よりも税の支払いの方が多く、一般に移民は犯罪発生率と無関係かむしろ犯罪発生率低下に貢献しているという実証研究が圧倒的です*28。ホッペ氏は白人至上主義者の極右に典型的な偏見を何の証拠もなしに「明白な事実」だと断言して正当化した挙句、極めて排外主義的で人種差別的な移民政策や人種隔離政策を正当化しています。

「もし町や村が19世紀初めまでアメリカで当然のこととしてやっていたことが再びできるようになれば、結社や排除の自由を取り戻すという目標にかなり近づくだろう。即ち、町に入るための条件や町に入ってからの特定の土地への立ち入りの条件(乞食、浮浪者、ホームレスはもちろん、イスラム教徒、ユダヤ教徒カトリック教徒、黒人、中国人、メキシコ人などは立ち入り禁止)を記した看板を立て、これらの条件を満たさない者を不法侵入者として追い出すのである。このような結社や排除の自由は私有財産や家族という思想や制度に含意されているものである」*29

このようなホッペ氏の理想の社会は奴隷制の米国南部やナチス・ドイツに極めて近いものだと言っていいでしょう。実際、ホッペ氏は、単に反民主主義者であるだけでなく、ナチスに好意的な極右の歴史修正主義者の歴史観を支持し*30、マイノリティを蔑視する偏見に満ちた発言を繰り返しています。有名なホロコースト否定論者デイヴィッド・アーヴィング氏の文章を自分の論文のエピグラフとして引用したり*31、ドイツの歴史は戦勝国に書き換えられておりドイツ人は洗脳されたと主張したり*32ナチスの歴史を相対化する発言やユダヤ人迫害の歴史を軽視する発言*33を繰り返しています。ホッペ氏によれば、戦後ドイツは米国の支配下にあり、「再教育や脱ナチ化等は、非常に多くの場合、ドイツに戻ってきたドイツからの亡命者(その殆どがユダヤ人だ)によって開発され監督され」、その結果、ドイツ国民は今日まで「いわゆるホロコースト産業の促進とドイツだけが有罪だというコンプレックス」に苦しまされているのだそうです*34。ホッペ氏は「西洋白人キリスト教徒の男性支配の文明」を維持すべきだと考え文化保守主義を主張する点では、国家社会主義と同じ立場だと自分自身で明言しています*35。こういう主張をするホッペ氏がネオナチを含む白人至上主義者の極右に強い影響を与えているのは別に何ら驚くようなことではありません*36

外交政策に関しては、ホッペ氏は反米の権威主義的な国々に好意的で、この点で彼の恩師であるロスバードとそっくりです。ロシアとウクライナの戦争ではホッペ氏はNATO拡大に”挑発”されてロシアが戦争を起こさざるをえなかったというプーチン陰謀論的主張をそのまま採用してウクライナを執拗に攻撃しており、明らかにロシアに同情的です*37。ホッペ氏の平和主義は極めて歪んだ反米主義と分かちがたく結びついています*38。ホッペ氏が暴力を振るう国家を絶対悪のように批判しながら、特定の(よりにもよって最悪の)国家に甘かったり、民主主義者に必要なら暴力を振るって物理的に取り除いてもよいと主張していたりするのは私には理解しがたいことです。ホッペ氏の極端な反米姿勢や歴史修正主義を考えれば驚くことではありませんが、ホッペ氏はイスラエルに対しても極めて否定的です*39

