関西のどの大学にまだドイツ語の専任ポストが残っているのか?
私が京大の大学院に入ってそろそろ四半世紀、そして学位を取得し今の職場に来てからすでに10年が過ぎています。この間、学会の役員などを何度か担当してきましたが、やはり気になるのは、どの大学でもドイツ語の専任教員ポストが次々削減されていることです。もう専任教員がいなくなってしまったという大学も少なくありません。
今、ドイツ語のポストってどこの大学にまだ残っているのでしょうか?
とりあえず自分の把握できる関西に限ってちょっと調べてまとめました。
ほんとうは2000年ごろあるいはもっと以前と比較してどのくらい人数が変わったのかも分かればよかったのですが、人数の変動については自分で見た範囲のみとなります。
1)専門のコース(ドイツ語ドイツ文学専攻やヨーロッパ文化専攻など)がある大学
京都大学 文学部2 総合人間学部6 国際高等教育院1 計9人
大阪大学 文学部3 言語文化専攻(旧教養部)10 サイバーメディア2 外国語学部6 計21人
神戸大学 文学部2 国際人間科学部6 国際コミュ2 計10人
大阪公立大学 文学部4 国際基幹教育機構2 計6人
京都府立大学 2
奈良女子大学 2
三重大学 4
関西大学 文学部3 外国語学部2 計5人
京都外国語大学 7
京都産業大学 4
同志社大学 7
関西学院大学 文学部5 その他5くらい? 計10人
天理大学 2
*阪大、神大、三重大などは人の出入りが頻繁なので、HP上と実人数に差があるかもしれません。
こうして列挙してみるとまだまだ専門のコースがある大学が数多くあるように見えます。しかし大阪大学に大阪外国語大学が吸収されたり、大阪市立大と大阪府立大が合併するなど、統廃合もあれば、ポストが著しく減っている大学もあります。
国公立大学を比較すると、やはり大阪大学はまだまだ人数が多いですね。京大は私が入った頃は総合人間学部(人間・環境学研究科)だけでも15人くらいの先生がいましたが、在籍していた12年間で半分以下に減りました。かつて非常勤で通っていた神戸大は、国際文化学部にたくさん専任教員がいる印象がありましたが、それでもだいぶ減っているようです。
2)専門のコースはないが教員が複数在籍している大学
立命館大学 6?(特任教員が2名くらいいたような)
龍谷大学 4
近畿大学 5 法、総合社会、文芸、経営、理工に一人ずつ
大阪教育大学 2
神戸市立外国語大学 2
立命館大学も以前は10名以上ドイツ語の先生がいましたが、今は文学部に1名と他学部に3名、特任教員が2名ほどになっています。
妻の母校である大阪教育大学は、以前はゼロ免課程としてドイツ語やフランス語を専門的に学ぶコースがありましたが、現在は無くなっているそうです。
私の勤務校、近畿大学は私が入ったときに6名から5名に減り、現在は法、経営、文芸、理工、総合社会の各学部に一名ずつ在籍しています。
東京でも早稲田、慶応、明治、中央など大規模な私学では文学部以外の学部にもドイツ語教員が所属しています。(しかもこれらの大学では各学部に複数のドイツ語教員がいます)。しかし関西の私学では、そのような教養担当のドイツ語教員ポストが残っているのは、立命館、関学、龍谷、近畿などわずかな大学だけだし、いくつかの学部に一人ずついるだけです。
私自身は、自分のような研究指導はせず教養の語学と講義のみを担当するという立場は非常に気楽で仕事がしやすいと思っているのですが、同様のポストは今後はおそらくほとんどの大学で消滅せざるをえないでしょう。
3)専任教員は一人だけの大学
滋賀県立大学
和歌山大学
大谷大学
京都女子大学
大阪学院大学
大阪経済大学
大阪産業大学
京都薬科大学
大阪医科薬科大学
関西外国語大学
阪南大学
桃山学院大学
甲南大学
大手前大学
かつてはドイツ文学のコースがあった甲南大学や大谷大学もいまや教員一人になってしまいました。友人が勤める京都女子大学はドイツ語俳句コンテストを毎年実施していましたが、ネイティブ教員がいなくなってしまったため今後の運営が心配です。(追記:京都女子大は2025年度からネイティブ教員が一名入りました)
