センター試験はもう終わりましたよお爺さん
平成1桁生まれガチジジイの皆様お元気でしょうか。
2021年にセンター試験が共通テストに改題されてから5年経った。それは単なる名称変更ではもちろんなく、以下のような内容の大きな変化を伴ってもいる。
大学入試センターによる公式見解としては、主に知識や記憶を問うていたセンター試験に対して、共通テストでは思考や表現について深く問う差分があることになっている。これによってパターン解法では対応できない難題が増えると共に、なんかそういうお題目とは特に関係なくシンプルな難化及び長大化が進んでいるようでもある。共通テストは、かつてのセンター試験とは難易度の次元がまったく異なります。
— 灘・京大医卒/元鉄緑講師が塾長のメジュソン (@matsumoto_nada) 2026年1月19日
そのため、保護者の方が「9割取って当たり前」といった90年代の感覚で評価してしまうのは、大きな誤解です。
特に今年の共通テストで8割を取れているのであれば、これは昔のセンター試験で言えば確実に9割相当の成績です。…
そんな激変した環境をセンター世代の我々もきっちり把握し、いつ大学生と会話しても大丈夫なようにジェネレーションギャップに備えていきましょう。
共通テストを解いてみよう
大抵の若者文化には複雑なコンテクストが付き纏っていて部外者からは外延が確定し難いが、共通テストは幸いにもそのものが各新聞社サイトに掲載されている。
皆もできそうな科目だけでいいから時間を計ってやってみよう。ここでやるやつはまだ舞える!
www.nikkei.com俺は「数学Ⅰ、数学A」「数学Ⅱ、数学B、数学C」「国語(現代文のみ)」「情報」の四つを解いてみた(今でも一定解けて出題意図を味わう余裕がありそうな科目はこれらくらいしかなかった)。ちなみに仕事がデータサイエンティストなので社会に出てからも数学と情報はずっと触り続けている。
結果は以下。
| 科目 | 得点 |
|---|---|
| 数学Ⅰ・数学A | 79 / 100 |
| 数学Ⅱ・数学B・数学C | 100 / 100 |
| 国語(現代文のみ) | 75 / 110 |
| 情報 | 97 / 100 |
| 合計 | 351 / 410 |
点数よりは体験が重要だ。問題の質や量がどう変わっていたか、そして受験生に要求される能力はどう変化していそうかを俺が受けた頃(2012年)のセンター試験と比較しながら科目ごとに掘り下げていく。
個別科目
数学Ⅰ、数学A
とにかく分量が多すぎる! 時間がかかりそうな問題をスキップしたら戻ってくる時間が残らなかった。

2012年のセンター試験では僅か8ページしかなかったのに対し、2026年の共通テストでは26ページと約3倍まで爆増している。それでいてページあたりの情報密度は特に落ちていないどころか、難解な文脈がページを跨いで展開され続ける。
大問の数自体は4つで変わっていないのだが、大問1つあたり1トピックだったセンター試験に対し、共通テストでは大問1つに全く異なるトピックが2つ詰め込まれていることが多い。それによってトピックの数自体が1.5倍に増えている。
| 大問 | センター試験 | 共通テスト |
|---|---|---|
| 1 | 不等式 | 集合、図形 |
| 2 | 二次関数 | 二次関数、データ分析 |
| 3 | 図形 | 図形 |
| 4 | 確率 | 確率 |
この増えたページ数によって物の聞き方がシンプルに高度化している。
例えば二次関数を扱う出題を比較してみよう。まずセンター試験の方から。

所与の関数に対して頂点とか交点とかを求め、最後に0≦x≦4という所与の定義域に対して最大値らへんを求めれば終わる。親の顔より見たオーソドックスな流れだ。
一方、共通テストではこうだ。ページ数はちょうど2倍の4ページになり、潤沢な紙面を使って問いのレベルがどんどん上がっていく。

最初はセンター試験同様に所与の定義域における最大・最小値について問われるが、すぐに太郎さんと花子さんが登場して条件を次々に付け足していく。
まず条件1では逆に最大・最小値から関数形を求めることが要求され、更に条件2では(関数の係数ではなく)定義域の上限がパラメタとなって関数の最大・最小値を定めるトリッキーな問いに発展し、最後には定義域の範囲がフラフラ移動する中で関数が一つに定まらない前提でx軸との交点のみ求めるアクロバティックな着地が決まる。
これらに対応するには「定義域の半ばで最大値を取っているということは関数はどちらに凸なのか」「変動する定義域と関数の最大値はどう対応するのか」「関数形が定まらないのにx軸との交点だけは定まるのはどういう状況か」といった想像力を働かせなければならない。センター試験では所与のパラメタないし関数を機械的に処理していれば終わったのに対し、共通テストでは自分で適切な図を描いて考えるクリエイティビティが必須になる。
全ての問いがこうした構造を持っているが、特に大問4の確率問題は圧巻。