このブログでも何度か取り上げているリバタリアン党の極右の派閥ミーゼス・コーカス(Mises Caucus)はホッペ氏から強く影響を受けていますが、彼らが反ユダヤ主義で暴力的なのは偶然ではありません。彼らがハリスの暗殺を大っぴらに要求したり、移民に関するデマを面白がって流したり、LGBTの方に対して暴力的脅迫を繰り返したりしているのは以前お伝えした通りですが、彼らの思想に与えたホッペ氏の影響は極めて直接的なものです。例えば、Mises Caucusの推薦するリバタリアン党大統領候補だったレクタンヴォルド(Rectenwald)氏は「物理的に取り除く」というホッペ氏の表現がお気に入りで、この表現でブリンケン国務長官の暗殺を示唆したり*40ユダヤ教は西洋のものではないからユダヤ教徒は「物理的に取り除かれるべきだ」*41とか、シオニストユダヤ教を同一視してシオニストは「物理的に取り除かれるべきだ」などと主張したり、反ユダヤ主義的な発言を繰り返していますが*42、ホッペ氏の思想から影響を受けたことを明言しています。

ホッペが民主主義を否定しているだけでなく、暴力を支持し通常理解される意味の個人の自由を軽視している思想家だというのは正当な評価です。普通、こういう思想家を排外主義の極右と呼ぶのは別に不当でも何でもありません。また、その思想に自由主義的と言える部分は殆ど皆無です。彼の主張する”自由”は、ただ単に特定の抑圧的政治体制を手の込んだ方法で正当化するだけのものに見えます。ホッペ氏の思想は共同体が暴力的に特定の文化規範を押し付けることを正当化している点で、リバタリアニズムというよりもむしろ極端なコミュニタリアニズム(共同体主義)(しかもその最悪の形態)であり、自由主義よりも遥かにファシズムに似ています。ホッペ氏が何と言おうと、彼の哲学にはそう自称しているということ以外に特に”リバタリアン”な点があるとは思えません*43。もし仮にホッペが真のリバタリアンだとしたら、私は喜んでリバタリアンという名前を返上したいと思います。

*1:ミーゼスは欠点はあっても優れた思想家だと思いますが、私はロスバードにはかなり批判的で、ホッペに関しては全く評価に値すると思っていません。それはこの2人が”過激な”無政府資本主義者だからではありません。ただ単に彼らの議論が不合理だと考えるからです(結論もそうですが、特に問題なのは議論の仕方です)。念のため誤解のないように言いますが、私は無政府資本主義者のデイヴィッド・フリードマンやピエール・ルミュー等は高く評価しています。さしあたり現在の政策をどうすべきかや現在の実現可能性はともかくとして、最終的な理想として無政府資本主義は魅力的なビジョンですし別に全く否定していません。

*2:ウクライナ戦争に関して親露派的な立場をとるホッペ氏は、親米で親イスラエルのミレイ大統領には経済政策以外の問題からも最初から極めて辛辣でした。ホッペ氏の批判は無理筋のものが多く、ミレイ大統領の業績を不当に低く評価していると思います。ミレイ大統領のいら立ちは理解できることです。ミレイ大統領はアルゼンチンの少数与党政権を率いて改革を進めているのですから、全権力を握っていて何でも思い通りにできるわけではないですし、過去の政権の失敗を白紙に戻せるわけでもありません。例えば、ミレイ大統領はアルゼンチン中銀の閉鎖を目指していますが、最初からそれは中期的な計画だと言っているわけです。今はまずインフレ抑制を優先して、為替管理のような統制も即時に撤廃せず漸進的に自由化を進めるというやり方は賢明なものです。政治的、経済的制約を考慮すればミレイ改革のスピードは極めて速いですし、リバタリアンの大統領という名に恥じないものです。ホッペ氏が主張するような無秩序な中央銀行の即時閉鎖をすればアルゼンチンペソは無価値になりハイパーインフレになるというミレイ大統領の指摘は全く当然です。

*3:ミレイ大統領がホッペ氏の同性愛者差別や陰謀論めいた思想から極めて悪い影響を受けていることは疑いありませんが、これを機会になるべくこういう人物の差別的思想とは距離を置いてほしいものです。

