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青島アジアゲルマニスト会議に参加してきた

 

アジアゲルマニスト会議に参加した

8月25日から29日まで、アジアゲルマニスト会議に参加するため、中国の青島に滞在していました。今回は、どういう経緯でこの学会で発表することになったのか、中国旅行の準備、そして当日の発表や中国滞在時の様子などをまとめていきます。

初日に参加者全員で集合写真を撮りました。(私は最後列でちょうど「学学」の下あたりにいます)

けっこう長くなってしまったので、目次をつけました。動画を見ると手っ取り早く中国の雰囲気がわかるかと思います。

AGTとは

アジアゲルマニスト会議というのは、30年くらい前に始まった、日中韓のゲルマニスト(ドイツ語学・文学・語学教育の研究者)が集まって研究発表をする学会です。3年に一度の周期で開催されていましたが、2019年の札幌を最後にコロナ禍で延期が続き、今年5年ぶりの開催となったのでした。

私は前回の札幌大会に発表者ではなく、来聴者として参加し(そういう人は出版社の方を除いてほとんどいなかったようでした)、とても有意義な学会だしぜひ次は発表しようと決めたのでした。

 

英語じゃなくてドイツ語で発表してみたい

語学学校以外の留学経験がない私は、これまでドイツ語による研究発表をしたことがありませんでした。教員公募のときも、某大学の面接では、なぜドイツ語による業績がないのですか?と聞かれ、「ないものはないんだからしょうがねーだろ」と思いながら、何も言い返せず苦しい思いをしたものでした

その後知り合いからの誘いや、自分で申し込んだりで、英語による発表は何回か経験しましたが、そもそも専門ではない英語では、文章を書くことも質疑応答することもとてもたいへんでした。せめてドイツ語ならもうちょっとちゃんとできるのに、と思うことが何度もありました。やはり私はドイツ文学研究者なので、ドイツ語で原稿を書いて、ドイツ語で議論をする場に参加したいと、去年の春に英語の発表をしたときに強く思ったのでした。

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↑5年前の英語での学会発表。英語は苦労しましたが、すごく楽しかったです。

 

何について発表するか?

今年の初め頃に、日本独文学会のホームページに、アジアゲルマニスト会議の発表者募集のお知らせが掲示され、私もさっそく発表のアイディアを練り始めました。

大会全体のテーマが、Technik- Gesellschaft- Kultur 技術・社会・文化ということで、自分の関心を持っている領域で、何かしら技術っぽいことや現代社会の問題などと関連付けられそうなことを探しました。

私の大きな関心としては、「記憶」というテーマがありました。(じつは卒業論文のころから継続している問題意識でした)。人間の記憶を近代の知識人はどのように考えていたのか?記憶と夢や無意識の関係、そして人間の死後に記憶はどうなると考えられていたのか、そういったことは今参加している科研グループのテーマでもありました。

そこで、自分の持ちネタである、フロイトの『夢解釈』、カール・デュ・プレルの心霊主義的な人間の魂についての見解、そしてベンヤミンにおける記憶をめぐる思考などを、昨今のAI技術に関連づけて論じるという方針を固め、発表の要旨を書きました。

 

中国渡航の準備

中国に渡航するにはビザが必要です。これが中国行きの大きな障壁でした。

しかし、それ以前に大きな問題は、私のパスポートがコロナ禍の間(2020年末)に失効していたということでした。5月に本籍がある仙台市から戸籍を取り寄せ、大阪城近くのパスポートセンターに発行の申請をして、5月末頃に新しいパスポートを入手しました。これだけでもひと仕事でしたが、渡航準備の入口に立っただけにすぎません。

今回は学会発表への参加が目的なので、学会事務局に招待状を発行してもらい、さらにホテルの予約表、航空機の発券控えなどとともに、ウェブで入力したビザ発行申込書を持参して、心斎橋の中国ビザセンターに行きました。ビザ取得に係る手続きで、一番大変だったのが、申込書のウェブ入力でした。自分の妻や親の生年月日や現住所、上司についての情報(学部長の名前を書きました)など、事細かくあれこれ聞かれるのでほんとうにうんざりしました。

