ルシア・ベルリンの邦訳短編集の3冊目。本書には作家の長男、マーク・ベルリンが短い文章を寄せている。本書に収録されたいくつもの短編の登場人物のモデルになった人物のひとりだ。その文章のなかで、ルシア・ベルリンの作品がもつタッチ、というか空気を表現するものとしてブニュエルやタランティーノの名前があげられていた。たしかにジョン・ヒューストンやエヴァ・ガードナー、エリザベス・テイラーが実名で登場する「楽園の夕べ」や、サスペンス的な急展開が見られる「幻の船」は、ブニュエル meets タランティーノ的な形容がしっくりくる。ここにカサヴェテスを加えてもいいだろう。同じ男性と結婚歴のあるアル中の女性同士の関係性を描く「妻たち」。軽口を叩きながらお互いがくぐり抜けてきた過去の/今も続く痛みを共有するシーンからは、ジーナ・ローランズの演技のイメージが立ち上がってくる。前2冊と比べるとどうだろう、正直なところ、全部が全部物語に入り込める内容ではなかったのだが、いくつかのものは泣きもするし、笑いもしてとても楽しめた。