*4:データ上では民主化が進んだ19-20世紀の世界はそれ以前と比較して劇的に豊かになっているのですが、アプリオリな(というか単に独断的な)推論を重視するホッペ氏にはそんなことはどうでもいいのでしょう。民主主義は共産主義と同様に否定されるべき思想なのだそうです。まあ、現代社会は民主主義社会で言論の自由があるのでホッペ氏が何を書いても自由です。ホッペ氏によれば、国家の誕生以来、人類の脱文明化が進み、民主化以降、それは加速していて、政治の腐敗が進んでいるのだということですが、この先験主義的な歴史を信じたい方はどうぞご自由にそうすればいいでしょう。ホッペ氏が民主化し腐敗した米国に住み、どこかの孤島か密林の奥地の部族社会に住もうとしないのはどうしてなのか不思議でなりません。ホッペ氏の”歴史”によれば、そこはどんな国よりも繁栄しているはずだと思いますが。

*5:原文はphysically separated and expelled from society.

*6:原文はwill have to be physically removed from society.

*7: Hans-Hermann Hoppe(2001)Democracy-The God That Failed: The Economics and Politics of Monarchy, Democracy, and Natural Order,Transaction Pub, p.218. 下線による強調は引用者による。

*8:私は何が楽しくてそんな馬鹿馬鹿しい社会が必要なのか全く分かりません。これは自由な社会とは正反対のものに見えますが、自称”原理主義的”リバタリアンの方はそうは思わないのでしょう。

*9:自称原理主義リバタリアンの方々は言論の自由を錦の御旗にして、ホロコースト否定論とかヘイトスピーチをやる人たちを盛んに擁護しますが、なぜかホッペの論説を盛んに引用しておられます。全く奇妙な話です。言論の自由絶対主義者ならホッペ氏も批判したらどうなんでしょうか?

差別的思想を許容するということと自分が差別を積極的に支持するというのは全く別のことですが、特定の差別的発言の言論の自由を熱心に擁護しながら他の言論の自由に大した関心を示さない、あるいはむしろ圧力をかけることを支持する人は当然、言論の自由ではなく別のものに関心があるのだとみられて当然です。

*10:Hans-Hermann Hoppe(2001)Democracy-The God That Failed: The Economics and Politics of Monarchy, Democracy, and Natural Order,Transaction Pub, p.211.

*11: 原文はbe “physically removed,” if need be by violence.

*12:Hans-Hermann Hoppe, “Libertarianism and the Alt-Right: In Search of a Libertarian Strategy for Social Change,” Mises UK (20 Oct. 2017)( Hans-Hermann Hoppe(2018)Getting Libertarianism Right,  Ludwig von Mises Instituteに再録)。下線による強調は引用者。

*13:ホッペ主義者の皆様へ:私は間違いなくホッペ氏の意図が理解できるよう引用しているだけです。こんなことを書いたからってお願いですから”physically removed”のリストに私を載せるのはやめてください。

*14:ホッペ氏は、既存の政党の政治家は「吊るす(絞首刑にする)か、刑務所に衰弱するまでずっと入れておくか、賠償を払わせるべきだ」と書いています(Hans-Hermann Hoppe(2018)Getting Libertarianism Right,  Ludwig von Mises Institute, p.69 原文は They all should be hung, or put in jail to rot, or set to making compensation)。

*15:What the Far-Right Fascination With Pinochet Should Tell Us

*16:例えば、こちら().弁護者たちによるとこれはギャグだから問題ないのだそうですが、これが楽しめる方はどうぞ勝手に楽しんでください。私には高尚過ぎて面白さがまるでわかりません。

トランプ大統領なりホッペ氏なり自分たちの支持する人物が極めて危険な発言などをしても、それは”冗談”で”ネタ”だから問題ないなどと言い、批判を嘲って無視する一方で、自分たちの論敵については言ってもいないことを推測し、独裁者になろうとしているとか共産主義である等とか言って強く批判する方々がいますが、全く愚かしいダブルスタンダードで、とても理解できません。

*17:豊かな先進国の方が自由なライフスタイルを認め、様々な性的マイノリティに寛容ではないでしょうか?均一な生活習慣が支配的なのはどんな地域でしょうか?