京都薬科大学、大阪経済大学などは最近欠員補充を行っていますが、おそらくここに挙げた大学のいくつかは、今勤めている先生が定年を迎えたら、ドイツ語ポストが消滅することになるでしょう。
最近までドイツ語教員がいた大学
神戸薬科大学 一昨年までヘッセを専門とする先生がおられました。10年くらい前まではホフマンスタールやリルケを研究していた先生もいました。
追手門学院大学 数年前までいた先生が京大出身だったため、友人や後輩が非常勤で教えていました。今はどうなっているのでしょう。
大阪商業大学 10年くらい前には2人の先生がいましたが、定年退職後の補充はありませんでした。
いま挙げた3校のほかにも、当然いろいろな大学がありますが、とりわけ医科大学、高専、教育学部などでポストの削減そして消滅が目立ちます。かつては京都府立医大に山本尤先生、奈良県立医大に友田和秀先生がおられたように医学部でもご活躍の先生がいました。(ちなみに近大医学部では7、8年前に第二外国語がなくなり、非常勤の先生が担当していた医学部の授業も消滅しました。医学部=ドイツ語というイメージはとうに昔のものとなっています)。
国公立もピンチだが、私学でもポストが減ってる
大学院生のころの学会誌を見ると、会員名簿に掲載された各大学の教員数に驚きます。

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独文学会京都支部で発行している『Germanistik Kyoto』には毎号会員名簿が掲載されています。大学ごとに分けて、会員名が記載されていますが、現在からは信じられないほどたくさんの名前が並んでいる大学もあります。
すでに述べたようにかつて京大には合計15人以上いたし、立命館、同志社も各10名ほどの教員がいました。現在は独文学会に入っていない(独語独文学以外を専門とする先生も当然たくさんいます)教員も多いのですが、それを考慮に入れても、大規模国立大や私立大学で著しくポストが減っていることが分かります。
自分の実感としても、10年前に阪神ドイツ文学会に初めて顔を出すようになったころは、ほとんどなじみのない大学に勤める先生方がたくさんいることに驚きました。こんな大学にもドイツ語のポストがあるのかと思いましたが、そのような小規模大学のポストはこの10年でほぼ消滅しました。
それから、関西で学会の役員会や学会後の飲み会などに参加すると、自分以外まわりはみんな国公立大学の先生ばかりということがけっこうあります。教員公募の数じたいも、関西に限れば国公立大学の方が多いし、そのため学会に参加したり、役員になったりするような若手、中堅の教員は国公立大学の人ばかりになってしまうのでしょう。
専任教員がいないとドイツ語の授業はなくなるのか?
もちろん専任ポストが消滅したからってドイツ語の授業が即なくなるということはないでしょう。
専任教員がいない大学で非常勤でドイツ語を教えている知人もたくさんいます。
しかしただでさえ不人気なドイツ語で、専任教員もいないとなると、それならばもう授業もやらなくていいか、とクラスが閉鎖されることにもなりかねないでしょう。
専任ポストが消滅しないように私たちには具体的に何ができるでしょうか。これはほんとうに難しい問題だし、他の第二外国語にくらべれば、相対的にドイツ語はまだまだ恵まれているほうなのかもしれません。(最近人気がある韓国語、スペイン語は専任ポストが圧倒的に少ないし、ドイツ語と同じくらい不人気なフランス語はもともとポストが限られていました)。
いまや望んでドイツ語を履修するのではなく、(韓国語や中国語がよかったのに)抽選で漏れてしかたなく取るのがドイツ語という位置づけになりつつありますが、少なくとも私としては、履修した学生たちにがっかりさせないような授業をしていくほかないと思っています。