
芝木好子 著「湯葉・隅田川・丸の内八号館」(講談社文庫)を読みました。
このブログを読んで頂いている方々には、さんざんSFなどを中心に勧めておきながら、最近自分が読んでいるのは純文学やら古典だったりしています… 😁
純文学作家、芝木好子の「京の小袖」も少し前に紹介したばかりです。⬇️
その印象が非常に良かったので、2冊目の紹介です。
芝木好子の著作は多くありますが、この「湯葉・隅田川・丸の内八号館」 は代表作のひとつと言われています。
(ひとつと書きましたが、実際には連作の中編三部作です)
明治時代、没落した幕臣の娘が神田須田町の湯葉商に養女にやられ、養父を助けて店を盛り立てていく「湯葉」。
「湯葉」の主人公の娘が、浅草の呉服問屋に嫁ぎ、女学校に通うその娘(「湯葉」の主人公の孫娘にあたる)の視点で、呉服問屋を営む父の事が主に描かれる「隅田川」。
時代は昭和6年からで、世界大恐慌から満州事変の時代。
そして、その孫娘が学校も終わり、丸の内の会社に就職して3年後の、23歳の年からが本人の視点で描かれる「丸の内八号館」。
時代は、第二次世界大戦直前の昭和14年から始まります。
著者は大正3年の生まれで、「隅田川」「丸の内八号館」の主人公である孫娘とほぼ同い年であり、巻末にある「年譜」をよく読むと、主人公の生い立ちと重なる部分も多く見受けられます。
自伝そのものではないのでしょうが、自伝的要素はかなり持っている小説なのだろうなと容易に想像できます。
ミステリーやSFのように、小説内容にドラマチックな展開がそれほどあるわけでも無いのに(ある程度はありますが)、なぜ好んで読んでしまうのだろうと考えてみました。
まずは、文章が美しいことかなと。そしてそれぞれの時代の日常が生き生きと描かれていて、人物の個性が際立っていることにも魅力を感じます。
時代も、士族が没落した明治時代、不況に苦しんだ昭和初期と、それに続く戦争の気配が迫りつつある昭和10年代。
おそらく著者の祖母も、母も、当然本人も、本当に様々な苦労をしながら激動の時代を生き抜いてきたのであろう、ということがしみじみと感じられます。
時代の大きなうねりの中、東京の下町での生活が鮮やかに描き出されています。
読みながらひとつ思ったのは、こういう少し古い小説(「湯葉・隅田川」が昭和36年、「丸の内八号館」が昭和37年発表)を読むと、自分の教養の無さを突き付けられるような気がしたことでした。
まず、読めない漢字や知らない表現が頻繁に出てきます。また「隅田川」では呉服問屋の話が中心になるので、和装や染物、日本の伝統色など、こんなにも知らない事があるのかと呆然としてしまいます。
幸い、電子書籍で読んでいるので、キーワードをタップすることで辞書が起動して読み方や内容を教えてはくれますが。それでもよくわからずにネットで調べたりすることも多々ありました。
とはいえ、それも面倒ながらも楽しい作業ではありましたが…。
この歳になっても、もっと教養を身につけたいものだなあ、と思わされる一冊でした。
前回の「京の小袖」の時にも書きましたが、SFやミステリーが大好きとはいえ、異星人やシリアルキラーのお相手にちょっとお疲れ気味の、そこのあなた!
180度逆方向のこんな小説も、たまには良いかもしれません。
お勧めします! 😃