なにより腹立たしかったのは、家族についての項目で、いない場合は「該当なし」を選択するのですが、理由を書かされたことです。父は6年前に他界しているので該当なしを選択し、理由は「死別」と記入しました。また子供についても「該当なし」を選択しましたが、これまた理由を問われましたが、日本語では入力できず、漢字または英語でないといけないみたいなので、「We have no child」と記入しました。

ビザセンターでは小一時間待たされましたが、書類を提出してしまえばあとはスムーズにビザを取得することができました。

 

不安を抱きながら中国に到着

こうして渡航の準備をちゃくちゃくと進めていましたが、学会側からの連絡はほとんどありませんでした。プログラムも通知されていないので、自分がいつどのくらいの時間で発表するのかすら分かっていませんでした。ようやく3日前ごろに、iPadのChromeでならプログラムがダウンロードできると気づいたので、自分がいつ発表するのかが分かりました。

直前まであまり情報が公開されないのでほんとうにこれで中国に行けるのかと少し心配でしたが、前日に学会事務局から、当日に学生が空港に迎えに来るとの連絡がありました(到着便の時間によっては学生による送迎がなかった人もけっこういました)。このメールを見て、安心して青島に向かうことができました。

動画:青島に行ってみた

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動画でも車窓の風景を撮っていますが、空港からホテルまでの高速道路の風景は、日本とだいぶ違って、むしろヨーロッパのように広々としていました。驚いたのは、電気自動車の普及率です。真新しい電気自動車と、マッドマックスに出てくるようなボロボロのトラックなどが並走する様子はなんだか奇妙に感じられました。

 

中国の異世界っぽさ

一日目は学会参加者の皆さんとホテルのディナーバイキングを食べたのですが、テーブルに集った日本、ドイツ、インドネシアなどからの参加者と話題になったのは、中国で独自に発達している電子決済文化への驚きでした。ほぼすべての支払はAlipayやWeChatPayなど電子決済アプリを使用します(使ってみて分かりましたが、PayPayに近い仕組みです)。現金やクレジットカードは使えないことが多いです。最初にホテルで宿泊料金を支払いましたが、一枚目に出したVISAカードは拒否され、二枚目に使った別のカードではうまくいきました。

市内を散策すると、どの商店や飲食店、そして小さな露店にまで、電子決済用のQRコードが掲げられています。

海鮮串焼きの屋台。店主のとなりにQRが見えます。

海岸近くにあった、かわいらしい商店

ここにもやはり2種類のアプリ用のQRが見えます。

色とりどりなビール屋さん(ジュース割りなどいろいろなフレーバーがあるようです)にも、AlipayとWeChatPayのQRがあります。

そして、だれもがスマホを駆使して電子決済をするためには、当然バッテリーが必要です。市内のいろいろなお店には、レンタル用のモバイルバッテリーが置いてありました。

揚げパンを売る露店の傍らに2つの機械がありました。これがモバイルバッテリーです。

どういう仕組で充電器を借りるのかよくわからなかったのですが、こちらのページに詳しい解説がありました。

note.com

いっぽうで、中国ではホテルの無線LANなどでネットに接続しても、Googleやフェイスブック、Xなどのサービスはいっさい使えません。中国語でわからないところがあるからと、気軽にGoogle検索するなんてことはできません。地図を調べるときもGoogleマップではほとんど情報が出てきません。

仕方がないので私は事前に購入したeSIMカードをスマホに入れて、パソコンを使うときもすべて自分のiPhoneからテザリングで使用しました。この方法ならGoogleやXは問題なく使えるのですが、なぜかChatGPTだけはまったく使えませんでした(自分の発表のために質疑応答のサンプル文を作ってもらおうと思っていたのにできませんでした)。

