Amazonの期間限定ポイントが消滅しかかっていたことと、ダイレクトリールいじりをはじめたことが相まって、以前から気になっていたこの本を読んでみることにした。
感想としては、思っていたよりもかなり良かった。 400ページほどあるけど文字のサイズは幸いにしてそこまで小さくはないのと、写真も多いので、そこまで読みづらくはなかった。
何が良かったのか考えてみると、おそらく「自分がやっている釣りが何なのか」が以前よりも分かるようになった、というところが良かったのだと思う。 これには、主に19世紀後半~20世紀中盤の歴史・文化的な側面と、技術的な側面が含まれる。
理解が曖昧だった部分がある程度分かるようになったことで、以前よりも深い楽しみを見出だせるようになったし、精度の高い判断ができるようになった、ような気がする。
自分の印象に残った点としては、以下のような点があった。
- 19世紀の英国におけるスポーツの概念
- P21のあたりに記述あり
- 【世界で最も優雅な暇つぶし】イギリス貴族の「金」「暇」「社交」が生み出したスポーツ文化(小林 章夫) | 現代新書 | 講談社
- 4. 近代スポーツを生んだ英国の階級文化 スポーツの始まり - スポーツの歴史を知る スポーツとは - スポーツ 歴史の検証 - 知る学ぶ - 笹川スポーツ財団
- 19世紀イギリスにおける「スポーツマンシップ」の語義
- よく「フライフィッシングは貴族の釣り」などと見聞きすることがある印象だけど、その意味がもう少し分かった
- 多分、欧米の釣りに対する姿勢をもっと理解しようとするなら、狩猟文化の理解も必要になりそう
- ゲームフィッシュとコースフィッシュの概念
- P189のあたりに記述あり
- Coarse fishing - Wikipedia
- 米国でのバスのルアー釣りもゲームフィッシュである、という動きが、現代日本のルアー釣りにおける特定魚種の特別扱いに何か近いものを感じないでもなかった
- ブラックバス釣りの歴史
- 第二部全体をかけて記述あり
- 基本的に現代日本のルアー釣りは米国でのバス釣りの文脈を色濃く引き継いでいると思われるので、興味深かった
- イミテーション学派とプレゼンテーション学派とメタ・イミテーショニズム
- P138、P169、P354のあたりに記述あり
米国的文脈におけるルアーの本質は「何にも似てないが、何にでも似ている」点にある
- 本著の独自用語?どれくらい一般的な用語なのか不明
- ジェームズ・ヘドンの有名な名言はよく見聞きするけど、その意図するところ(あるいは意図から漏れていたところ)をもう一歩踏み込んで理解できた気がする
- 現代のルアーが何なのか、ということを整理するにあたって非常に重要な考え方だと思った
- フィッシュウィンドウとボブの釣り
- P150のあたりに記述あり
- 楽しい!釣りの自然科学(第1回 逃がした魚は大きい!)|ANA
- 研究ノート07 fish-window
渓流では、その窓にいきなり流下する虫やドライフライ(の空中にある部分)が現れるので、魚は慌てて飛びつくわけです。 水中を流れてくるニンフなどは、かなり手前から見えているのでゆっくり対応できます。
- 多分本の中には登場してなかったけど、この観点も重要そう
- サイトで重要なフィッシュアイの角度 バス釣り
- FLYRODDING FOR BASS
- トップウォータープラグの作り出す波や気泡がフィッシュウィンドウを突き破って光を届けることでアピールとなるといった話や、ルアーを空中に吊るすことでフィッシュウィンドウに広く視認させアピールすることができる、といった話が印象的だった
- フライフィッシングなどにおけるストーキングや、場合によってはキャストの軌道やスピードにまで気を使ったプレゼンテーションの重要性の説明にもなっている
- フライフィッシャーとそれ以外の対比
- 全体に記述があるが、特にP359のあたりに記述あり
- ルアーとリールの歴史において通底していたテーマのようだが、個人的には差別的な物の見方をする主体が変わりつつあるだけで今でもどこにでも見られる構図に見えた点が印象的だった
- スピニングリール以前と以後
- P359のあたりに記述あり
- 特に印象に残ったのは、誰でも簡単に(特に軽い)仕掛けを投射できるようになったことで釣り人が増え釣獲圧が高まり自然資源が消滅してしまうという議論
- これはオカッパリにおいては特に実際に起きていることだと思う。海釣りにおいて釣り場が減っていることも同じ話の流れにある。時計の針を戻すことはできないので、その上で自分はどうするのか?ということを考えさせられた
- 「アングラー」の由来
- 「アングラー」の意味って?フィッシャーマンとの違いは?: くさふぐFishing
- どこで記述があったか忘れてしまったけど、なんとなく角度のangleからきているのかと思っていたので印象に残った
基本的に英米の歴史に焦点を当てているので、当たり前だけど日本の釣りの歴史を把握するには不十分。 自分が把握している限りでは、
は日本の釣りの歴史を把握するのに役立ちそう(未読)だけど、今の釣りに近い時代の歴史が欠落するのでやや飛躍が残りそう。 ただ、おそらく伝統釣法以外のルアー釣りの基本はおおむね今回読んだ本の範疇に収まりそうなので、あとはここ4~50年くらいで欧米のルアー釣りが日本の個別の釣りにどう応用されていったのかというところを調べれば大体は満足できるかも知れない(大雑把に近代の日本のルアー釣りの全体をまとめた本があれば、それはそれで知りたい。釣りキチ三平とかになるのかも?)。
おそらく今回読んだ本に含まれていない重要な技術的進歩としては、カーボン繊維とPEラインの登場があるはず。 他にも、リールのハイギア化や電子化も含まれるかも知れない。
また、「ルアー&リール 進化の軌跡」というサブタイトルなのでロッドの話がどれくらい出てくるのだろう?と思っていたけど、スチールロッドやグラス繊維の話など必要な話は含まれているように感じたので、その点も安心して良さそうだった。
この手の話に興味があるルアーフィッシャーにおすすめ。