*18:移民の自由や言論の自由、多様なライフスタイルを認めると、社会秩序が維持できないというホッペ氏の主張は、彼が”リバタリアンな社会秩序”と呼ぶものが人々の自発的な同意を得ることが出来ないようなもので、暴力で強制しなければならないものなのだといっているも同然です。自身の思想の説得力のなさを自分で認めているに等しいと思います。要するに、ホッペ氏の思想に通底しているのは、大衆は愚かで自分たちだけが正しい答えを知っており、それを強制する権利があるという知的思い上がりではないでしょうか。これは、人間は誤りうるものであり、自分の意見を他人に強制することはできないという謙虚さを美徳とする自由主義とは対極にある思想です。

*19:ホッペ氏自身の言葉によれば「拙著Democracy-The God That Failedでは、私は私有財産権に含まれる差別の権利を擁護するだけでなく、自由な社会を維持するためには差別は必要だとし文明化の要因として差別の重要性を説いている。」( Hans-Hermann Hoppe(2005)”My Battle With The Thought Police,” Mises Daily, April 12, 2005). ホッペ氏は、彼の著書は「差別の礼賛」であり、左翼リバタリアニズムに対する攻撃だと述べています。

*20:ちなみに、ホッペ氏はDemocracy-The God That Failedをはじめとする著作で同性愛者について偏見に満ちた発言を何度もしているので、彼が「物理的に取り除く」対象に同性愛者を含めたのはうっかりでも付随的な言及でもなく彼の哲学の本質的な部分というべきです。

*21:いったい何がどう明白なのでしょうか?

*22:Hans-Hermann Hoppe(2022), "Growing To Understand Contemporary Germany and Weep - Part I,"  LewRockwell.com 何の根拠もなしに「明白な事実」としてこのような主張を断定して書くのは「アプリオリズム」を強く主張するホッペ氏らしいことです。

*23:ホッペ氏の想定では、差別の権利を行使する資格があるのはどうやら基本的にキリスト教徒の異性愛者の白人男性に限られているようです。ホッペ氏が気にかけているのは個人の自由ではなく”文明”ですが、なんというおぞましい文明でしょうか!

*24:Hermann Hoppe(2018)Getting Libertarianism Right,  Ludwig von Mises Institute,p.53.イタリックの強調はホッペ氏自身によるもの。

*25:Hermann Hoppe(2018)Getting Libertarianism Right,  Ludwig von Mises Institute,p.30.

*26:膨大な証拠があるなら一つぐらい上げたらいいと思いますが奇妙なことです。ホッペ氏はそれでいて同時に主流派の経済学者や社会学者の研究者は国家に買収されていると主張し、その研究は信頼できないと断言しています。

*27:Hans-Hermann Hoppe, “Libertarianism and the Alt-Right: In Search of a Libertarian Strategy for Social Change,” Mises UK (20 Oct. 2017)( Hans-Hermann Hoppe(2018)Getting Libertarianism Right,  Ludwig von Mises Institute, p.90に再録).

*28:これについては以前も紹介しました。大半の移民は福祉給付を受けに来るのではなく働きに来るのであって税収増に貢献する場合も少なくありませんし、少なくとも米国では移民の流入は財政上プラスになっています(例えば以下を参照。The Fiscal Impact of Immigration in the United States | Cato at Liberty Blog )。米国等では移民の犯罪率はむしろ元からの米国市民より低いですし、大多数の移民の実証研究では移民の増加で犯罪発生率は変わらないかむしろ減少することが分かっています(例えば、Ousey, G. C., & Kubrin, C. E. (2009). Exploring the connection between immigration and violent crime rates in US cities, 1980–2000. Social problems, 56(3), 447-473. Wadsworth, T. (2010). Is immigration responsible for the crime drop? An assessment of the influence of immigration on changes in violent crime between 1990 and 2000. Social Science Quarterly, 91(2), 531-553、Ousey, G. C., & Kubrin, C. E. (2018). Immigration and crime: Assessing a contentious issue. Annual Review of Criminology, 1(1), 63-84.)。日本でも移民の増加と犯罪件数に関係は見られず、移民や観光客が大きく増加している中でも治安は改善傾向で、刑法犯認知件数は2002年から2023年までに75%減少しています。右派の間で話題になっている川口市でも傾向は全く同じで刑法犯認知件数は20年前の約4分の1です。