私はこういう中国独自の事情をある程度予習してきたので、スマホにeSimを入れ、AlipayやWeChatPay、そして地図アプリの百度地図も入れてきました。しかしこれらの中国アプリは通知や説明がほぼ中国語でしか表示されないので、うまく使えなくても何が問題なのかさっぱりわからず、結局あまり使いこなすことはできませんでした。

今回の学会のテーマが、技術となっているので私もAIの話しを少ししましたが、日本など西側諸国と大きくことなる、いわば〈デジタル鎖国〉あるいは〈デジタル異世界〉のような中国の状況を見ると、学会で議論しようにも前提が違いすぎるのではないかと心配になりました。

動画:夜の青島ビーチを散歩

真っ暗な夜の海水浴場にたくさん人が集まっている様子はなんとも言えない異世界感がありました。

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やたら豪華な発表会場

学会発表や講演、討論等はすべて宿泊しているホテルの中で行われていました。食事も朝昼晩すべてホテルで食べます。そのため私は4日間散歩と夜のビール屋さん以外まったく外出しなかったし、ほぼお金も使いませんでした。

初日は、日中韓、そしてドイツの先生方による講演を聞きました。

日本独文学会会長で九州大学教授小黒康正先生の講演です。トーマス・マン『魔の山』について、NHK一〇〇分で名著へのご出演についても言及されていました。

一日目の夜は講演会が行われた大広間で、青島ビールとともにディナーをいただきました。

カフェパウゼの時間に食べたケーキとフルーツです。ケーキの表面に学会のロゴがプリントしてありました。

ホテルに泊まった4日間、三食ともホテル内で中華バイキングを食べました。おいしくて満足できました。



二日目は自分の発表

最初に書いたように、自分の持ち時間がどのくらいなのかも知らないまま原稿を用意していたので、会場で詳細なプログラムをもらってから、ホテルの部屋で原稿の手直しをしました。

しかし、プログラムをもらって学会初日が始まってもなお、自分がどういう部屋で発表をすることになるのか詳しいことは分かっていませんでした。

それで、私が発表する分科会の会場がこちらです。一日目に使った大きな部屋を半分に区切った大きさの部屋です。それでもかなり広いし、何よりモニタがでかいです。

こんな具合に名札と水と筆記用具が用意されていました。私は最近どこの学会でもやってるように、グッドノートとWordで発表するつもりでしたが、会場に着いてやっと、PPTじゃないとダメらしいとわかりました。

お昼休みを早めに切り上げて、なんとか引用と見出しばかりのスライドを仕上げ、自分の発表をしました。

フロイト『夢解釈』に出てくる、叔父と友人の顔が重なって現れてくる夢の話をしています。

質疑応答では、「この人のドイツ語わかりにくいし、できたら手を上げて欲しくないな」と思っていた二人の先生たちに質問を受け、席と演壇が離れていたこともあってあまり聞き取れず、なんかむりやりな回答をしてお茶を濁しました。ちょっと残念だったので、次はもう少ししっかり議論ができるようにしたいと思いました。

 

打ち上げにビールを飲む

三日目の終わりには、発表した他の日本人とともにビールを飲みに行きました。

海水浴場の近くに、飲食店が集まったビルがあり、その中にビールの量り売りスタンドがありました。

500mlのカップで18から25人民元(400〜600円くらい)と手頃な値段でしたが、美味しいビールが飲めました。ただ、ホテルでも外のビール屋さんでも、あまりキンキンに冷えてなくて、日本のように冷たいビールは好きじゃないのかなと思いました。

四日目は歴史地区を散策

動画:四日目朝の散歩

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とても天気がいい朝だったので、ホテルの前の海岸を散歩しました。

四日目は午前中に若手研究者によるディスカッションがありました。

みなさん私より若い人ばかりでしょうが、すごく優秀な方ばかりで、勉強になりました。

 