プレイヤーによって勝率が異なるリーグ戦を開催し(この時点で既に雲行きが怪しい)、勝ち数が同じ場合は抽選も行うことも考慮しながらあるプレイヤーが優勝する確率を求める問題。マーク式なので丁寧な誘導が付いてはいるが、導出過程では3階層以上に及ぶ複雑な場合分けを全てクリアして一つ一つ繋ぎ合わせる緻密な作業が6ページに渡って展開され続ける。
誘導を薄めた記述式なら早慶クラスの二次試験で出てくる水準の問題だと思う。箱の中からカードとか玉を取り出すお遊びだったセンター試験を思い出すと隔世の感がある。
補足635:これは個人的な告解なので試験の難易度そのものとは関係ないが、受験生時代と比べて図形問題の勘が死んでいることを感じた。てか大学以降で図形使うことあんまなくない? 形あるもの全般は別に幾何的に捉えなくても一般化した関数で扱えばよくなるし、具体寄りの幾何学は数学科の変なやつとか機械系で図面描いてるやつくらいしか触らなくなる印象がある。機械学習で画像を扱う場合でもまず格子かけて量子化して行列成分に変換してしまうから図形を直視することはないが、ただよくよく考えてみればもろに画像系なのに幾何を扱わないというのも変な感じがするし、探せばそういう分野もあるのだろうか?
数学Ⅱ・数学B・数学C
数学ⅠAと同様、明らかな難化・長大化の一途を辿っている。

センター試験の18ページに対し共通テストでは39ページと単純な分量は約2倍に留まるが、実際に解かなければならないページ数は2倍どころではない。というのも数ⅡBは選択問題が含まれており、センター試験では6問中4問が必答に対して共通テストは7問中6問必答だからだ。
よって単純計算でセンター試験の実質ページ数が18×4/6=12ページに対し、共通テストは39×6/7≒33ページとなり、結局は3倍近くをこなさなければならない。トピック数自体が1.5倍、トピックあたりの分量が2倍で合わせて1.5×2=3倍という数ⅠAと同じ法則が適用されている。
そしてやはり数ⅠA同様に聞く内容がワンランク上に進化している。例えば数列の問題はセンター試験版では以下の2ページのようになっている。

まず等差数列{a_n}を定義してから、その逐次足し合わせである数列{S_n}を定義し、更にそれを用いて生成した{b_n}に関して誘導の{c_n}を経由して一般項を導出という手順だ。
これが共通テスト版だとまず分量自体が5ページに伸びる。

そして{a_n}の階差数列として{b_n}を定義するあたりまでは同じ雰囲気なのだが、途中でいきなり太郎さんの「発想」が乱入してくる。

これはここまでの計算を踏まえてより一般的な手法を推測したものだ。
よって、ここで「具体的な階差数列一つの解法」から「一般的な階差数列の利用方法」まで思考を拡張させなければならない。単に情報を処理するだけでは終わらず、仮説構築と検証にまで発展して思考力を問う共通テストらしい味が出てくる。
極めつけは最終ページに登場する花子さんだ。

ここではさっき太郎さんが考案して一応上手くいった「発想」を別の課題に対して自分で適用しなければならない。一事例を正確に計算できれば十分だったセンター試験と一線を画し、共通テストでは一般的なルールを頭に読み込んで類似の異なる対象にまで応用しなければならないとも言える。
このように「ここまでの話を理解した前提で、その手続きを応用して新しい問題を自分で解いてね」という構造の大問が多い。第二問でも単なる三角関数の和積を問う問題と見せかけて、それを道具として自由に運用した上で式変形に基づいた関数の分析が要求される。
なお個人的な所感としては、数ⅠAに比べると数ⅡBはだいぶやりやすかった。関数や数列は会社のホワイトボードにもよく書いているし、仮説検定は満点じゃなかったら統計検定を返上しなければならない。
情報
共通テストの情報科目は、現役世代を除く大抵の人にとって未知の科目のはずだ。
教科としての情報自体はけっこう昔からあったが、2022年から高校で必修化されたのち、それを受けて2025年から多くの大学で共通テストでの受験が求められるようになっている。つまり情報はいまや避けて通れないスタンダード科目の一つであり、現代の高校生は概ね共通テストレベルの情報リテラシーを持つという認識で問題ない。
共通テストの常として分量は相変わらず膨大で、数学よりも多い34ページを僅か60分で捌かなければならない。

内容はコンピュータサイエンスとデータサイエンスなので俺はeasyだったが、一般レベルにしてはそれなりに高度なことを聞いてはいる。
例えばこの情報セキュリティ問題に自信を持って答えられる大人はそう多くはないと思う。

不正アクセス禁止法はあくまでもアクセス行為そのものの不正を取り締まる法律であって不正なサイトへのアクセスはスコープ外であること、ファイアウォールは領域の境界に配置されるので領域外の通信は無防備であることなどをはっきり把握していなければ正答は難しい。「パスワードに誕生日を使うのはやめよう」「怪しいメールには気をつけよう」レベルでセキュリティを語れる時代はもう終わった。
メールサーバの問題もIPAすぎてビビった。ネットワーク管理者志望?