*29:Hans-Hermann Hoppe(1996),From Nation to Household The Middle American Illusions of Sam Francis (and Pat Buchanan),Mimeo.同様の主張はHans-Hermann Hoppe(2001)Democracy-The God That Failed: The Economics and Politics of Monarchy, Democracy, and Natural Order,Transaction Pub, p.211.等でも繰り返されています。

*30:Hans-Hermann Hoppe(2018)Getting Libertarianism Right,  Ludwig von Mises Institute, pp.102,104. ホッペ氏は自身が第一次世界大戦第二次世界大戦歴史修正主義者を支持していることを明言していますが、第二次世界大戦歴史修正主義といえばバーンズらのホロコースト否定論が有名です。ホッペ氏の師匠であるロスバードはバーンズと親交があり、彼を称賛する論考を書いたことがあります。ホッペ氏自身はホロコースト否定論については言及していませんが、「いわゆるホロコースト産業」に言及するなどナチスドイツのやったことは大したことではなかったと示唆する発言を繰り返しています。これは非常に不気味なことです。

*31:Hans-Hermann Hoppe(2020) “The Libertarian Quest for a Grand Historical Narrative.” Journal of Libertarian Studies 24 (1): 156–87.引用箇所はヒトラーを再評価する意図の文章のすぐ手前の文章です。

*32:「ドイツは壊滅的な戦争に敗れ、ドイツ国民は米国主導の組織的な再教育キャンペーン、非常に大規模な人格の洗脳を受けたのだ。私は何年もたってから気づいたのだが、それは勝者の観点からの歴史の完全に書き換えであり、本質的にドイツ人を根っからの悪人として描いたのである」(Hans-Hermann Hoppe and  Jeff  Deist(2020) ”Hoppe: The In-Depth Interview,” The Austrian, Vol. 6, No. 2, March – April 2020).

*33:例えばHoppe, Hans-Hermann.(2001)Democracy-The God That Failed: The Economics and Politics of Monarchy, Democracy, and Natural Order,Transaction Pub, p.177.

*34:Hans-Hermann Hoppe(2022), "Growing To Understand Contemporary Germany and Weep - Part I,"  LewRockwell.com

*35:Hans-Hermann Hoppe(1996),From Nation to Household The Middle American Illusions of Sam Francis (and Pat Buchanan),Mimeo.

*36:例えば、Southern Poverty Law Centerの報告書Kentucky Politician Claimed Jewish People ‘Promote White Genocide’ in 2017 Private Chat | Southern Poverty Law Centerやアトラスネットワークの正統派のリバタリアンであるTom G. Palmerによるホッペ批判の論説Hans-Hermann Hoppe and the German Extremist Nationalist Rightを参照。

*37:例えば、Growing To Understand Contemporary Germany and Weep - Part II - LewRockwell

*38:まあ、とにかく米国さえ何もしなければ世界は平和だといわんばかりの主張の是非についてはまあ特に詳しくコメントしませんが、こういう主張は日本の極左や反米極右とも親和性が高いものですね。

*39:ミレイ大統領が親ユダヤの姿勢を鮮明にしていることと、ホッペ氏のミレイ大統領への執拗な攻撃は無関係でしょうか。

ところで、ミレイ大統領は、ホッペ氏を批判し「彼は、あたかも私がすべての公的権力を握っているかのように私を批判する分析をしていますが、それは滑稽なことです」と述べています。