お昼を食べた後、バスに乗って青島のドイツ帝国時代に作られた町並みを見学しました。

動画:青島歴史地区を歩く

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夕方のエクスカージョンがとても暑かったので、夜はふたたびビールを飲みに出かけました。現地の人がしているように、ビニール袋でビールをテイクアウトしてストローで飲んでみると、思ったよりも違和感なく飲めました。アイスコーヒーよりもはるかに紙ストローとの相性がいいのではないかとすら思いました。

五日目はホテルを出て、夕方のフライトまで一人で街歩きを楽しみ動画をたくさん撮るのだと思っていたのですが、夜中に私が乗る飛行機が欠航するとのメールが届き、予定がすべて変更になりました。



やっとの思いで青島を脱出する

朝食会場にいた他大学の先生から、阪大院を修了後青島で働いている日本語のできる方(王さん)を紹介してもらい、彼の手助けによって何とか代わりの航空券を入手しました。もともとは関空への直通便を買っていましたが、もう関西行きのチケットはなかったので、仁川を経由し、成田へ向かうルートとなりました。時間がなかったので夜逃げのようにホテルをチェックアウトし、タクシーで空港に向かいました。

いちばんたいへんだったのが、このタクシーでした。300元かかることは事前に分かっていたので、すぐにアプリで決済しようとしましたが、なぜかエラーが出てしまい払えません。Alipayもwechat payも同様にダメです。当然クレジットカード払いもできないし、人民元はそもそも両替していませんでした。一万円を渡そうとしましたが、運転手さんに受け取りを拒否されてしまいました。空港まであと半分くらいのところで、車を止められてしまい、運転手さんはぶち切れてわいわい騒いでいます。これはまずいと思っていたところで、王さんの電話番号をもらっていたことを思い出し、彼の助けで何とかタクシー運賃を支払うことができました。ネットの情報を鵜呑みにして現金をまったく持っていなかったのが一番の失敗でした。いざというときのためにある程度の人民元は両替しておくべきでした。

 

青島空港でチェックインすると、今度は仁川の乗り換えはとても時間がかかるので、とにかく急いで移動しろと何度も念を押されました。それで青島からの飛行機では、なかば中腰でいつでも走り出せるような気持ちで過ごしました。仁川について、大急ぎでターミナル間を移動し、成田行きの搭乗口にたどり着くと、予定よりも一時間くらい早かったことがわかりました。ここでようやく一息ついて空港のコンビニでお昼を買って食べました。Apple Payが使えることや、空港のWi-FiでGoogleもXも使えることに感動しました。

 

成田空港についたのは、夜の8時頃でした。暑いけど湿度の低かった青島と違って、むわっとする湿気と雨で、日本に戻ってきたのだと実感しました。

韓国から予約した東横インにバスで移動し、一泊しました。このホテルは安い割にとても静かで快適でした。何かあったらまた利用したいと思いました。

翌朝ホテルの朝食を食べ、成田空港第三ターミナルからジェットスター航空で関空に戻りました。台風が近づいているとはいえ、天気は良く、いったい昨日の騒ぎはなんだったのかとバカバカしく思えました。

お昼過ぎに自宅に戻り、ブルーちゃんをひざのうえに乗せると、やっと日常に戻ってきたことを実感できました。

動画:青島からの帰国

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中国って思ったより普通の国だし、また旅行に行きたい

行くまでの手続きの煩雑さや、日本に入ってくる情報から、どうしても中国にたいしてネガティブな感情を抱いてしまいがちでしたが、じっさい行ってみると、日本と同じアジアなので共通する部分(安心して食べられる食事、トイレが多いしタダ)などがあって、言葉で苦労する面はあったけれど、思ったより旅行はしやすいと感じました。

今回は学会会場に缶詰めで、ほとんど市内を歩く機会がなかったのですが、いつかまた青島でも、ほかの街でも中国を旅行したいと強く思いました。

それから、アジアゲルマニスト会議は次も必ず参加します。次は韓国で三年後ですから、いまからネタを用意しておこうと思います。

 




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