メールアドレスの綴りを誤った際にどのサーバがどんな理由で送信に失敗するかを問う設問。これはユーザネームとドメインを働き込みで峻別した上でそれぞれどのサーバがどう処理するのか理解していなければ正答できない。
更にプロトコルを問う問題でも、ドメインからIPアドレスを特定するのはDNSであって、WWWやルーティングやパケット通信はあくまでIPアドレスを利用する仕組みに過ぎないという切り分けが必要だ。
他の設問でも、住民証明においてデータそのものではなくコードをやり取りするアクセス認可だったり、画像合成において画素と対応させたビット演算だったりと、原理を理解した上で具体的な局面に応用するというIPAで見たことがあるような問題が多い。たぶんIPAの資格体系で言えば基本情報くらいの水準の気はする(ちなみにその辺りも近いうちに再編されるので過去の遺物になるのは時間の問題だ→■)。
特に問4のデータサイエンスはかなり出来が良かった。オープンデータから桜の開花日を予測する問題だが、8ページに渡って延々と繰り広げられる仮説構築と検証が極めて実務的。

最初に欠損データを除外する前処理を加えたのち、新たな変数を加えて二つの仮説をそれぞれ定量的に検証し、採択した仮説でもまだ残っている誤差を目的変数として回帰分析での補正を試みる。
単にデータを並べて基礎統計量を求めたり漫然と回帰直線を引いたりするのではなく、次々に仮説を立てて検証していく前のめりな正しい分析姿勢がこれでもかと提示されている。現代の高校生は皆これが出来るのだとすれば、データ分析の未来は明るいだろう(しかしデータサイエンティストの未来は?)。
国語(現代文のみ)
国語はセンター試験が40ページに対して共通テストは48ページと、総量自体はそこまで増えていない。

ただセンター試験では大問が4つだったところが共通テストでは5つとなって、その1問分で8ページ増えた形になっている。
その現代文と古文の間に新たに挿入された3問目が極めて特徴的で、リード文からもう見たことがない形をしている。

この問いで出てくる文書は論説文でも物語文でもなく調査成果物だ。Mさんが調べた資料とその成果物がセットで提示され、その妥当性が問われるのである。
要は昔やった「調べ学習」が共通テストにまで進出してきたのだろう。そう思うと国語教育において発表や資料作成自体は平成の時代からカリキュラムに含まれていたわけで、入試で問われるのは読解に限るというのもバランスが悪く、思考力を測りたい共通テストでは設問に含まれることも理解できる。
いかにも文脈を問う問題として、最後の設問でネクストアクションを問うているのが非常に印象的。

研究行為としてはどれもあながち的外れでもないことに注目したい。文章としての真偽ではなく、問題文で指定されている目的と対応する妥当なアクションを選ぶことが必要だ。
一方、現代文(論説文と物語文)に関しては俺が見た限りではセンター試験とそこまで変わっていないように思われた。分量が増えたわけでもないし、適切な解釈や表現技法を問う問題は15年前から頻出だ。
俺の点数が落ち込んだのは、問題側というよりは俺側の変化が大きいように感じた。大学以降はテキストの読みがかなり自由になってきて、作者が意図していなかったことをあえて読んでもいいし、作品外の事情にも鑑みて自分の文脈に引きつけてしまってもいい。特に物語文ではそれが顕著で、別に何をどう読んでどう感じてもよくない?という気持ちはけっこうある。
とはいえ、自由に読むにあたっても第一義的な最大公約数の読みを踏まえておくに越したことはない。ブログとか書いてる割にはちょっと点数低すぎる気がするので、解説が予備校各社から出たら精読しようと思う。
まとめ
今の共通テストはセンター試験とは比較にならないほどめちゃめちゃ難しい!
シンプルに質と量が怪物化していることに加えて、知識はある前提で文脈を読むことが理系科目ですらかなり深く求められている。単に「A・B・Cのどれが正しいか」という問い方というよりは、「X・Yという文脈に基づいて最も適切なのはA・B・Cのどれか」という問い方をされることが多い。更には扱う分野自体も情報教育・量子力学・複素数など新たな領域を取り込んでアップデートされている。
たった10年かそこらでもジェネレーションギャップが大きく、是非自分でも問いてみることをオススメする。令和の高校生は平成の高校生より頭良いぞ!