これに対して、ホッペ氏の見解を支持している評論家の木村貴氏はミレイ氏の発言を「彼はまるで私が公権力を握っているかのように、私を批判する分析を徹底的に行った。滑稽だ」と訳した上で、次のように批判しています。

「ミレイ氏のホッペ氏批判は意味不明だ。…もし大統領が「公権力を握って」いないとしたら、一体誰が握っているのだろうか。ミレイ氏を支援したアルゼンチンのユダヤ財閥だろうか」(リバタリアン通信: ミレイ大統領とホッペ氏の亀裂)。

木村氏のミレイ大統領の発言の翻訳の出典はLew Lochwell.comの英文記事で、原文では“The guy made a whole analysis criticizing me as if I had all the public power, it’s hilarious.”となっています。「as if I had all the public power」を「彼はまるで私が公権力を握っているかのように」と訳すのは「すべての(all)」を飛ばしており明らかに誤訳です。この文章で力点が置かれているのは全ての権力を握っていないという点ですから肝心の個所を飛ばした訳は「意味不明」で当然でしょう。ですから、木村氏の批判はご自身の誤訳に基づいたものであり全く的外れです。

仮にミレイ大統領が権力を握っていないと発言したならそれは確かに奇妙なことでしょうが、そんなことは誰も言っていません。ミレイ政権は少数与党政権で、「全ての公的権力」を握っていないのは自明ですから、ミレイ大統領の発言は極めて自然なものです。おかしな解釈の余地など何もありません(なお、スペイン語原文の問題の個所はcomo si yo tuviera la suma del poder publicoですが、意味は英語と同じで、ミレイ大統領の発言は私が全権を握っていると誤解した批判は滑稽だというものです)。

ところで、何の文脈も必要もないのにやたらにユダヤ人を持ち出し、ユダヤ人が政治を操っているといいたがるのは常識的に言って反ユダヤ主義陰謀論と言われても仕方ないのではないでしょうか。ちなみに、木村氏の元記事では「ユダヤ財閥」にはリンクが張ってありますが、リンク先はThe Unz Review(ホロコースト否定論者の雑誌)のEric Striker(英国のネオナチ政党の幹部)の記事です。随分と立派な典拠です。

*40:ついでながらブリンケン国務長官ユダヤ系政治家です。

*41:この投稿は後に批判を受けて削除したものの、ほぼ同一の内容を再度投稿。

*42:こう書くと「柿埜はイスラエルの対パレスチナ政策を支持するのか?」とかいう的外れもいいところの批判をする人がいるかもしれませんが、誰もそんなことを言っていません。どんな意見であれ意見を言ったというだけで、あるいはそうした信条を持っているというだけで、物理的に取り除かれるべきだなんて野蛮極まりないしおかしくありませんかと言いたいだけです。「イスラエル政府がパレスチナ人に暴力を振るっているんだ!」とか言いながら、だからユダヤ人に暴力を振るっていいことになるなんて倒錯した考え方です。米国でヘイトクライムの犠牲者が一番多いマイノリティはユダヤ系です(FBIヘイトクライム統計)。他に黒人も被害が大きいグループですが、人口一人当たりでみると圧倒的に一番狙われることが多いマイノリティはユダヤ系であると言えます。ユダヤ人は所得階層は高い傾向はありますが差別を受けるマイノリティです。様々な考え方のユダヤ教徒シオニストがいるのに十把一絡げに憎悪を煽動するのは最悪です。レクタンヴォルドの一連の投稿はユダヤ系の住民への暴力を煽動しているという以外に言いようがありませんし非難されて当然です。

*43:実際、彼自身もある程度認めているように見えますが(Hans-Hermann Hoppe(2018)Getting Libertarianism Right,  Ludwig von Mises Institute,pp.102,106, 111)、彼の歴史修正主義や右翼的な排外主義は元々のミーゼスのオーストリア学派リバタリアン理論とは異質のもので、それらに接ぎ木された要素に過ぎません。




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